(19)誰が保護者?

~ジョゼフ目線~




「サーヤを保護することは決定事項だ。本人にも、了承は取ってある」



 会議室で、サーヤ君の今後についての話し合いをしている。


 サーヤ君は、雌だから雄しかいない騎士団に置くのもどうかと思ったが、彼女の立場と今の健康状態では誰か知り合いに預けることもできないな。

 騎士団は恨みを買いやすく弱みとして狙われる可能性もあるが、精神面も心配だ。


 彼女の状況的には、このまま騎士団で保護しておいた方がいいだろうと判断できる。

 ただ、保護するだけだと問題が一つ浮上してしまう。



「ただ、問題が一つあります。彼女の保護者です。彼女はまだ幼いですし、防衛手段がありません。騎士団で預かるのは決定事項ですが、それでも保護者は決めて書類も提出したほうがいいでしょう。保護者がいれば、攫われても誘拐として捕らえることは可能です」



 アル君も、問題点について言うようだな。

 彼女について、今一番決めなければいけない重要事項は『誰が、彼女の保護者となるか』だ。

 

 保護者がいれば、彼女が攫われた時も騎士団を動かす理由もできる。

 何より、『保護者のいないどこから来たのかも不明な子供』より『不明だが保護者がいる子供』の方が安全度は確実に上がる。


 保護者がいれば、ある程度権利も得ることができる。

 何しろ保護者がいるのだから、もしものことがあれば保護者となった大人が責任をとる。


 見たところ彼女は大人しいし、説明した時も思ったが理解力もある。

 このメンバーの誰が保護者になっても、問題になるような子供ではないな。



「とはいっても、誰がなるのよ?アタシは、問題ないわよ」

「…………俺も。あの子、興味ある」

「興味ある・なしで決めないでください」



 セレス君とノーヴァ君が発言し、アル君はノーヴァ君の発言を注意している。


 立場的に考えれば、シヴァ君とアル君が有力だろうか?

 シヴァ君は団長で、アル君は副団長だ。

 立場的にも、実力的にも問題はない。何より、サーヤ君を保護したのはこの二人だ。

 ある意味、初対面となるセレス君やノーヴァ君よりもこの二人の方がいいだろう



「彼女の意見を聞くのが、一番だろうね。まあ、状況的にシヴァ君かアル君だろうね。二人とも、サーヤ君を助けたからまだ安心できるかもしれない」

「…………アルカード、お前がなれ」

「え、団長!?」



 私の言葉を聞いたシヴァ君がそうアル君に言う。

 言われたアル君はと言うと、慌てた表情を浮かべながら何が何だかわからないようだった。

 セレス君もノーヴァ君もまさかここでその呼び方をするとは思わなかったようで、驚きで目を見開いている。


 それもそうだろう。

 シヴァ君が、アル君のことを「アルカード」と呼ぶときは団長としての命令の時だけだ。

 彼は、『団長命令』としてアル君に言ったんだ。



「待つんだ、シヴァ君。保護者については、彼女に最も関りが多くなる。彼女の意見を聞いてからの方が」

「俺は、保護者になどならない。実の親からもまともな愛情を貰ったことのない俺が、あいつのまともな保護者になどなれるわけがない」



 慌ててシヴァ君を止めようとすれば、冷たい声で言うシヴァ君にさえぎられてしまった。



「待ってください、団長。地位的な意味でも、私がなるよりもあなたがなった方が彼女を保護するには一番です。団長の義娘であれば、手を出そうとする者もいません。彼女を守るのであれば、私よりもあなたの方が」



 アル君も慌てて止めようとするが、その言い方では逆効果だ。



「実力も身分も、お前なら問題ない。何より、血縁的にも半分の俺よりも完璧なお前の方がいいに決まっているだろう!!!」

「団長!!」



 アル君の静止を聞かず、シヴァ君が会議室から出て行ってしまった。

 そのことで、アル君は泣きそうな絶望したような表情を浮かべている。


 会議を進めるはずのシヴァ君が出て行ってしまっては、会議の続行はできない。

 何より、今のアル君の状態では進めようにも心ここにあらずの状態だ。



「…………保護者については、また後日話し合おう。本人にも話さなければいけないからね」



 私がそう言えば、アル君は絶望した表情のまま、セレス君とノーヴァ君は心配そうな表情を浮かべていた。


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