第28話 一点突破

(自主規制)です!コラボレーションお願いします!

―――――――――――――

 翔一が倒れた翌日


 照島仁は、ある医者に翔一の検査結果を聞いていた。


 「今回の検査結果ですが、相当強い媚薬に該当する成分が検出されました」

 「相当強いというのはどれくらい?」

 「使いすぎると、日常生活に支障をきたすほどです」

 「そんなに強いものが一般販売されているのか?」

 「ネット通販などで調べてみた限り、販売されている様子はなかったんですが分かりません。このようなものは公開販売ではなく、特殊なルートで手に入れる事なんてザラですからね」

 「わかった。検査結果を渡してくれないか?」

 「あなたならそう言うと思ってもう用意してありますよ。―――にしても今回の急患、体のあちこちがボロボロでしたよ。手なんか表面には何もないんですが、骨にはまるで何度も銃弾を受け止めているような傷がありました」

 「……あいつにも色々あるってことだ。あまり詮索はしないように」

 「分かりました。お仕事頑張ってください」

 「ああ、そっちもがんばれよ優姫ゆうひ


 そう言い残し、仁はある人物に電話をする。


 「もしもし―――はい、そうです。今回は協力を仰ぎたく……」



 ―――電話中―――


 「―――そういう事でお願いします、幸三さん」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 俺は、目を覚ますと病院にいた。


 ―――倒れたか……。俺は結局薬に負けて、生徒会室で倒れた。その後の記憶はない。


 「お、椎名、目を覚ましたか?」

 「なぜ生徒会長が?」


 目を覚ました矢先、目に入って来たのは生徒会長だった。

 ―――玲羅が良かった……。


 「なぜって、見舞いに来ているんだ」

 「玲羅は?」

 「お前の妹と食事に行ってる。椎名、お前は無理をし過ぎだ」

 「無理なんてしてませんよ。やってたことが、キャパを超えただけです」

 「それを世間一般では、無理と言うんだ」


 こんな冗談に答えられるんだったら、ひとまずなにもなかったんだな。


 俺が寝ている間に、愛堂が動く可能性もあったんだが、そこは大丈夫だったようだ。


 「会長、俺、どのくらい寝てました?」

 「今日で3日目だな。薬と疲れが同時に襲ってきたんだろう。体育祭が終われば、仕事はひと段落するからそれまで耐えろよ」

 「あ、仕事は減らしてくれないんですね?」

 「ただでさえ人がいないのにそんなことしたら、こんどは私たちが倒れてしまうだろ?」

 「清々しいほどのブラック思想、御見逸れしました」


 それにしても、3日も寝ていたのか。なら少し動きがあってもおかしくないな。例えば―――


 「お、お前達はなんだ!」

 「今回の教職員の生徒に薬を飲ませたことについて何か一言ください!」


 ―――マスコミが暴れだすとかな。


 うちの帝聖高校はそれなりの名門だ。そこの教職が起こしたスキャンダルだ。食いつくに決まっているだろう。


 ん?というか、今聞き覚えのある声が……


 「おい!翔一は入院しているのだぞ!少しは安静にしてやれないのか!」


 玲羅じゃん。しかも、その隣にはパパラッチが怖くて、すっかり縮こまってる結乃の姿があった。


 「ちっ、あいつら、人が病人というのを考えていないのか。椎名、ここは私が抑える」

 「会長、いいです。ここは俺が」


 俺は、ベッドから降りると、群衆の中に向かう。


 「玲羅、結乃、先に中に入れ」

 「しょ、翔一、目が覚めたのか!?」

 「玲羅、ひとまず中に入れ。ここは俺が」

 「わかった!」


 そんな玲羅の目は赤くなっていた。もしかしたら、俺が死ぬかもしれない、とか言って泣いてたのかもな。


 「今回の愛堂容疑者について一言」

 「どのような経緯で薬を飲まされたんですか?」

 「実行犯には、部のマネージャーがあてがわれたという話は?」

 「いったん静かに……」


 あんまりにもうるさいパパラッチを、静かにさせる。

 おそらく、この場にいる者たちは全員、俺が質問に答えると思ったんだろう。次に俺から出た言葉に全員が、驚愕する。


 「―――消え失せろ」

 「「「―――っ!?」」」


 そして、驚愕すると同時に恐怖した。


 自分でいうのもなんだが、今の言葉に強力な威圧を込めた。戦いなれた武人だけでなく、ただの一般人でも失禁一歩手前のものをぶつけた。


 そんなことをしたからか、全員の腰が抜けてしまったようだ。


 「メディアが知りたいことを話すのも当事者であるこちらのやることなのかもしれない。でもな、この件には色々なトラウマを埋められた人もいる。愛堂もまだ余罪があるはずだ。俺がどうしようとも、学校側から話があるはずだ。話を聞きたいのなら、段階を踏んでそちらで聞け」

 「「「は、はい……」」」


 俺の説得脅しが効いたのか、パパラッチたちが散り散りに帰っていく。


 「お兄ちゃ―――きゃっ!?」

 「そんなこと言わずに、質問に答えてくださいよお~」

 「お、おい馬鹿。なにやってんだ!この人はまずいだろ」


 そんな中、結乃を突き飛ばしてレコーダーを突きつける馬鹿が現れた。


 こいつ、死にたいのか?


 「バッカ!こういうのは引いたら負けなんだよ!こうでもしなきゃMyTube業界は生きていけないんだよ!」

 「業界を生きていくからこそ、手を出しちゃいけない相手もいるだろ!」

 「はぁ?もういいよ、お前。解散だよ。これからは俺一人でやる」

 「おい……お前……」

 「あ、質問に答えてくれます?じゃあ、最初にさっきの女は誰?彼女?セフレ?それとも―――げぶ!?」


 俺は、ふざけたことを抜かす目の前の男を回し蹴りの要領で、鳩尾を蹴りぬいた。


 「椎名流【一点突破】……」

 「ゴホゴホッ!?―――てめえ、こっちが下手に出てりゃあ!―――ぐぇ……」

 「その汚え口を閉じろ……」

 「イギギギ……」


 なおも食って掛かる男をアイアンクローで、頭を掴む。


 ぶっちゃけこっちには用は無いんだけどね。シンプルに、結乃に体当たりしたから手をあげただけだ。


 「そっちのお前」

 「ひ、ひぃ!?」


 本命の男、つまりもう一人の方だ。


 と、思ったのだが、俺が呼んだ瞬間ビビッて逃げ出した。ああ、もう!


 「これに関しては……お前ら非が……あるだろっ!」

 「げぶ!?」


 俺はアイアンクローでつかんでいた男を投げ飛ばす。

 倒れた男の下に行くと、目に見えて怯え始める。そらそうだ。あっちに非があるとはいえ、自分より強い奴が、近づいてくるんだから。


 「ひ、ひぃ!?すいませんでした。なんでもしますから!」

 「じゃあ、動画ファイル渡して消え失せろ」

 「わ、わかりました!」


 聞き分けが良い奴でよかった。もう一人の方は、確実に社会的に殺す。


 そんなこんなで、俺は病室に戻った。


 「今回の件ってそんなに大事になってるの?」


 正直、ちょっとしたニュースくらいにはなると思ってた。そこは当たってた。だが、MyTuberまで食いつくと思ってなかった。


 ちなみに、名前でわかると思うが、MyTubeはYou〇ubeのこの世界バージョンだ。ほぼまんまじゃん。


 「そうだな。どんどん愛堂の余罪が出てきて事が大きくなり始めている。最初は、よくある学校の不祥事くらいにしか見られてなかったんだがな」

 「余罪って?」

 「横領、未成年淫行はもちろん、違法カジノ、強制性交、殺し以外の色々な犯罪が明るみに出た」

 「わお!そんなにえぐい人間なのは想像つかなかったな」

 「なぜ、今になってこうも大量に問題が浮き彫りになったのか……」

 「まあ、世の中色々あるんですよ。それよりも、この動画で、少し遊ぶか」

 「それはさっきの……」


 俺が取り出したのは先ほど奪った動画の入ったSDカード。


 これを顔がわからないように編集して、SNSに投稿する。


 「会長。各所の見出しってどうなってます?」

 「は?……ああ、『教師が生徒に薬を飲ませたか?数々の余罪も』だな。たいていがこんなものだ」

 「そうですか。なら明日はその見出し変わりますよ」

 「は?」


 そして次の日、テレビのこのニュースのタイトルは


 『高校生プロゲーマーに教師が薬盛り』に変わっていた。


 ちなみに後で聞いた話だが、この件で学校は一か月休校らしい


―――――――――――――

パパラッチが病院内に凸してくるというカオスな状況は『漫画の世界だから』という魔法の一言で片づけます。現実はそんなことないっすからね

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