第13話魔女が大公家に侵入
その頃、竜騎士団の近隣にある村と言うか、駐屯地が出来たのでその後から周囲に作られた、普天間基地周辺の街や学校みたいな従業員用の居住地と作物畑に、魔国の潜入部隊が集結していた。
もうこの家族が「竜と共にある者」で間違いなく、魔王が言っていた血戦存在で魔に対する光属性?のドクズ家族が住んでいる。
一番上の姉は勇者なのが確定、長男次女次男三男辺りは凄まじいまでの高レベルの竜戦士で、潜入部隊の暗殺団では到底手が出せないので、鑑定眼持ちを後方に下がらせ報告だけを済ませ、まずは最年少の妹とまだ赤ん坊の幼竜達を人質に取ってから事を起こす。
村に入っても「聖女様にお救い戴いた、献上品と金品をお捧げしたかったのだが受け取って貰えず、実家に置いて行きたいので教えて欲しい」と言うと喜んで教えて貰えた。
途中、武装した村人や自警団が包囲している家があり「聖女様と聖人様の家に火を着けようとした一家だっ!」とか「元から聖女様が産まれてくる家だと知っていて、何代にも渡って潜んでいた魔物どもの家だっ!」とか「魔物どもを高い所に吊るせっ!」とか「竜が住んでいるのをあそこまで嫌っていたのは、おかしいと思ったんだ」とか、目の色が変わってしまった連中を見たが、これから騒ぎを起こすのに好都合なので無視した。
やがてストナ一家に毎日嫌がらせをしていた子供達が家の中でたっぷり制裁を受けて殴り倒され、突然有り得ない状況に追い込まれた子供達が泣き叫んだ後、抵抗する力すら失ったボロ雑巾みたいな状態で全員引きずり出され、既に力もない老婆まで力ずくで引きだされた。
家の中で乱暴されて大声で泣き叫んで助けを呼んでいた母親らしき女と娘達も、逃げられないように膝を逆に曲げられ、足をへし折られた状態で引き摺り出され、全裸のままぐったりした状態で魔物の印が無いか日の下で裏返されたりしてじっくり調べられると、取り押さえられている子供達も口々に「ねえちゃんっ、おかあさんっ、おかあさんっ!」と泣き叫ぶ地獄絵図が展開された。
家具や天井裏に金目の物やスパイとしての証拠品が無いか調べられ、ドアや間仕切りなど破壊しながら家具ごと表に放り出されて調べ終わると、穢れた家に火が放たれ、多人数に乱暴され続けている母親と娘たちの叫び声が一層強くなり、「ぼくのたからものがあああっ!」と言う絶叫も響き渡り、老婆の「コロシテ、コロシテ……」とすすり泣く声が続いている間に計画を実行するためにストナ家を包囲した。
「突」
暗殺団十人以上がこの場に集まり、残りの人員は監視のためと失敗した時の為に待機。
眠り薬や麻痺の毒を放り込んで暫く経った後、入り口や光取りの戸板を開いて突入した。
身長2メートル少々しかない超小型の竜が、土間で昼食の支度をしていたが眠り薬か麻痺が効いているようで欠伸などして動かない。
9歳児と幼竜数匹を確保しようと雪崩れ込んだ時、麻袋に入れて取り押さえたはずの暗殺者が、袋から出た幼児に手足を有り得ない角度にへし折られて空中を飛んで壁に刺さり、幼竜二体を取り押さえたはずの者が防御呪文に阻まれて氷のブレスで凍らされた。
二人がかりで襲い掛かった子竜に魔法を唱えられて大半の者が逆に麻痺させられ、残り全員で刺し殺そうとした小型で片翼の竜が全員をミンチに変えてから部屋に入って来ると、刺客全員逃亡できないように足を潰され、内臓を全部砕くようなパンチを腹に入れられて服毒自殺用の毒まで吐かされ、人間の自警団や憲兵でも解呪できるよう、人間の言葉で「バインド」と唱えられ、舌も噛み切れない状態で放置された。
国が滅びて魔国に編入される前から、ここまで完全に敗北して捕らえられるなど考えもしなかった一同。
国が征服される時、必ず失敗するのが前提の案件として、乾坤一擲で魔王本人の暗殺に向かって以来の大失敗。
外ではストナ家の柵や畑の向こうで、焼かれた家まで連れ戻された長男で跡取りが泣き叫び、妻も娘たちもボロ雑巾になるまで凌辱され尽くし、息子達は顔の形が変わるまで殴り倒され内臓まで破壊されるような暴力を加えられ、声を掛けても一切返事ができないほどの瀕死。
妻は力尽きて死んでいるようで目や耳から血を流してピクリとも動かないし、娘達は抵抗できないよう手足を折られて凌辱されて瀕死。
年老いた母は最後の力を振り絞って燃え盛る家の中に飛び込み、凄まじい断末魔の悲鳴を上げながら家と共に焼け落ちた。
何故こんな事をされるのか聞いても「お前は魔物の一家だ」とか「聖女の家に火を着けたり、聖女や聖人に石を投げ続けて、悪い噂だけを流してきた魔族だ」と蔑まれ唾を吐きかけられ、息子たちと同じような様々な暴力の洗礼を受けて思い知らされ、一体何が起ったのか分からないうちに竜騎士団から憲兵が到着して、市民が殺してしまわないよう取り押さえられた。
今後、拘束済みの父親と一緒に拷問を受け、いつから人間界に潜入していたか喋らされ、どんな種類の魔物なのかも調べられて、正体を現すように攻め続けられるが、そんな覚えがないので自白できないまま獄死する。
超小型の竜はカタコトの人間語で憲兵と会話し、9歳の末娘も協力して説明し。暗殺団を憲兵に引き渡してから村の中の騒乱がようやく収まった。
三度の飯よりも虐めが大好きなサディストの兄弟姉妹が始末されたおかげで、虐め地獄から解放された者が多数出た。
既に兄弟の虐め地獄に耐えられずに自殺した男の子や、兄弟に袋叩きにされた後、自宅のベッドで死んでいるのが見付かった少年も、兄弟が手を下した証拠が無いので泣いていた両親も少し救われた。
兄弟や娘の取り巻きに乱暴されてしまった村の娘達も、汚された体のままで家に帰され、ゲラゲラ笑われながら絶望し、嫁にいけない体にされた上で誰が父親なのか分からない子供を孕まされ、すぐに自殺する以外に何の選択肢も無かった娘たちが死んで怨霊になり、村が破滅するよう祈り続けていたが、その怨霊も恨みを忘れて成仏しそうになった。
暗殺団の行動も阻止されたが、少女漫画系ならヒロインが誘拐され、不注意すぎる大ミスや勝手な行動をして誘拐され、主人公キャラから逃げまくる異常行動も起こして誘拐され、何度も何度でも懲りずに誘拐される。
そこに王子様とか王とかオレサマ系貴族とか騎士団長とか、やたら身分が高くて高収入前提で超イケメンな奴らが競い合うように救出に来て、女の失敗とか余りにも馬鹿すぎる行動とか無鉄砲とか一切責めない、ヒロインの処女性なんか全くキニシナイ。
あえて言えば恋愛とか性体験とか贅沢とか海外旅行とか行きずりの男性とのメイクラブとか堕胎とかマジ水子の霊とか仇敵の子を出産とか、済ませられるケイケンは全部済ませた後にズタボロの中古になって、ラオウ様か新海誠監督みたいな「どれだけ汚れようとも最後にワシの隣におれば良い」みたいなオトコマエすぎる性癖の持ち主が、普通なら汚されまくって誰の子供かすら分からない子を身籠っているキズモノヒロインを子供ごと愛して受け入れて大団円。
みたいな腐り果てた話にならずに済んだ。
診療所
昼飯時は過ぎたが診療所での治療は再開されず、勤務医と見習い聖女だけでいつもの治療が始まったが騒動になった。
「どうなってんだっ、聖女はどこだ?」
「俺達だけ治さないつもりかよっ」
「助けてっ、おかあさんを助けてっ」
「娘をっ、娘をおおっ」
高い屋根から落ちて瀕死の重傷者や、クマに襲われて少し具を食べられている子供、魔獣に負けてしまって大変なことになっている冒険者、それらを連れて来た家族や仲間が泣き叫んで怒号を上げて、何もできない看護師に詰め寄っていた。
「ですから、皆さん貴族の人に連れて行かれてしまって、誰がどの聖人や聖女を連れて帰るか会議してます、私達では手が出せません」
重傷者は普段なら見捨てるか諦めるしかないが、噂が広がっていて「竜騎士団の診療所に聖女様がいる」と聞かされて、治療費は後払いになるが、どうにかして助けて欲しいと藁にも縋る思いで噂を信じて連れて来た家族たち。
「また貴族かよっ、あいつら俺らがどうなろうと構わないんだ」
「助けてくれつ、娘が、娘があああっ!」
「分かりました、呼んできます」
父親らしき男に跪かれて泣いて縋りつかれたので、貴族たちの不評を買うかもしれないが、命懸けで士官食堂まで走った。
士官食堂
「ええと、団長様、魔法師団の奴らも騎士団も、大変「誠意」を見せてくれましたんで、あいつらに謝らせたり、「和解金」とか「解決金」を取ったり、これから嫌がらせをしないと念書でも取って和解?とかして「キャイン」と言わせておいたらどうでしょうか?」
いつものゲスい顔で揉み手などしながら「弱み握ってる間に金でもとるか、謝罪と不干渉の念書でも取ってみては?」などと妙にソッチ系に詳しい15歳が提案してみた。
「あんな奴らと和解なんて無理だ」
小隊長も無理だと言い出したが、さっき展示即売会を開いても「魔法士に売るもんなんてねえですよ」と言ったり「鮑と勝ち栗で四両でございます」とか、どこかの虎眼道場の関係者とは商売ができない元武芸者みたいな嫌がらせをしたが、ボッタクリ価格でも支払ってくれたり、魔法師団長で公爵が「解決金」を支払ってくれたので、ゲスい大魔神みたいな鬼の顔も元の埴輪顔か菩薩の如くニッコリ、以降はマジックアイテムなども売ってやった、金の前にはプライドとか存在しないクズ。
団長も暫く頭を捻って、勇者が言っていた「キャイン」と言う平民の中で使われる金融用語や勝敗を現す意味も分からなかったが、犬が噛まれたり叩かれた時の鳴き声なので、相手を負かした時の声なのだと思い至り、決心して口を開いた。
「同国内の軍として、今の険悪な状態を解決したい。どうだろうか? 今後揉め事を起こさない、平民の隊で獣臭い連中だと言って嫌がらせをしないでくれるなら、こちらも勇者も協力する用意がある」
覚悟完了で「当方には迎撃する用意がある」ではなく、和解と協力の用意を提案した団長。
魔法師団と騎馬騎士団の中で言葉が交わされ、ここは折れておいた方が良く、勇者と敵対する軍など本当に蹴散らされてしまうので竜騎士団の提案を受けた。
「良かろう、どこから始まった諍いかは既に分からぬが、これを機会に和解したい、条件を書面にして残そうと思う」
「うむ」
寡黙な騎士団長も頷いたので、竜騎士団の敵に「キャイン」と言わせて満足したクズ勇者は、いつものゲス顔でほくそ笑んだ。
以降は慰謝料とか謝罪では無く「支援金」と言う形で色々の物品や金銭を供出、隊員たちの交流も深め対話も開始、合同演習なども開催し、敵対していた所属兵科の貴族家同士の交流や婚姻なども妨害しないなどの約定を、羊皮紙を使った魔法的な契約用紙まで用意して、三方で書面を交わしサインをして、魔法的な蜜蝋に家紋の指輪で捺印して、ある意味歴史的な合意が成立した。
どこかのロミオとジュリエット的な、敵対家との婚姻が認められない恋人同士が解放されて、駆け落ちとか心中しないで済んだが、この話には何の関係も無いので割愛する。
各部隊の離反工作をして「竜騎士ジョーク」なども広めていた張本人である魔法師団の参謀が、リザードマンみたいな縦の瞳孔になって、離反工作失敗を報告するため、屋外で待機させていたコウモリを一羽飛ばしたが、この話には何の関係も無いので割愛する。
「さて、次男三男殿はどの兵科がご希望かな?」
従軍できない三女はどこかの貴族家の養子になって、即座に聖女見習いとして教会に引き取られるので声を掛けなかった。
次男は殴り合いとか剣での切り合いのような荒事が苦手と言ったので、先程面接して食事も用意していた魔法士もニッコニコ。
「はあ、姉と兄と同じ所にだけは行きたくないんで、魔法師団でやって行けるなら…… 寮とか住む場所あるんでしょうか?」
長女と長男には、いつもいつもいつも嫌な目にあわされてきたので、ついでに独立して自分の部屋も持ちたい次男。
「良い心がけだ、独立心があって宜しい。独身寮もあるし、君は公爵家の養子になるのだから何の心配もない」
次男までが大聖人で、三男と三女は聖人聖女程度の実力と聞いているので、従軍できる最後の当たりを引いた貴族もニッコニコ。
師団長からもお褒めの言葉が賜れるレベルの実績で功績で成果なので、次の栄転が楽しみになった魔法士の貴族。
「んじゃあ、オメエには五階梯、いんや、六階梯ぐらいの魔法を教えといてやるだ、人間に向けて撃てねえように制限しとくからな」
「ああ」
これが後になって問題になり、ザコやストーンゴーレムまでならどうにかなっても、魔国の人間の軍団を前面に押し出して進軍してきたら、一切攻撃魔法が撃てなくなるのを誰も気付いていなかった。
六階梯魔法程度なら、死なないで再生しまくるエーミントロールとか、巨大なアイアンゴーレムをエーミンさせるのは不可能だが、竜との融合率10%の奴が地形を変えるレベルの竜魔術を行使すると「お前本当に竜?」と下級天使が降りてきて調査し、規定違反なら問答無用でサクッと殺されて、ついでに復活できないように分解されるので、ある意味正しい選択だったりする。
王都、大公家
大公に連れて行かれた長男と次女は、竜騎士団まで迎えに来ていた馬車に素早く乗せられ、大量の護衛と共に王都まで運び込まれて、すぐに養子縁組の手続きを済ませるために大公家の門前の車止めまで連行された。
「帰ったぞ、先触れは来ただろうが、この子達は大聖人と大聖女だ。これから我が家の養子になる、失礼があってはならんぞっ」
「畏まりました」
先に飛んで帰った家令や執事が出迎え、メイドなども頭を下げて大公と新入りを見送った。
「お嬢様、お坊ちゃま、お召替えが必要ですのでこちらへ」
流石にボロ布を着た状態では、大公閣下との法手続きで魔法契約は無理なので、身支度の為に用意された部屋に連れて行かれた。
家令からも厳しく言い付けられ、失礼が無いように言い渡したが、次女で魔女は貴族家から行儀見習いに出されている側仕えや、商人の家から出されている地位が高いメイドに早速目を付けられ、立場認識がおかしい連中から嫌がらせを受けた。
「あの新入り、徹底的に潰して思い知らせてやりなさい、平民如きが大公家の養女だとか、他の貴族家の恥になるから今のうちに追い出しなさい」
貴族家の側仕えが、大公の愛人候補かいつもの宮廷闘争だと勘違いして、この部屋にいるメイド筆頭に耳打ちすると、クズでサディストがニヤニヤと笑い出してこう言った。
「ふんっ、どうやって旦那様に取り入ったか知らないが、この屋敷で平民如きがデカイ面できると思うなよっ? まずその汚らしい服を脱げっ、ノミだらけでシラミだらけの服なんざ、すぐに暖炉か焼却炉行きだっ」
魔女は姉から握らされた金貨二枚をポケットから出して隠した。
汚い服に触れようとする者もおらず、衆人環視の中で今着ている服や下着を手渡されたごみ袋に詰めて行く。
今は亡き?母が姉のために作り、お下がりでもらった服だったが、何の感慨も抱かずにゴミとして処理した。
「何隠したんだ? 出せよっ、何で平民が金貨なんか持ってるんだ? もう家の金盗んだのかっ? そうか、旦那様に体でも売って、お具合が良かったから金貰ったのか、お前みたいな平民が持ってていいもんじゃない、寄越しなっ」
金貨を力尽くで取ろうとしたので防御魔法が発動し、態度が悪いメイドは吹き飛ばされて家具を巻き込んで大転倒した。
「「「「「キャーーーッ!」」」」」
「この金貨は大公家でも正教会でも恥ずかしい思いをしないで良いように姉が託してくれた物、働いてお金を貯めて、まるで爪に火を点すようにして貯めてくれた大事なお金、お前ごときが触れていい物では無い」
治療してもらうために貴族が見せてくれた「誠意」で、大した労力も使っていないあぶく銭なのだが、まるであの姉が苦労して働いて貯めたように言った。
魔女も我ながら口から出まかせで、よくもまあここまで嘘が付けるものだと感心した。
ちなみに姉が色々とカミングアウトする前に連れて行かれたので、ゲスでクズで父親ソックリの性格をしているノータリンの姉が、今代勇者だとは聞いていない。
馬鹿が家具や割れた鏡の中で苦しんで立ち上がる前に、与えられた清潔な下着や服に悠々と着替えて行った魔女。
「こん畜生、やりやがったなあ」
目の前の相手に、貴族にも掛かっていないようなバフが掛けられていて、素晴らしい防御呪文に吹き飛ばされたのだと考える事さえできないマヌケは、立ち上がってもう一回掴みかかり、同じように吹き飛ばされて床に転がされた。
「くそお、殺してやるっ」
手近にあったハサミを手に取り、相手が大聖女だと聞かされていても理解できる知能が無かったのか、耳から音声が正常に入っても脳が処理できないのか、理解できないように仕向けられているのか、武器を手に取れば勝つると思い込んだメイドは、無計画に蛮勇だけで魔女に向かって行った。
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