第84話 不毛だと思ったり
和美を守ってあげたい。
そう思ったが、いったいどうすればいいのかは全くわからなかった。ただ、嫌がられない限りはずっと一緒にいて和美を絶対に守ってやる、という強い気持ちが沸き上がってきた。私がここにいるから大丈夫。それを言葉ではなく、うまく伝えたいと思ったとき、自然に和美の手を握っていた。
可愛い和美の手を、私以外が握った。
なにもできないことに苛々する。
その気持ちの中に、多少の独占欲が混ざっていることに、
そこまで打って、私は目を閉じた。いったん気持ちをリセットしようとして、目頭を揉みほぐした。
独占欲?
いや? これは百合小説にしようとしたから、連想的に出てきた言葉であって。
別に芽生に対してそういう気持ちはない。
ないと思う。あっては困る。
独占欲……。いやいや。いや。ない。
芽生は言った。
好きな気持ちはわたしを幸せにしてくれるのに、と。好きな人が、芽生を幸せにできる人間がいるのだ。
私がそういう気持ちを持っては困る。
どんな人なんだろう。
好きな人に振り向いてもらえないより……とか言ってたな? 芽生が振り向いて貰えないほどの人。完璧になりたい芽生が好きな人。
芽生が憧れるような、それこそ「スーパーなダーリン」的な男性なんだろうか? そういう優秀な人になら、芽生は甘えらえるのかもしれない。もしくは、そういう相手だから、弱音を吐けないのかもしれない。
好きな人に弱音を吐くときは諦めたとき。そう言っていた。
友達に対して、というか、一人の人間に対して、弱っているときに守りたいという気持ちが出てくる事自体はおかしくない。芽生は特に、弱音を吐かない人だから。いつも一緒にいるから。あたりまえだ、そんな気持ちになるのは。なんの問題もない。
これは……、ただの、ネタだ。
友達に好きな人がいるのに、それを応援しないような人間にはなりたくない。
その恋愛がうまくいくことで、例え一人になるとしても。
友達に対して、独占とか。
そういう感覚は、小説でしか、ダメだ。
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