第6話 来年の明治は ?

 今年の明治の次鋒は、2年生ながら決勝戦に出るくらいですから、いい技術を持っているのでしょうが、終始受身でした。その点では、2019年、明治のキャプテンが龍谷との決勝戦(大将戦)で演じた戦いの流れとよく似ています。

 2019年の府立(全日)、明治のキャプテンは素晴らしいアッパーで一本を先行しますが、その後、ジャブ(前拳)ばかりて攻撃の手を緩めてしまったため、本気で二本目を取る気迫がないのを見透かされ、龍谷の奇襲と大技で続けて二本取られ、あっさり敗れました。


 今回の明治の三鋒も、2019年のキャプテンと同じく、試合開始早々、すばやい動きで関大の蹴りを返し(押さえ面突き)一本先取したのですが、それ以降はボクサーのように上体を揺らし戦うフリばかりで本気で飛び込まない。関大サイドの声援には「逃げてる」と指摘する声もありました。結局、試合終了間際に2019年のキャプテンと同じく、面回しを食らい、せっかく拾った一本がチャラになってしまいました。

 三本勝負制ですから、一本取ったら逃げ切るというのも戦法の一つなのでしょうが、2019年にしても今回も、開始早々に取った一本を残り2分30秒間守り通す方が(積極的に二本目を取りにいくよりも)むしろギャンブル(不確実)性が高いのではないだろうか。


 2019年と今回、ひとつ勉強になったのは、うっかり使うと(自分が)危険な面回しという大技は、本気で飛び込んでこない・間合いをつめると逃げるといった相手には、射程距離が長いという点でやる価値があるかもしれない、ということでした。

 「期待される効果が危険を上回る」ということなのですが、「副作用の危険性より予防効果が上回る」なんていう極めていい加減で無責任な言葉によって、自分たちの金儲けを大衆の健康と引き換えにする医者や役人という悪質な病原菌がうじゃうじゃしている昨今、こういうレトリック(詐欺的言い回し)には気をつけるべきではあるのですが。



 私のようなやじ馬からすれば、7人全員がスタンパーズ(蹂躪派)よりも、一人や二人ハラハラさせてくれる選手がいた方が面白い、とは不謹慎かもしれませんが、来年の明治はこの比率がどうなるのかが楽しみです。

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2021年 第66回全日本学生拳法選手権大会 見聞記 V1.01 @MasatoHiraguri

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