第77話 階層ボスの装備達

「イカですね」

「イカだね」


 扉を開けた先には、35階層と同じように少し小さな部屋に砂浜と海。

そしてその海からこちらを眺めるその白くて大きな生物は、イカだった。


「クラーケンってやつかな」


「クラーケンというと神話の怪物ですね」

「なんか間抜けな顔ですね、先輩」


 10本の足をくねくねさせるイカ。

実は8本が足で、2本は手らしいが10本の触手がうねうねしてることには変わらない。

つぶらな小さな目がこちらを見ているのかよくわからない目をしている。


 そのイカの魔物が剣也達に気づいたようで、長い触手を叩きつける。


「うお!?」


(結構速いな、油断はだめだな)


「レイナ触手を頼む、僕は本体を攻撃するから」


「了解です」


 レイナと剣也が駆け出した。

10本の触手が剣也を襲うが、そのすべてをレイナが叩き落とし、切り刻む。

切られた触手は超速再生しすぐに生えてくる。


 焦るイカを傍目に剣也の剣が体を貫く。

黒いすみを吐きながら泡となって消えるクラーケン。

あっけないようだが、二人との実力差はそれほど離れている。


「じゃあ、行こうか。おなかも減ったし」


 宝箱からアイテムを取り出し美鈴に預ける。

アクセサリーで指輪? のようだが、回復力があがるのか。

確かにあの触手はすごい勢いで再生していたが、どうも傷しか治らないようだ。


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装備説明 

・回復の指輪Lv1(Lvによる上昇なし)

 Bランク レア度★★★

能力

・軽傷を回復する

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 この階層でBランクアイテムが30個ほど集まったので相当錬金がはかどる。

進化させたいアイテムは色々あるし、特に次の階層からはAランク推奨だ。

苦戦する可能性が高いので、装備は充実させておきたい。


 ゲートを通って現実へ戻る剣也達。

その日夕食は蟹を食べることになったので自宅に戻り準備を済ませる。

塩水を浴びたのでシャワーを浴びるが、まだ夕方なので問題ない。



「カニ~」

「美味しいー」


 なんとか道楽へと向かった剣也。

年がら年中空いているし、全員貧乏舌なので旬でなくても美味しい。

食べたいものが自由に食べられる生活に感謝し、もやしに思いをはせる。


 もうみたくもないので、久しく食べていないという田中さんの気持ちもわかる。

でも死に際はモヤシ炒めが食べたいなと少し思うぐらいには思い出深い剣也にとってのソウルフード。


「じゃあ、僕は錬金するから倉庫に向かうよ、先に帰ってて」


「はーい」

「お疲れ様です、剣也君」

「明日学校なんだから遅くなり過ぎないようにねー」



「さてと、とりあえず階層ボスのアイテムの進化を考えようか」


 今剣也が持っている階層ボスのアイテムたちは以下の通り。


 10階層ボス ゴブリンキングの首飾り ★2 アクセサリー

 20階層ボス 王蜘蛛の糸靴 ★2 足装備

 30階層ボス 大白狼の毛皮胸当て ★2 胸装備

 40階層ボス 回復の指輪 ★3 アクセサリー


「もし、優秀な装備だったら再度取りに行ってもいいけど40階層からはAランク装備が稀に落ちると聞くしなー」


 剣也が次に挑戦する階層はAランク推奨。

なのでステータスの有利がそれほど大きくなくなっている。

もちろんレイナの勇者と剣也の錬金術師の力なら攻略は可能だが命の危険はできるだけなくしておきたい。


「じゃあ、ゴブリンキングの首飾りから進化させるか。これにはお世話になったしな」


 Bランクの錬金の種は30個ほどある。

これならば3つほど進化できるので、上から順番に進化させようとする剣也。


「さてと何がでるかはお楽しみだな」


 レベルアップ♪ ゴブリンキングの首飾りLv9

      ・

 進化♪ 鬼皇のピアス


「ピアスか…うわ、これ穴開けないとつけれないのか? うーん、能力は?」

 

 現れたのは黒いリングのピアス。

鈍く輝く真っ黒なピアスが二つ光の中から現れた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

装備説明 

・鬼皇のピアスLvMAX

 Aランク レア度★★

能力

・職業レベルを2上げる

・DP獲得量が10倍となる

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「2レベル!? じゃ、じゃあこれをつければもしかしたらSランク装備も錬金できるようになるのか?」


(でも穴をあけるのはなーうーん、でもなー)


 ピアスという装備の性質上耳に穴をあけなければつけることができない。

なのでこの場ですぐというわけにはいかない。

一旦保留することにした。


「じゃあ、次は王蜘蛛の糸靴か。何になるか」


 レベルアップ♪ 王蜘蛛の糸靴Lv9

      ・

 進化♪ アラクネの織物靴


(アラクネってあのアラクネ? 確か神話の生物だよな、下半身が蜘蛛で、上半身が女性の)


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装備説明 

・アラクネの織物靴LvMAX

 Aランク レア度★★

能力

・素早さ+2000

・空を踏むことができる

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「素早さ2000に、空を踏む? どういうことだろう、とりあえず試してみるか」


 そして剣也はその靴を装備した。

まるで羽のように軽いその靴は履いていることすら忘れてしまいそう。

履いただけで使い方が感覚で分かる。

剣也は軽くジャンプした、すると。


「うわ、空気かな? なんか踏み込めそうだ」


 まるで柔らかいスライムを踏んだような感覚。

踏もうと思うと踏めるし、踏みたくなければ何も起きない。


 何度か練習すると慣れてきて自由に空を踏み込むことができた。


「すごいすごい!」


 どんどんコツをつかんだ剣也は倉庫の中を飛ぶように走る。


「楽しい! これめっちゃ楽しいぞ!」


 空を飛ぶ。

実際は歩いているのだが、まるで空を飛んでいるような感覚すらある。

もともとステータスの力を使えば飛ぶように走れるのだが、この高さを歩くのとでは景色が違う。


「ふぅ、これはほんとにいいものだな。レイナにも用意してあげよう」


 しばらく飛んで楽しんだ剣也が地面に降りる。


「あとは、大白狼の毛皮胸当てかな」


 レベルアップ♪ 大白狼の毛皮胸当てLv9

      ・

 進化♪ 銀狼の毛皮鎧LvMAX


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装備説明 

・銀狼の毛皮鎧LvMAX

 Aランク レア度★★

能力

・防御力+4000

・温度耐性 大

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「おお、温度耐性もあるし強力な防具だ。これはレイナか、美玲にあげよう」


 剣也にはより強い深淵龍の防具がある。

そのためこの銀狼の装備はレイナか美玲にあげることにした。

防御力的に美玲かな。


「とりあえず今日はこのまま帰ろうか、あ! そうだ」


 荷物をまとめて剣也は倉庫の外にでる。

少しだけいたずら心が剣也を支配する。


(みんなを驚かせてやろう)


 そして剣也は空を蹴る。

次々と空を飛んで走り出す。

目指すはもちろん自分の家。

はるか最高層の我が家へと。


◇剣也自宅兼ギルド本部


「ねぇ奈々ー先輩どうやったら落ちると思うー」


 ソファに寝ころびスマホをいじる美鈴。

検索するのは、【男 落とし方 童貞】


(童貞を殺す服ねー今度着てみるか)


「知らないわよ、私だってそんなに恋愛豊富じゃないんだしってかあんたのが詳しいでしょ」


「私だって告白されるの専門だしなー」


(どんな専門よ)


 二人がリビングでだべっている。

レイナはお風呂に入っているので今は二人。

大体この二人がリビングを占領することが多いのだが。


◇レイナ


「ふぅ、いいお湯でした」


 濡れたブロンドの長い髪が胸を隠す。

水色の下着をまだ少し濡れた肌のまま履きタオルで体をふいていく。


(あ、上の下着持ってくるの忘れてしまいました。そういえば干したままでしたね)


「美鈴、奈々いますかー」


「いますよー」


 お風呂場からレイナの声が聞こえるので返事をする美鈴と奈々。


「剣也君はまだですよね?」


「まだでーす」


(じゃあいいか)


 タオル一枚でリビングを通ってバルコニーへ。

高階層なので特にみられる心配もない。


「下着を干したままでした」


「あらら」


 そしてバルコニーへの扉を開ける。

季節は夏。

裸でだって過ごせるほどの気温だ、それでもこの階層は少し涼しいぐらい。


「えーっと、あ、ありました」


 下着を取ろうと体に纏ったタオルから手を放す。

その時突風が吹いて露わになる裸体。

空を舞うタオル。


 突如解放感がレイナを襲うが、どうせ奈々と美鈴しかいないはるか高階層、問題はない。


 外気にさらされながら下の下着一枚になるのは、恥ずかしい気持ちになりドキドキが止まらない。

露出の趣味があるわけではないが、少し鼓動が早まるのも無理はない。


 すぐに下着を取って、タオルを取ればいいだけのはず。


 はずだった。


(こんな姿剣也君に見られたら)


 想像するだけで真っ赤になるレイナ。

しかし突如聞こえる声で頭が真っ白になる。


「よっと」


(いきなりバルコニーから現れたらみんなびっくりする…か…な……え?)


 だって空から好きな人が降りてくるなんて誰も思わないのだから。

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