第72話 30階層攻略
「よかったです、本当に」
剣也と美鈴は、レイナと合流した。
来た道を探していたレイナは、同じ道を大きな声で呼びながら歩けばすぐに合流できた。
「ごめんなさい、レイナ先輩」
美鈴がしっかりと頭を下げる。
自分がどれだけ心配をかけたか理解しているつもりだ。
だからちゃんと謝る、自分の身勝手な行動が呼んだ危険だったのだから。
「いいんです、無事だったならそんなことは…」
レイナが美鈴を抱きしめる。
美鈴もレイナを抱きしめて安堵する。
「とりあえず、30階層目指そうか、美鈴の傷の手当も早くしてあげないとだし」
「はい!」
「ええ」
ここからなら引き返すよりも30階層の方が塔からの脱出は早い。
大きな傷ではないとはいえ、速く手当してあげないと残ってしまう。
…
「やっと着いたな、29階層」
それから剣也達は攻略のスピードを上げた。
一階層30分ほどで余計な戦闘はせずに最短距離で攻略した。
「そういえば、剣也先輩。その新しい剣強そうですね」
「あぁ、メタルスライムの剣を進化させたんだ」
そして剣也はその剣を見る。
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装備説明
・鋼涅王剣Lv1(Lvによる上昇なし)
Aランク レア度★★★
能力
・攻撃力+3000
・防御力+1500
・素早さ+1500
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メタルスライムを進化させたてできたAランク装備。
鋼涅王と書いて、メタルスライム王という意味だ。
涅はくりと読むらしいがスライムという意味もあるらしい。
ググったら出てきた。
これによって剣也のステータスは。
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名前:御剣剣也
DP:162300pt
職業:錬金術師
・錬金Lv13(+1):次のレベルまで100万pt
(ランクAの武器を日に10回錬金できる:知力10に付き+1回)
(ランクEの武器を無限に錬金できる)
(装備品を錬金の種に変更可能 錬金の種:同ランクの錬金に使用できる種)
・ステータス錬金LvMAX
(現状のステータスを自由に振り分けられる。念じるだけで変更可能)
◆装備品
武器:【鋼涅王の剣Lv1】
頭 :【帝の兜Lv1】
胴 :【深淵龍の鱗鎧Lv1】
手 :【帝の小手Lv1】
足 :【王蜘蛛の糸靴Lv1】
アクセサリー:【ゴブリンキングの首飾りLv1】
◆ステータス
攻撃力:0(+3400) ▼0
防御力:0(+6500) ▼0
素早さ:0(+2500) ▼0
知 力:0(+400) ▼0
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そして剣也達は、白熊、白狼を倒して29階層へ。
いつもの通り荘厳な扉を開いてボス部屋へ。
「この階層のボスはなんなんですか?」
「狼らしいよ。美鈴が倒した狼の上位種なのかな?」
「あいつら群れで襲ってきやがって、男らしくないですよね」
「はは、孤独なイメージがある狼だけど実際は群れで行動するのが普通だからね」
オオカミ少年をイメージする剣也。
孤高の狼はかっこいいとは思うが実際は単独で行動することはないだろう。
このダンジョン以外は。
扉を開けた剣也達の前に寝そべるのは巨大な狼。
白色の毛をなびかせて、まるで神話の狼だ。
この階層のボスとして有名なこの狼は、ちびっ子たちにも人気のボス。
いつしかダンジョン攻略が娯楽となっているこの世界では、ダンジョンの攻略の様子を動画投稿サイトに上げる人も多い。
とはいえ、しっかりと修正しなければあまりにショッキングな映像も流れるし、一流冒険者はそもそも探索だけで稼げる。
なのでこの階層ぐらいが需要が多いのに、供給が少ないともいえる。
僕もたまに見るが、もう参考になりそうな動画はない。
30階層以降を上げている投稿者は一握りだろう。
すると大白狼が立ち上がり、舐めるように僕らを見る。
その目は餌を見るハンターの目、生半可な覚悟の探索者の心はへし折れる。
「美鈴やってみる?」
「ちょっと厳しいかなーあはは。応援してます!」
「白熊とは格が違うからね。いつか倒せるようになろうな」
そして剣也が剣を抜いて、ゆっくりと狼へと歩き出す。
その様子をみれ銀狼が怒りの表情を上げながら、駆け出した。
大きな口を開きながら、剣也に噛みつく。
傍から見ればショッキングな映像だ、目を背けたくなる映像だ。
「アガッ!?」
しかし噛みついた牙は片手で止められる。
鋼涅王の剣が首をそのまま一刀した。
「さすがですね」
灰になった狼を見ながら剣也を褒めるレイナ。
涼しい顔で剣を振って血を飛ばす剣也。
「50階層までは、苦戦しないだろうな。あの階層からAランク推奨になるはずだし。さてと…」
目の前に現れた銀色の宝箱。
中には白色の狼の装備が格納されていた。
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装備説明
・大白狼の毛皮胸当てLv1(Lvによる上昇なし)
Cランク レア度★★
能力
・素早さ+200
・温度耐性 中
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「お! 温度耐性中か!」
温度耐性が中ならば相当の温度を無効化できる。
精霊が放ってくる魔法だって無効化できるかもしれない。
これは進化させるべきアイテムだな。
美鈴に預かってもらい剣也達はゲートの前へ。
「じゃあ、30階層へいこうか、あの階層は綺麗らしいよ」
…
ゲートを通って転移する3人。
そして広がるには、見渡すばかりの。
「ビーチ?」
「こうなってるのか……ほんとに南国みたいだ。まるでハワイ? いったことはないけど」
「あっつー」
レイナと美鈴は、スキーウェアを脱いで薄着になる。
白い砂浜、波打つ海、照らす疑似太陽と温かい気温。
まるで南国のビーチのような光景が広がる30階層。
現実世界なら、トロピカルジュース片手にセレブたちが優雅な休日を過ごしていそうだ。
とはいえ、ここまで攻略できるセレブもいないので無人のビーチに波打つ音だけが階層に響く。
はずだった。
「あぁ、お前らもうこの階層まで来たのか…」
突如海から現れる筋肉の魔物。
ブーメランパンツにムキムキの身体。
胸毛も生えて色付きのゴーグル。
厳つい軍人のような、傭兵のような男。
その男は。
「天道さん!?」
「よぉ、坊主」
天道龍之介その人だった。
「なにしてるんですか。こんなところで」
「バカンス」
「バカンスって……確かに綺麗ですけど」
見渡す南国の階層。
人はほとんどおらずプライベートビーチと化している。
よく見れば、遠くにもう三人ほどいるようだ。
「この階層は年がら年中一番過ごしやすくてな、好きなんだ。俺たちも毎日攻略してるわけじゃねーからな。特に60階層からは別格だ」
天道さん達は60階層からの攻略を開始している。
しかし敵の強さが一段上がりまた情報もないため思ったよりも攻略が進んでいないようだ。
「初めまして蒼井レイナです」
「は、初めまして鈴木美鈴です」
「あぁ、よろしく。天道龍之介だ。宵の明星の団長をしてる」
レイナと美鈴が挨拶をする。
美鈴は、その風貌に顔が引きつっているががプロレスラーみたいな肉体にブーメランパンツなので仕方ない。
そもそもレイナよりも有名な可能性まである世界最強の探索者。
緊張するなというほうが無理だろう。
天道さんに連れられて1階層へのゲートへと歩く剣也達。
そこには宵の明星のメンバーがバカンスを楽しんでいた。
あのとき王種達を討伐してくれた5人。
天道さんは、言わずもがな。
「おう、久しぶりじゃな。先日10階層じゃったのにもうこの階層まで来たか。若さじゃなー」
あの時和服だったおじいさんが、普通にハイカラな水着にサングラスで挨拶してくれる。
あの後宵の明星に簡単なお礼だけはしていた剣也だが、ちゃんと話す機会はまだない。
田中さんが席を設けると言っていたのでそれを待っているところだった。
「佐々木さん、お久しぶりです」
佐々木一心 職業は剣士。
現実世界でも剣の達人、剣だけを使った戦闘なら天道さんすら超えかねない最強のおじいさん。
ダンジョンが現れる前から達人として世界に名をはせたおじいさんは、やはりダンジョンの中でも達人だった。
テレビのインタビューでなぜダンジョンに潜るのですかと聞かれたとき、命を懸けた戦いができるからと答えた生粋の武人。
齢60を超えるのに、鍛え抜かれたその体は若さすら感じる。
「こんにちは、剣也君。おなかの傷はもう大丈夫ですか?」
優しそうで、知的な眼鏡のお姉さん、キャラ的には愛さんとかぶるのは樋口 恋さん。
大学院生らしいが、ダンジョンに興味を持ち、ダンジョンを研究しているうちに最強のギルドに入ってしまったというちょっと異常な経歴の人。
僧侶として傷を治すことができる職業だが、普通に戦えるらしい。
自分で傷を回復しながら戦うバトルヒーラ。
傷を治すときは快感を感じて光悦な表情をするというから一種の変態なのだろう。偏見だがエロい人だ。
「ってか剣也君ハーレムじゃん。女の子二人連れて攻略なんて。ははは! 発情期?」
陽気で元気な背の小さい女の子(27歳)
南 ノア さん。
彼女はサポーターとして活動しており、美鈴と同じ職業のサポーター。
豊富なアイテムボックスから様々な装備を取り出して最適な武器で戦うらしい。
アイテムボックスの広さは倉庫ぐらいあるそうなので、中で生活すらできるほど。
そして最後の一人。
「レイナちゃーーん!! 連絡先おしえてぇぇぇ」
エッチなNTR本の竿役みたいな大学生が走ってきた。
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