第36話 エクストラ

「ステータス」


 そして表示されたレイナのステータス。

勇者の職業の破格の性能に僕は目を疑った。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

名前:蒼井レイナ

DP:98000pt

職業:勇者

・勇なる者Lv1:次のレベルまで10万pt

(Lv*1000能力値上昇)

・生命回帰LvMAX:(未開放)


◆装備品

武器:【鋼の剣Lv1】

頭 :【騎士の兜Lv1】

胴 :【騎士の胸当てLv1】

手 :【騎士の小手Lv1】

足 :【騎士の具足Lv1】

アクセサリー:【なし】


◆ステータス

攻撃力:1000(+20)

防御力:1000(+20)

素早さ:1000(+20)

知 力:1000(+20)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


(全能力+1000!? しかもレベルが上がるごとにさらに上がっていくじゃないか…)


「剣也君のステータスは私よりも攻撃力が高いですね」


 僕のステータスを見ながらレイナは、攻撃力について言及する。


(騎士の装備で、その力のレイナさんのほうがバケモンなんだけど…)


「レイナこそ、さすがは勇者って性能だね。騎士シリーズ? もっといい装備を揃えられたんじゃ…」


「装備の力に頼らず強くなるためと、前マスターからは言われました」


(あの糞佐藤は口だけはうまいな)


「そっか、じゃあ僕がいつか装備を用意するけど、それでもいい?」


「はい、問題ありません」


 そして僕とレイナは、ダンジョンを攻略する。

といってもここから10階層までは急げば30分ほど。


 なので、いつも通りサクサク攻略していく。

そして僕は見て思った。やっぱり美しいと。


 相手はホブゴブリン。

しかしその花びらが舞うような戦いは、美しくただの一度も切り結びすらせずに倒した。


 全てをギリギリで交わし続ける、まるで命が惜しくないかのように。


 ステータスは、運動能力や、防御力に影響を与える。

しかし剣の扱いや体の使い方はその人特有のものだ。

なので、仮に同じステータスの剣の達人と素人ならもちろん剣の達人が勝つし、多少の差ならひっくり返す。


 レイナの戦いはまさにそれだった。

武器に頼らず己の力を磨いてきた結果なのだろうか。


(佐藤の嘘が、ほんとになるとはな…まさか本気でそう思ってたとは思えないし)


 そして二人はゴブリンジェネラルの階層へとたどり着いた。


「ギャァァ!」


ザシュッ!


 2秒で倒した。


 もうゴブリンジェネラルなんか相手にならないな。

この周回が終わったら30階層まで目指そうか。


 そして10階層へのゲートをくぐり転移する。

そこでは、草原が広がり、古い家が建つ、そして多くの冒険者が屯っている。

10階層を到達した新人冒険者、11階層へと挑戦する銀級冒険者達。

100人ほどだろうか。


 そして僕達は一階層へとゲートを使って転移する。

そして再度2階層へ。そして10階層、そして2階層を繰り返す。


ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!

ザシュッ! ザシュッ! ザシュッ!

ザシュッ! ザシュッ!


「ふう、これで10回目、長かった周回もこれで最後だな」


 そして剣也は、今日10回目、そして累計100回目の扉を開く。


(ん? 気のせいか? 扉の文様が変わっていたような…)

 

 そんなわけはないかと首を振る。

なんだか、心がざわめいた。


 扉を開けるとザザザッという音が聞こえているような、しかし聞こえていないような。

空耳なのだろうか。


「剣也君、聞こえますか…」


「!? レイナも聞こえるのか?」


「はい、気のせいにも思えますが確かに聞こえます」


 徐々に大きくなっている気がするその音。

心をざわめかせ、不安にさせる。


 まるでダンジョンが笑っているような…。


(でも普通にゴブリンジェネラルだな)


 そして中央にはいつものようにゴブリンジェネラルが待っていた。

ゲヘヘと下卑た笑いを受かべるゴブリンの将軍。


 そしていつものように、に駆け出して剣を振るう。

そしていつものように、血しぶきをあげてゴブリンジェネラルはその場で宝箱を生み出した。

そしていつものように、、その宝箱を開きアイテムを取る。


 しかし何かが違う…。

胸騒ぎを感じた僕は、ふとゴブリンの死体に目をやる。


(なんだろう、違和感が………!?)


「灰になっていない!」


 絶命したはずのゴブリンは、すぐに灰になって消えるはず。

なのに動かないその死体は、満面の笑みで笑っていた。


ザザザザザッ


「な、なんだ?」


 突如大きくなる気のせいでは済まない音。


ザザザザザッザザザザザッザザザザザッ


「レイナ!」

「はい」


 何かが起きる。

そう感じた僕とレイナは背を合わせ剣を構える。


 急に視界が暗転したかと思ったら、周りは草原、そして多くの冒険者達。


「ここは、10階層?」


(何度も見た景色だ、転移したのか?)


 何が起こっていると、剣也が思考を巡らせる。


ブー! ブー! ブー!

ブー! ブー! ブー!


 突如鳴り響く、爆音の警戒音。

まるでダンジョン全体から流れているようなその何かを警告するような音。


「なんだ!?」

「おい、何だこの音!」

「お、おい! ゲートがつかえねぇぞ!」


 外へ行くためのゲートが色あせ使えなくなる。

つまり僕は、僕達はこの階層から…。


「出られない…」


プツンッ


 警戒音が鳴りやんだ。

直後まるでマイクを入れたときのようなプツンッという重低音と共に、アナウンスが流れだす。


『9階層ボスを同一対象が累計100回討伐したことを確認しました。エクストラボスを10階層に召喚します』


 そして絶望が現れた。

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