第35話 ダンジョンへ with勇者
「え? え? どういうこと?」
「レイナさんどういうこと!? もしかして二人って!?」
焦る観衆、頭を抱える僕、相変わらず無表情のレイナ。
そしてレイナが、無自覚で爆弾発言を連発する。
「昨日の夜は彼の家で過ごしましたが、それがなにか?」
「「きゃぁぁーーーー!!」」
女性陣の黄色い悲鳴と。
「「ぎゃあぁぁぁあーーー!!」」
男性陣の怨嗟の悲鳴が教室に響く。
「み、御剣氏! 我らは非リア充の同士であろう! 裏切るでござるか!!」
初耳だが? 俺に同士なんかいない。いるとしたらお前達の幻想だ。
眼鏡の目立たない集団が、僕の襟をもって必死に揺らす。
我らは同士であろうと血の涙を流して僕を揺する。
「御剣君! 御剣君! どういうこと? ねぇ! どういうこと?」
女の子達も有名人のスキャンダルに心躍らせ、話したこともないのに話しかけてくる。
「ち、ちょっと事情があって寝るとこを貸してるだけだから!!」
「剣也君は、私のご主人様(マスター)です」
「「きゃぁぁーーーー!!」」
「「ぎゃあぁぁぁあーーー!!」」
「変な言い回しをするなー!!」
(お前感情がないとか絶対嘘だろ、キャラ作ってんだろ!!)
悪意すら感じるレイナの言葉選びに教室のボルテージは最高潮に上がる。
僕は、男どもからの殺意を一身に浴びて、身の危険を感じ教室を飛び出した。
「走って帰るのですか?」
レイナも荷物をもって駆け出した。
剣也のステータスをもってしても振り切れない、さすがは勇者。
さすがは剣也の憧れた人。
一目散に学校を飛び出して、息を整える剣也。
そして…。
「剣也君、早いですね。見失うかと思いました」
すぐ後ろで、まったく息を切らさないレイナ。
(相当ステータス上がったはずなんだけど、まだレイナのほうが上なのか?)
「レイナ、僕達が一緒に住んでることはあまり公に言わないように!」
「? わかりました」
首をかしげながら肯定するレイナ。
(はぁ…、ほんとにわかってるといいんだけど…)
「今日僕はこのままダンジョンに行くけど、レイナは帰る? 帰るなら鍵を渡しておくよ」
「ダンジョンですか、私も同行します」
私も同行しよう! 某花〇院みたいにレイナは、剣也についてくるようだ。
同じギルドのメンバーとして? そもそもダンジョンが好きなのか? 彼女がダンジョンに潜る理由は何なんだろう。
「いいけど、今日もダンジョンの10階層で周回するだけだよ?」
「構いません」
「レイナってダンジョンに何を求めているの?」
「……」
(黙秘された、まぁいいか)
うつむきながら何も言わないレイナ。
ついてくるというのなら拒否するほどの理由もないため一緒にダンジョンに行くことにした。
…
「け、剣也君…なにがあったの?」
愛さんが、僕とレイナを見て震える。
愛さんだけじゃない。多くの冒険者達、そもそもここにくるまでに何度指を刺されたか。
「今度僕ギルドを作ることになったんですが、レイナさんはそのメンバーになるんです…」
「えぇぇ! ほんと? は、初めまして。剣也君のナビゲーターをしてます。中野愛です」
「はじめまして、蒼井レイナです。よろしくお願いします」
レイナと愛さんが握手を交わす。
(ちょ、ちょっと! 聞いてないよ、剣也君!)
「って、ギルド作るの!? え? ほんと? もう驚くことばかりなんだけど…」
「すみません、話してませんでした。あ! ギルドのナビゲーターも愛さんにやってもらうってできるんですか?」
探索者ごとに担当ナビゲーターはつくが、ギルドはギルドの担当ナビゲーターがつくことになっている。
だからできれば新設するギルドのナビゲーターも愛さんにやってもらいたいと剣也は思っていた。
「そ、それは指名してもらえてば多分大丈夫だけど…もしかしてメンバーは二人?」
「いえ、あともう一人いますんで今のところは三人ですね」
「お、女の子?」
「はい、一つ下です」
(いつの間にかハーレムルートに入ってるぅぅ!!)
出遅れたーという思いと共に、愛は頭を抱える。
いつの間にか自分が目をつけた少年の周りには女の子が集まっているようだった。
「で、愛さん。とりあえず今日も10階層を周回しますんで!」
「え? えぇ、いってらっしゃい。気を付けてね」
その剣也の背中を見ながら愛は思った。
(もし、レイナさんが敵になったら…)
「はぁ…勝ち目ないわね」
大きなため息をつきながら剣也を愛は見送った。
…
ダンジョン2階層。
ゴブリン達の巣窟、もう慣れたもんで地図も立て札もなしで攻略できる。
今日も10回、9階層のゴブリンジェネラルを倒す予定なので、そうすると合計100回攻略することになる。
「じゃあ、レイナさん。ステータスの共有だけしていいですか?」
「はい、問題ありません」
「「ステータス!」」
そしてレイナのステータスと、僕のステータスが表示される。
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