【完結・書籍化決定】俺だけダンジョン装備がレベルアップ! ~追放された無能職の錬金術師は、錬金を繰り返し最強装備を作り出す。勇者も魔王も神々もSSSランク武器には勝てません~
第25話 お前の敗因は一つだけ、お前は俺を怒らせた
第25話 お前の敗因は一つだけ、お前は俺を怒らせた
「佐藤さん、あいつきますかね?」
ここは、シュガー&ソルトのギルド本部。
一軒家を改造して作られた佐藤の根城。
中は広く、吹き抜けになった大広間で、仲間達と酒を飲みながら佐藤は高笑いする。
「ははは! あの無能、プライドだけは高いからな。真っ赤な顔してくると思うぜ?」
缶チューハイを片手に馬鹿笑いする佐藤達。
今日は、佐藤とその取り巻き達5名ほどがそこで屯っていた。
「佐藤さん、そろそろ計画のこと教えてくださいよ! 何のためにこんなことしたんすか?」
「ばっか、お前まだわかんねぇのか?」
そして佐藤は計画の全貌を高らかに話す。
そのゲスの極みのような計画を。
今日本では、装備品での犯行が多発している。
そのため装備をつけたものが、理由もなく暴行を加えた場合大問題となる。
高校生の佐藤達では、ケンカの一つで済まされる場合も多いが。
なので、佐藤もばれないように気を使いながらいじめや暴行を繰り返していた。
ばれない程度に、証拠も残さないように暴力を。
しかしストレスはたまっていく。
そこで佐藤に稲妻走る! 閃く悪魔的発想。
合法的に死ぬほど殴る方法が一つあるじゃないか。
その方法とは、正当防衛。
装備品をつけた探索者にギルドが襲われた。
いきなり殴りかかってきた。
どんな武器をもっているかわからないため全力で抵抗するしかなかったと…。
正当防衛なら、いくら殴っても問題ない。
だから、あの御剣がこのギルドに殴りこんできて、俺を殴るように仕向ける。
胸ポケットのスマホで撮影の用意もしているため、証拠はばっちりだ。
一発殴らせなきゃいけないのは、腹立たしいがそのあと死ぬまで殴れると思うとそれぐらい我慢しよう。
そしてそのあとは法のもと、裁いてもらう。
死ぬほどボコボコにされて、司法という絶対的正義にも裁かれて、探索者の資格を剥奪され、少年院送り。
そのあとは、あいつの妹をあの写真と兄の刑を軽くするからなんてうまく口車に乗せれば、ほら簡単に、性奴隷の完成だ。
泣いて喜ぶように仕込んでやろう。
あんなに嫌がっていた女を俺好みに作り変えてやろう。
そしてあいつの前で、犯してやろう。
自分のせいで、妹が俺の奴隷になるのを独房からみることしかできない。
その事実を知ったとき、あいつはどんな顔をするんだろうな。
あの目が絶望に染まるのが、待ち遠しい。
(あぁ、早く来ねぇかな)
光悦の表情を上げながら、佐藤は待ちきれないと酒を飲む。
その時だった。
ドーンッ
ドアを蹴破る音がする。
そこには、一人の少年が立っていた。
怒りに任せて扉を蹴り飛ばす。
(ウェ~ルカ~ム)
それをみて佐藤はにやけが止まらない。
この瞬間、計画の成功を確信した。
「お前らは絶対手を出すんじゃねーぞ? 計画が台無しだからな」
多対一では正当防衛にならないから。
そして佐藤は、剣也を見る。
ゲスの極みのような表情を向けて、剣也に言う。
「サプライズはどうだった? お兄ちゃん」
まるで殴れと言わんばかりに、頬を突き出す。
兵士シリーズしか持っていないような探索者のパンチなど蚊ほども聞かないから。
ほれほれと、煽るような態度を取る。
剣也は何も言わずに拳を握る。
言葉なんか出てこない、怒りで我を忘れてしまったから。
そして剣也は駆け出した。
その怒りの拳で、殴りかかる。
それを見た佐藤は、笑みを浮かべそうになる。
その蚊でも止まる拳で殴れと。
だ・・・駄目だ。まだ笑うな・・・こらえるんだ・・・し・・・しかし・・・・。
佐藤は計画通りという顔で必死に笑い声をあげそうになるのを耐える。
(はい、お前の人生終!?)
剣也に殴られるのを待つ佐藤。
確かに想定通りだ、計画通りだ。
しかしただ一つだけ誤算があった。
それは…。
「ぶべぇらぁ!!」
それは剣也がありえないほど強くなっていることだった。
直後まるで漫画のように吹き飛ぶ佐藤。
鈍い音があたりに響く。
奥の壁に何かが激突した音とともに。
「さ、佐藤さん!?」
ほこりを巻き上げながら吹き飛んだものを皆が見る。
殴ったのは剣也、ならば吹き飛んだのは?
そこには顎が外れて、血を流し、何が起きたと目を丸くする佐藤がいた。
剣也は佐藤まで走り出す。
周りは唖然として動けない。
そして胸ぐらをつかみ立たせて、もう一度拳で。
「ち˝、ち˝ょっと˝ま˝て˝」
殴る。
「ぶへっ!! い˝、い˝い˝か˝げんに!」
反撃した佐藤の拳が剣也に当たる。
しかし剣也は、動じない。
まるで聞いてないというような顔で、冷たい目で佐藤を見る。
そして何もなかったかのようにまた殴る。
歯が一本、一本と血と共にあたりに飛び散る。
何度殴られたんだろう、痛みで、涙を流す佐藤。
「ゆ˝、ゆ˝る˝し˝て˝っ」
この痛みから一旦逃げたくて、謝る佐藤。
謝ったって許すわけないだろう。
奈々がやめてと言ったときお前はやめたのか?
「あ˝、あ˝や˝ま˝る˝か˝ら˝! おれがわ˝る˝か˝った˝か˝ら˝! もうなぐらにゃいで」
いらねぇよ、お前の謝罪なんか。
俺が聞きたいのは、お前の悲鳴だ。
「ほ˝、ほ˝らス˝マ˝ホ˝。写真はこ˝こ˝だから! こ˝れしかないから!」
お前写真まで取ってたのか。
佐藤が胸ポケットから取り出したスマホを握りつぶし、剣也はさらに怒りを強くする。
「し˝、し˝ぬ。ごめんなさい、ごめんなさい」
もうすべての歯が抜け落ちただろうか、鼻はひしゃげて腫れで目も見えない。
そして剣也は、最後に佐藤の腹を強く殴る。
殺してやりたいが、さすがにそこまでは剣也も覚悟がない。
それでも…。
「おぼぇぇ!!」
内臓ごと吐き出したかと思うほど、酒と、飯と、血を吐き散らかす佐藤。
佐藤のこの姿を見ると少しは怒りも落ち着いた。
「あやまれ」
「ご、ごめ˝ん˝な˝さ˝い˝」
額を床について精一杯謝る佐藤。
「俺じゃない、奈々にだ」
「あ˝、あ˝や˝ま˝り˝ま˝す˝。う˝か˝がわてい˝た˝だき˝ま˝す˝」
涙と血を流しながら佐藤は、剣也に謝り続ける。
それを見た剣也は、少しは収まった怒りを落ち着けてギルドを出た。
今は奈々の傍に早くいてあげたいから。
奈々に謝るという約束を取り付けて、その場をあとにする。
嵐のように剣也が過ぎ去り、静寂がギルドを包む。
血を吐きながらも佐藤は、意識を失った。
…
しばらくして夜遅く。
佐藤が目を覚ます。
「さ、佐藤さん!? 大丈夫っすか?」
激痛と共に起き上がり、自分に起きたことを思い出す。
「く、くそがぁぁぁ!!」
腫れた顔で、起き上がった佐藤は、強く拳をベッドに打ち付ける。
歯が抜けて何を言っているかはよく聞こえない。
なんであいつがあんな力を…。
どうせ卑怯な手を使ったに違いない。
でも今はどうでもいい、そんなことよりはらわたが煮えくり返りそうだ。
「おい! 兵隊あつめろ! あの糞やろうぶっ殺すぞ!」
「へ、へい!」
そして佐藤のギルド30名からが集まった。
金タグ冒険者すらいるギルドメンバー。
この戦力ならあいつがどんな力を持っていても殺せるはずだ。
(少年院? いってやるよ! お前を殺してな!)
そして御剣の家に装備品を携えて向かおうとギルドをでる佐藤達。
人気のない深夜、静かな夜。
進む探索者の集団。ふと彼らの足が止まる。
なぜならそこには一人の男がまるで道を阻むように立っていたから。
「やぁ、佐藤君、ここから先は行き止まりだよ」
黒く光る肌と、反射する眼鏡。
高級なスーツを着こなして待ってましたと一人の男が立っていた。
その男は笑顔で、佐藤に言い放つ。
「ここが君の終着点だ」
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