【完結・書籍化決定】俺だけダンジョン装備がレベルアップ! ~追放された無能職の錬金術師は、錬金を繰り返し最強装備を作り出す。勇者も魔王も神々もSSSランク武器には勝てません~
第18話 メンヘラ? ヤンデレ? ビッチ? それとも…
第18話 メンヘラ? ヤンデレ? ビッチ? それとも…
「おかえりなさい、剣也先輩♥」
僕のボロアパートの前で、美鈴がトランクケースに座って待っていた。
服装は変わらず、短パンが見えないほどの長くぶかぶかの黒いシャツと病的なメイク。
長いつけ爪に、長いまつ毛、セミロングの茶色い髪が丸みを帯びて顔を隠す。
そして、痛々しいまでのピアス達が月に輝き僕を見る。
「み、美鈴! どうしてここに?」
「また会いましょっていったじゃないですか」
「いや、そうだけど今日別れたばっかじゃあないか」
「そうですけど…。ほんとは明日にしようと思ったんです。でも先輩のこと思うともう止まらなくて」
美鈴が、僕に駆け寄ってきて、その長い爪で僕の胸をなでる。
おっふ♥ 思わず変な声がでそうになった。
そして上目遣いでこういった。
「先輩の家に、泊・め・て?」
「と、泊める? 僕の家は貧乏で狭いぞ!?」
「いいですよ、剣也先輩が寝れるスペースがあるならくっつけばいいんですから」
その積極的なアプローチに、心揺れる剣也。
しどろもどろしている所にアパートから妹の奈々がでてくる。
「美鈴? お兄ちゃん帰ってきた?」
「な、奈々! 助けてくれ」
その様子を見て奈々がむくれる。
「むう! 美鈴! お兄ちゃん誘惑するの禁止!」
「えー? それはちょっと難しいかもー」
「と、とりあえず離れなさい!」
奈々が二人の間に割って入り、離れることができた。
しかしなんて吸引力だ、王シリーズを付けていたのに動くことができなかった。
決して僕の力が弱いわけではない、誘惑には弱かったかもしれないが。
「二人は知り合い?」
「うん、とりあえず中に入って話そうか」
そして僕達は、家に入る。
ただでさえ10畳の部屋が3人でより狭くなる。
美鈴は、なぜか僕の隣にちょこんと座る。
近いな、いい匂いがする。
しかし何だこの構図は、思わず正座してしまう。
奈々が厳格な父に見えてきた。娘さんを僕に下さいとでも言いだしそうだ。
父はいないのでどんなかわからないが。
「で、二人の関係は?」
奈々が座るや否や、ドスの利いた声で聞いてくる。
お父さん、怒らないで。
きっと幸せにしてみせますから!
「ダンジョンで知り合っただ…」
「命の恩人なの! それに私のために本気で怒ってくれた人!」
美鈴が僕の声に食い気味でかぶせてくる。
うっとりした目で僕を見る。
まぁあっているけど、その言い方は大げさだぞ。
「ふーん、まぁお兄ちゃんお人よしだしね。なんとなく想像できるわ」
奈々が手を組みながら納得する。
剣也も奈々に質問する。
「それより、二人は? 知り合いみたいだけど」
「美鈴とは、中学の時の同級生で友達、高校は違うけどね…」
「あーあ、それで」
そういえば友達が希望が丘高校に通っているっていってたな。
まさか奈々のことだとは思わなかったが…。
「それで泊めてくれってのは?」
「あ、じゃあ私の悲しい身の上話していいですか?」
自分で悲しいというなよ、とおもいながらも剣也は黙ってその話を聞くことにする。
「私親いないんです」
美鈴は、施設暮らしだったらしい。
幼いころに両親に捨てられ、施設に預けられた。
児童養護施設で育った美鈴は、昨年施設を抜け出した。
よくある人間関係のトラブルだそうだ。
その理由は話さなかったが。
そしてダンジョンで生計を立てられないか挑戦してみたところ、今回の事件に出くわしたとのこと。
「そうか…」
美鈴を自分に重ねた理由を剣也は理解した。
捨てられてた美鈴を自分に重ね、不幸な生い立ちの美鈴を自分に重ね。
そしてあのとき美鈴を助けることで、あのとき助けてもらえなかった過去の自分を助けていたんだ。
あの言葉はまさしく自分への言葉。
虐められるほうにも問題がある? それは虐められたことのない人間の言葉だ。
いつだって、被害者は悪くなくて、ただ理由なき悪意にさらされただけ。
それでも守ってくれる人なんかほとんどいないこの冷たい世界で、せめて僕だけは誰かを守れるようになりたい。
同じ痛みを知っているからこそ、同じ痛みに苦しむ人を救ってあげたい。
だから…。
「わかった、泊まっていい」
「お兄ちゃん? いいの?」
「奈々がいいならいい。しばらく泊めてやる、ずっとというわけにはいかないぞ?」
「やったー!!」
この二人でもただでさえ狭い10畳の部屋。
3人も住めばそれはもうたこ部屋だろう。
でも喜ぶ美鈴をみていると…。
(なんかほっとけないんだよな)
…
モヤシ炒め(モヤシのみ)をたべてお腹を膨らませる3人。
美鈴は見た目通り小食だったので、助かった。
これ以上家計を圧迫させるわけにはいかない、ってかこいつただ飯食らうつもりか?
うちは友達間でもそういうの、厳しいぞ。家計がほんとに厳しいからな。
とはいえ、今日はお腹いっぱいなので、あとはお風呂に入って寝るだけ。
「先にシャワー浴びて来いよ」
「え♥ はい…」
「そういう意味じゃないからな、顔を赤らめるな。俺は後ででいい」
変な冗談はやめろと手を振りながら美鈴をお風呂に向かわせる。
彼女も今日ダンジョンに潜ったんだ、汚れが気になるだろう。
先に入れてあげるのは、剣也の優しさだった。
でも…。
これはラッキースケベのチャンスか?
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