第10話 鋼の剣はすごい剣

 中央広場から少し外れた場所にある武器屋さん。

そこには、上はBランク、下はEランクまでの武器が立ち並ぶ。


 立てかけられた一つの剣を見る。

禍々しいまでの大剣と、厳重に管理されている。

その札には、Bランク装備 【ドラゴンキラー】 と書かれていた。


(えーっと? 0が一つ、二つ、三つ…げぇ!? 三千万越え!?)


 自分では一生かかっても届かないようなバカげた値段の剣が立てかけてあった。

家が一つたつぞ。


 Bランク装備は、ユニーク装備と呼ばれているランクだ。

なにかしら特殊な能力があり、この剣は、龍種に対して大きなダメージを与えることができるらしい。


(龍種か…、いつか相まみえる時がくるのか…)


「愛さん、僕お金ないですよ?」


 多分なにか武器を買いにきたんだろうけど、僕の家は金欠。

常に家計は火の車だ。


「いいの、いいの、出世払いで返してくれたら!」


「そ、そんな…も、申し訳ないです…な、なにか僕にできることはありませんか?」


(体で払えっていったらどういうのかしら…)


 すると、愛さんは首をぶんぶんと振り回す。

まるで、なにか邪な考えを振り払うように。


 そして申し訳なさそうにしている僕の頭をなでながら愛さんはいった。


「5階層の中ボスドロップ 鋼の剣。それを買ってあげる」


「え!? あれ五万ぐらいしますよ?」


 鋼の剣。

これを持つものは、中ボスを倒した証明として探索者として一応は三流として認められる。

三流を認められているというのかは、わからないがそれでも危険な中ボスを倒した探索者としては認められる。


 それ以前の僕は、今はただの素人に毛が生えた程度だ。

そして鋼の剣は、中ボスを倒すと必ずドロップするため希少価値はそれほど高くなく値段も高くない。


 しかしそれでも二流以上の冒険者は、10階層以上を探索するためそれほど流通しない。


「そのかわり…」


 愛さんは、鋼の剣をカウンターに持っていきお会計を済ます。


「絶対生きて帰ってくること!」


 そして僕はその剣を受け取る。

とても重たい、鉄の剣よりもずっと…。


「わかりました! 絶対に無事に帰ってきます!」


 そして僕はゲートを通りダンジョンへ向かう。

鋼の剣を装備して。



 鋼の剣のステータスは以下の通り。


装備説明

・鋼の剣 Dランク

攻撃力を+20する。(Lvに応じて+1)


 これで僕の攻撃力は40。

正直8階層までは、命の危険はあるもののソロ攻略可能なレベルだ。

大ボスは少しソロだと心もとない。


 しかしこれなら中ボスだって、倒せるはずだ。

サクサクと2から4階層を攻略する。

3,4階層は2階層とほぼ同じレベルなので何も困らなかった。


「これが中ボスの部屋の扉か…」


 赤いゲートを通って移動した5階層。

その転移した目の前には巨大な扉があった。

禍々しい文様が描かれ、鈍く光るその扉を前にして、鼓動が早まる。


(よし!)


 決心して、勢いよく開く中ボスの部屋。


 中は大きく丸い空間が広がっている。

半径100メートルほどだろうか。

そしてその中央には、ホブゴブリン。


「これがボス部屋か…」


 僕と目が合ったそのゴブリンは、こん棒を手に叫び声をあげる。

大きさは僕と同じ程度。

小鬼というには、大きくて。

鬼というには小さくて。

それでも立派であることを意味するホブがついたゴブリンだった。


 そして僕はホブゴブリンと切り結ぶ。

しかし…。


「なんだ? これ」


 全然重くない。

これが中ボス? いや、十分強いのだろう。

でもこれが攻撃力40の力なのか。


 切り結んだはずのこん棒をはじき、そして一刀のもとホブゴブリンを切断する。


「想像よりも弱かったな…」


 5階層を踏破した僕には、ダンジョンポイントは10も入っていた。


 それほどの相手には感じなかった。

それでもこの中ボスに無策で挑んで死んだ冒険者は多い。

騎士シリーズ、そして愛さんに買ってもらった鋼の剣が僕を強くしてくれた。


(ありがとう、愛さん…)


 ホブゴブリンの死体が消滅し、そして現れる銅の宝箱。

この宝箱の色で、どんなランクの武器が入っているかわかるらしい。

銅ならDランク以下だ。


 昔勇者PTにいたころ銀までなら見たことはある。

銀でC、金ならB。


 階層によって、出る宝箱の色は決まっている。

稀に違う色も出ると噂はあるが、そんなのは僕は見たことはない。

そしてこの宝箱の色と、冒険者の等級が関係してくる。


 9階層までは銅の冒険者タグ。

それ以降が、銀、金、プラチナ…と続いていく。

なので僕は銅の冒険者タグだ。


 そして僕は宝箱を開ける。

中には、もちろん『鋼の剣』が入っていた。


「Dランク装備の錬金ってしたことないな、やってみるか?」


 レベルアップ♪ 鋼の剣Lv2


 普通にできた。


 次のスキルレベルアップに必要なptは1000ポイント。

ならば中ボスを百回周回すれば、レベルアップできる。


(そうすればCランク装備にも手が届くか?)


「しばらくは、中ボスと6階層で騎士シリーズを集めながら次のレベルを目指すか…」


 そして始まるダンジョン周回。

いまだ三流冒険者の剣也の実力を知る者は少ない。


 しかし確実に一歩ずつ最強への道を歩み始めていた。

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