第17話 その後の行事と潜む影
ランキング戦が終了し、またいつもの日常が戻ってきた。
ランキング戦の結果はSクラスが全体順位でも1位を獲得した。
しかし、そんなことは当然かのように悔しがる人はいなかった。むしろ俺たちCクラスは奮闘したほうだったと互いに賞賛した。
なぜなら、全体順位がBクラスと並んで同列3位だったのだ。1番下の俺たちからしたら十分な成果である。
今日の放課後はその打ち上げに行こうとクラスは大いに盛り上がっていた。
「お前たち、席につけ。ホームルームを始める」
いつもながら唐突に来る担任の八重樫。
その凛々しい姿には長年の貫禄のようなものが窺えるが、彼女は以外にも若い年齢らしい。
「ランキング戦が無事終了し、我々CクラスはBクラスと並んで3位となった。Cクラスとしては喜ぶべき結果だが、Sクラスを目指すならこんな結果で満足しては成長はできない。喜びではなく、悔しさを感じるようになれ」
先程まで3位で盛り上がって打ち上げを予定していた俺たちを否定するような言い方だった。
確かに、俺たちはソルジャーを目指してここに入学して来た。こんなとこで満足しては上へはいけないだろう。
その言葉に感化されてかみんな引き締まった顔をしている。
「次の行事についてだが、2週間後に2泊3日の臨海学校がある。といっても、海で泳いだり山を登ったりするわけではない。これは訓練合宿だ」
訓練合宿か。ランキング戦に続いてソルジャーならではの行事だな。
「ランキング戦を終えて、各々課題が見つかったのではないかと思う。自分の異能、身体能力、協調性、全ての欠点をこの合宿で補ってもらう」
なるほど、ランキング戦が終わってすぐにやる理由はそれか。
ランキング戦で欠点をあぶり出し、2週間の内に復習させ、訓練合宿で克服させる。見事なまでな計画性だ。
「さらに、5月末には中間テストが控えている。その勉強もこの訓練合宿で並行して行う。つまり、訓練合宿兼勉強合宿、ということだ」
訓練と勉強の両立か。なかなかハードな3日間になりそうだな。
「ホームルームは以上だ。臨海学校の詳細を知りたい者は端末を確認しろ」
そう言い残し、八重樫は教室を後にする。
端末を確認すると、既に臨海学校の詳細が記録されていた。これは後で読むか。
「楽しみだなぁ臨海学校!」
ホームルーム終わって早々、如月が俺に肩を組んでそう言った。
それに続いて、料理当番メンバーが俺の席周辺に集まる。
別に集合しようと連絡したわけでもなく、こっちに来てくれと言ったわけでもない。自然に俺たちは集まるようになった。これが俺たちの日常だった。
「そんな楽しいものじゃない気がするが……」
「えー何でだよ!?」
「先生も言っていたでしょ。海で泳いだりするわけじゃないって」
俺に代わって橋本が指摘してくれた。
「でも少し楽しみだろ?皆でお泊まりしたり、ご飯食べたり」
「それは毎日してるな」
「皆で能力についてのアドバイスをしあったり」
「それも授業でしてるんじゃない?」
「ひとつ屋根の下で勉強を教えあったり」
「それも毎日してる気が……」
「………………もしかして、いつもと変わらない?」
「そのようね」
「何だよそれー!」
つまんない、と叫び続ける如月に椿と朧は苦笑いを浮かべる。
「臨海学校ってのは建前だけで、いつもの学校と変わんないのかよー」
「変わるのは場所だけだな」
「でも、海とか見えるんじゃない?」
「自然もあるよね」
「気分転換にはなりそうね」
「えーん」
俺たちの必死のフォローも如月の耳にはもう届いていなかった。
似てるようで似ていない。そんな臨海学校を過ごすだろう。
そして────俺は何かを良からぬ出来事が起こる気がした。なぜだかふとそう感じた。俺の勘がそう言っている。
※
そこは薄暗く、静かな場所だった。
そこに人が数人、いや、人なのかどうかも怪しいモノがコソコソと話を進めていた。
「コイツか」
その中の1人が、不思議な水晶玉に写る人物を見て笑みを浮かべた。
「こいつを喰らうのは俺だ。邪魔はするな」
「ふざけるな。誰がお前なんかに」
短髪の者に、デカブツの者がつっかかった。
「黙れ。こいつは誰の者でもない、神のものだ」
その2人を長髪の者があしらう。この集団のリーダーだろうか。
「決行はいつだ?」
細身の者がリーダーに向かってそう言った。どうやら人数は4人のようだ。
その問いに、リーダーはゆっくりと答えた。
「────2週間後だ」
どうやら時崎の勘は当たっていたようだ。
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