第11話 ランキング戦2

 ※ここからは第3者視点



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「ぐはっ……!」


 縦倉対如月の勝負は、圧倒的に縦倉が有利に進んでいた。

 如月が真正面から突撃してはあっさりと吹き飛ばされる。

 しかし、諦めずに如月は何度も突撃していく。

 その繰り返しだった。


「お前も懲りないな。もう勝負は見えているのに」


 縦倉は余裕の表情。汗一つかいていない。

 それでも、如月は挑み続ける。


「くっ……!うおおおおぉ!」


 そろそろ如月も限界のはずだが、その根性はどこからでているのか。

 ソルジャーを夢見る者のプライドなのか、それとも何か理由があるのか、それはまだ定かではない。


「もう少し……!もう少しで……!」


 朧も歯を食いしばって2人の戦闘を見ていた。

 助けたいのに助けられない。そんな悔しさが全身を覆う。


(集中しろ!もう少しだ、皆のためにも!)


 縦倉の動きを凝視する。

 腕の振り、身体の捻り、攻撃時の重心。

 1つ残らず分析していく。


(見逃すな、全部視界に入れろ!僕だって……立派な漢だ!)


 ボロボロになる如月、防御で疲労が蓄積していく橋本。

 しかし、絶対に倒れない。

 なぜか、


 朧を──────仲間を信じているから。


 朧が必ず打開してくれる、そう信じているからだ。

 3人の信頼関係の厚さ。それが垣間見える瞬間だった。

 そして、


「よし、準備完了だ!!!!如月君、こっちを向いて!!!」


 朧が唐突に叫び出した。

 Aチームは何だと驚き出すが、如月と橋本は何も動じなかった。それどころか、待ってましたと言わんばかりに如月は朧と目を合わせる。

 朧の眼が光り出す。

 その眼によって、如月に縦倉の全ての情報が流れ込んでくる。

 相手の動きの癖、攻撃パターン、戦闘時の目線。

 その情報の多さに如月は一瞬頭を抱えるが、すぐに立て直し縦倉と対峙する。


「……何をしたのか分からねぇが、結果はもう見えてんだよ」

「──────」

「ボロボロの身体、流れる血、折れた左腕。その全てが物語っているぞ」

「──────」

「あと1発で、お前は戦闘不能となる」

「──────来いよ。もう喰らわねぇから」

「っ!!!」


 その一言が火種となり、縦倉は如月に殴りかかった。

 お得意の右ストレート。

 物凄いスピードだ。とても目では追えない。

 しかし、如月はそれを意図も簡単に避けた。

 まるで──────そこに拳が来ることが分かっていたかのように。


「!?」


 驚きを隠せない縦倉。

 だが、何かの間違いだとすかさず如月に殴りかかる。

 右、左、右、右、左。

 全ての攻撃が避けられる。


「な、何故だ!?」


 如月には縦倉の全ての攻撃パターンが見えていた。

 それはもちろん、朧の異能である。

 異能『分析』は、対象者の動きを凝視し分析することで、相手の行動を予測できるという能力だった。それにはかなりの集中力と時間を消費するが、全てが整うと、それは未来視に近いものとなる。


「く、くそっ!……だが、俺の動きが分かった所で、その身体じゃ反撃も出来ないだろっ」


 そう、如月の身体は既に立つのも限界の状態に来ていた。


「……ああ、そうだな。だから……1発で終わらせてやる」


 如月の握り締めた右手拳に力が集まる。

 如月の異能『逆境』は、ピンチになればなるほど強くなるというもの。また、相手に受けたダメージを蓄積し、そのまま力として放出することも出来る。


「うおおおおぉ!!!!!」


 如月は最後の力を振り絞り縦倉に突撃する。

 その間に来た左のストレートも避け、縦倉の懐に入り込む。

 そして、


「くらいやがれ!!!」


 縦倉のボディに渾身の一撃を喰らわせた。

 どすんっ!と重い音が鳴り響き、縦倉はその勢いで場外まで吹っ飛ばされた。

 一瞬逆転の力、相手を分析し予測する未来視、その2つの力があってこそのものだった。

 リーダーの縦倉が戦闘不能になったことで、残ったAチームの2人は降参を宣言し、見事如月チームの勝利となった。


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