潜降68m GW③買い物とお参り。

今日は七海が遊びに来た。

「もっちん、どっか行こうよ」


そんなアポなしで遊びに来る七海には私の買い物に付き合ってもらう。

行先は新宿にあるダイビング量販店KAUI。


「へぇ、ダイビングの店ってこんなに大きなお店もあるんだね。で、今日は何か買うの? 」

「うん、今度、洞窟があるところ潜るからライトと緊急用フロートを買っておこうかなって」


「ダイビングってお金かかって大変だねぇ。私はイラストレーターだからそんなにお金かからなくて済むけどね」

「でも、七海も自分の道具使うでしょ。私もやっぱり自分だけの道具が欲しくなっちゃうんだよね」


「まぁね、ま、結局『沼』にはまればどれも一緒か。ドラムの時もそうだったし」

「そうそう!」


****


「25,000円かぁ ..これはパスだな。5,000円くらいでないのかなぁ? 」

「こっち6,800円ってあるよ」


「え~、でもそれって小さくない? それじゃさすがにダメだよ」

「店員さんに聞いた方が早いんじゃない? 」



[ 水中ライトですね。どんなところで使用するとかありますか? ]

「今度、西伊豆の雲見ってところで潜る予定なんです」


[ ああ、私も何度か潜ったことありますよ。伊豆の中でもユニークなスポットですよね。大きな洞窟から小さな洞窟まで様々で楽しいですよ。じゃ、まず水中ライトには明るさを表すルーメンという表示があります。ほら、ここに1000ルーメンとか書いてるでしょ。一般的には1000~1500ルーメンくらいあればいいんじゃないかと思います。


で、雲見ではスポット的な照射より全体的に照らすライトのほうが適してると思います。ただ、最近のライトは、それを切り替えることが出来るすぐれものが多いですよ。

あと、これは商売のようですが、スナッピーコイルを取り付けることをお勧めします。

これを付けておくだけでかなり手元が自由になるし落としてしまう心配もなくなります。強くお勧めしますよ ]



「うわ~! 合計で16,800円かぁ。諭吉が旅立ったぁ.. これでしばらく節約だよ」

「ご愁傷さまです。チーン」



「ねぇ、七海、もうひとつ寄っていきたい所があるんだけどいい? 」

「うん、いいよ。ただ『腹減った~』って感じだからさ、マック寄ってからにしよう」


・・・・・・

・・


「ここ?かなり歩いたね」

「うん」


「ふへ~マンション群の中にこんな場所あるんだね。ここだけ切り取られた空間みたい。あ! これ、ほら布袋寅泰じゃない? 」

「ホテイ様?いやこれは大黒様だよ」


私たちは『成子天神社』に立ち寄った


「なになに..『菅原道真』って書いてるね。これって学問の神様でしょ? はは~ん、なるほど、なるほど.... 」

「な、なにが? 」


「哲夫さんか.. 甲斐甲斐しいねぇ」

「ち、違うよ。ほら、たまたま新宿にそういうのあるって知ったから、ついでじゃん!ついで! 」


「ついでの割には、かなり歩かされたねぇ~」

「そうかな? 」

・・

・・・・・・・・


「ねぇ、ねぇ、この水ってどうやってお清めするのかな? 」

「わからないけど、柄杓ひしゃくで水かけて手をすすぐんじゃないの? 」


「なんかさ、私たちって寺いったり神社いったり多いよね」

「ははは。そういえばそうかも」


私たちは参拝をした。

二礼二拍手一礼を知るような2人でもなく、何となく頭を下げてお願いをした。


(今日も500円だ.. 神様、奮発なんだからね)


—パン! パン!


・・

・・・・・・・


「ねぇ、スマホで調べたらこっちの奥に富士塚っていうのがあるらしいよ? パワースポットなんだって。行って見ようよ!」


そのパワースポットは火山岩のゴツゴツしたビル2階程度の高さの山だ。

登り口と登山道がある。


「登ろうか。山寺登った私らをなめんなよ!」

「私は『力こんにゃく』がほしい」


かなり足場が悪かったがその小高い富士塚を登頂すると....


「うん、やっぱりマンション群だ」

「うん、わかってた」


昔、まだビルディングがない時代は、もしかしたらここから見る景色は、遠くの富士山を望むことができたのかもしれない。

そう思うと少しだけ感慨深いものを感じた。

そして....

購入したはずのお守りを何処かに落としてしまった事に気が付いたのは帰宅してからだった。

受験のお守りを『落とす』なんて最悪だ....

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