潜降67m GW②相談を受ける
「突然すいません、桃さん」
「ううん。それより宮野さんに奢ってもらうのいつにしようか? 肉っていうのは金額が高い方がおいしいって、私は知ってる。前の旅で学んだ」
「あはは。山形の話ですか。すごく楽しそうな旅で私も一緒に行きたかったなぁ。ああ、そうだ! 渋谷道玄坂にある『勘三郎』ってお店がおいしかったですよ。そこお勧めですよ! 」
「よし! 萌恵ちゃんが推すその店にしよう! 宮野さんに有無は言わせないから! 」
笑顔の萌恵ちゃんが、改めて真面目な面持ちになった。
「あの、今日、こうして桃さんのお部屋におじゃましたのは.. 峰岸さんのことでして....あの! 桃さんは峰岸さんの事をどう思っていらっしゃるのでしょうか?」
相変わらずストレートを投げてくる。
「うん。峰岸さんはただのダイビング仲間だったよ」
「『だった』??」
「そう。ただのダイビングをしている仲間だったけど、この前の件で峰岸さんは信頼できる友人になりました。大丈夫だよ。萌恵ちゃんが心配するような気持ちはないから」
「ほんとうですか! よかった。じゃあ、桃さんには恋人とか他に好きな方がいるんですね! 」
相変わらず質問攻めだなぁ..
「まぁ、今は、私の恋人は太郎丸かなぁ」
「太郎丸はメスって話じゃないですか? ああ、今はジェンダーレスの時代だから関係ないのか」
これはボケなのだろうか?
笑うところ??
「あの、チーム『カリーノ』の事はすいませんでした」
「え? もういいよ。どうしたの急に」
「あの後、峰岸さんと私は当然のようにチームから抹消されました。でも、それはこちらの辞める手間が省けたくらいでよかったんです。それで峰岸さんが自分でサークルを作るって言ってました」
「へぇ。さすが行動力は凄いね」
「『行動力も』です」
(あらら、失礼しました.... )
「それで、桃さんが受けたような屈辱などがないようなチームにしていきたいっていう思いがあるみたいです。峰岸さんは私に副管理人になってほしいって」
「そうなんだ。いいの?」
「はい。峰岸さんと一緒にひとつのことをやれるって尊いです」
(そうとう熱上げてるんだわね)
「でも問題があるんです。峰岸さんが8月からオーストラリアに1年間留学するんです。それで『その間頼む』なんて事言われまして.. 」
(峰岸さんはそういうところなんだよなぁ..)
「チームは峰岸さんが帰ってから作ったらいいんじゃないの? 言ってみたら?」
「それは、もう言いました。そしたら『俺はオーストラリアでバキバキのカリスマダイバーになって帰ってくる。チームの頼れる存在として帰ってきたい!』って。」
(だからそういう格好つけやめればいいのに..)
「それで.. 私に力を貸してください。やっぱり私ひとりだと心細くて.. それに、桃さんにいてもらえると、私、不安も少し軽くなるんです」
(ああ、そうか.. 好きな人が遠くにいるっていうのは不安だしさびしいよね)
「自分勝手な事ばかり言っ-」
「いいよ。私も新しいことは嫌いじゃないから、私が手伝えるところは手伝うよ。それでいいかな? 」
「はいっ! よろしくお願いします」
「それで.. 萌恵ちゃんは峰岸さんに自分の気持ちは伝えたの? 」
「はっきりとは言ってないです。ただ、たぶん気づいてくれているとは思うんです。私、こんな性格だから、すぐ何考えているか相手にわかっちゃうみたいなんです」
(それはそうだね。私も最初からわかったもんね)
「でも、はっきり伝えてみたらいいよ。これは私の勘だけど峰岸さんは、大丈夫だと思うよ」
「そうですか!?! 桃さん何でわかるんですか? 」
「勘よ、勘! 」
「あのもうひとつ頼んでいいですか? 」
「なに? 」
「来週の祭日、雲見ボートに行くんですが、桃さんも一緒にいきませんか? 」
「え? それこそ峰岸さんと2人で行ってみたら? 」
「いえ、3人なんです。私たちが『カリーノ』から抹消された理由を知って、同じく辞めた女性がいるんですが、その人が一緒で.. 」
「もしかして美人さんなの? 」
「..もうハンパないんです! 私なんかよりも全然背が高いし、足も長いし、なんか出てるところも出ていて.. 職業モデルさんですよ、きっと!」
「いいよ。じゃ、私も参加してあげる。そのかわり貸しね」
「よかったー!ありがとうございます」
何か、おもしろい子。
わかりやすいのは良いのか悪いのか。
でも、パワーいるな、この子と話すの。
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