潜降66m GW①座学
4月下旬、ついにGWに突入した。
何もない....
何も予定を立てていない。
正確には予定を立てることが出来なかった。
このGW、哲夫さんの勉強も大詰めを迎える中、となりで勉強をしている哲夫さんを後目に能天気に遊びにでかけるのも流石に気が引けてしまったのだ。
だからといってGW中、ずーっと部屋にいるところを見せれば、きっと哲夫さんに気を遣わせるだろう。
もしかしたらこう言うかもしれない。
『僕に気を遣わないで、どうぞ遊びに行ってください』
「気を遣わないで.. 気を遣ったらダメなのかな.... 」
ということで私も部屋にいても良い理由を作るためにショップVisitに来ました。
****
ショップに行くとコーヒーの香りがした。
なんでも最近、オーナーの智志さんがコーヒーに凝り始めたというのだ。
本格的な器具を購入して、日々研究しているらしい。
智志さんは私に『コーヒー作ろうか?』と勧めてくれたけど。コーヒーは苦いだけにしか感じなく....遠慮しておいた。
「詩織さん、アドバンスの次って何があるんですか?」
「今、桃ちゃんて何本くらいだっけ?」
「だいたい40本くらいになりました」
「そう、この先はレスキューダイバーコースがあるよ」
「レスキューダイバー?」
「うん。レスキューダイバーコースでは自分のケアだけでなく、他人のケアをできる力を身に付けるコース。これはダイビングにはとても大切な事よ。 ケガ、病気、事故の対処方法、または心理カウンセリングをする方法を学ぶんだけど、それは同時にダイビング事故を防ぐ方法を学ぶことでもあるの」
「なんか難しそうですね」
「そうね、簡単とは言えないかも。だからこのコースを受けた多くの人は、そのままダイブマスターになる人が多いわ。つまりダイブマスターになる為の勉強のひとつと考えてもいいプログラムよ。」
「ダイブマスターか.. 」
「そう。だから自分がこの先ダイバーとしてどうありたいのか。それが見えてからでもいいんじゃないかな」
「どうありたい?」
「簡単に言えばプロになりたいのか、このまま好きな時に潜る趣味でいいのか。桃ちゃんはまだ40本でしょ。今はダイビングを楽しむことだけ考えたらいいんじゃないかな。そのうち何か思い立つこともあるかもしれないしね」
「でも、受けれないってことではないですよね?」
コーヒー器具の手入れをしていた智志さんが手を止めて言う。
「桃ちゃん、商売としては料金をもらって講習してCカードを発行すれば、お客さんは満足するし、うちは儲かる。でもさ、それを有益なものにするかは、その先にあるんだよ。つまりさ、資格っていうのは取得した先に何をしたいか、するのかに大きな意味があるんだ。まぁ、受ける事を否定してるわけじゃないんだ。だからさ、展示用の教材一式貸してあげるよ。それ見ればレスキューダイバーの事がわかると思うよ」
「ほんとうですか、智志さん。ありがとうございます」
「ただ、もしコース受ける時はちゃんと自分のテキストを買ってね」
「わかりました」
こうして私はまずレスキューダイバーの座学を始めることにした。
哲夫さんと同じく、私も勉強だ。
****
◇LINE
『あの、ちょっとお会いできないでしょうか?』
それは萌恵ちゃんからのメッセージだった。
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