怪ノ村 其乃弐 不幸死紙⑦

「えっと、こんな見ず知らずの男にいきなり声かけて泊めさせてくれるというのはちょっと問題あるんじゃ?。いや、自分は有り難いのだけどさ····。」


目の前の娘はいきなり自分に協力する代わりに家を泊めてさせてくれるという取引を持ち掛けられ。清司は眉を寄せ困惑する。


「協力しくれんの!。協力しないの!どうなん‼️。」


目の前の娘は尚押しを弱めず清司に詰め寄る。


「ど、どうしよう····ワラズマ。」


清司は戸惑うように小言で懐にしまう位牌箱に語りかける。


『清司、自分で決断しろ。私は関知しない···。』


ワラズマは冷ややかに清司を冷たくあしらう。


冷たいなあ······。


ワラズマの厳しい態度に清司は苦笑する。

俺がこの村に止まったことをワラズマはまだ機嫌が悪いのだろうか?。


「誰と話してんねん!。こっちの話をちゃんと聞き!。」


更に村の娘は物凄い剣幕で清司を詰め寄る。


「わ、解った。きょ、協力するから。」


最早協力を仰ぐというよりは脅迫に近い。

やけに気の強い子だな。村娘は大抵こんなものだろうか?。


「か、感謝すんわ。私は神尾手弥恵(かんおてやえ)よ。」

「何か変わった名字だね。」

「それ、気にしとるさかい言わんといて。ばっちゃが言うにはこの村を救った神様なんじゃと。」

「そうなんだ·····」


神尾手という神様が実際いるのだろうか?。土着神か道祖神だろうか?。


「俺は真賀地清司。東北の地まで旅している。」

「その格好で?。」


弥恵は眉を寄せ困惑する。

確かに清司はみすぼらしいスーツを着ているのだからどうみても旅している風貌には見えないだろう。


「ちょっと訳ありでね·····。」


謎めいた雰囲気で格好つけたいわけではないが。事実がの垂れ死に目的の死に行く旅なんて言えるわけがない。


「ふ~ん。まあ、ええわ。手伝ってくれへるんなら何でもええし。」


弥恵という少女は何とか納得してくれたようである。


「で、何を手伝えばいいのかな?。協力する内容をまだ詳しくきいてないんだけど。」


まだ弥恵という少女に何を手伝わねばならないのか詳細を聞いていなかった。

弥恵という少女は何故か罰が悪そうに顔をしかめていた。

唇が口ごもり言い淀む。


「あんた···呪いと祟りの類い信じよるん?。」

「呪いと祟り·····。」


清司は呪いと祟りという言葉に眉を寄せる。前の清司なら呪いや祟りなどは信じなかっただろう。しかしワラズマの旅を経て。奇怪な出来事に遭遇してから呪いと祟りはあるのだと清司は信じることにした。それにワラズマが使う他者の不幸を糧にして幸をもらたす能力も一種の呪いや祟りのようなものだろう。


「ああ··信じるよ···。」

「ほんまに?。」

「ああ····そういうオカルト的な悪霊とか化け物の類いは旅の中で何度か逢ってるからな。呪いや祟りも信じることにしたよ。」

「おまん、どういう旅してねん!?。」


弥恵は呆れとるというか絶句していた。


「と、とりあえず私と一緒に図書館を行ってくれへん。着くまで事情を話すさかい。」

「解った。」


清司は頷き弥恵という少女に図書館まで着いていく。

草が生い茂る農道を進む。


「話の流れで解ると思うんだけど。私が調べているのは呪いや祟りのことや。この村である呪い、或いは祟りが横行しとるん。」

「········。」

『········。』


弥恵はこの村に伝わる呪い、祟りのことを坦々と語り出す。


「この村では結してやってはいけない禁句(タブー)があるんさ。」

「禁句(タブー)?。」


弥恵は真面目にコクりと頷く。


「この村で結して不幸の手紙を書いちゃいけんのよ。送っても駄目。受けとることさえも許さへん。受けとってしもうたら3日以内に三人に同じ文面の不幸の手紙を送らねばいけなくばなる。でないと不幸の手紙の呪いで確実に死ぬんよ。」

「·······。」


不幸の手紙というキーワードに清司はびくつく。何故ならみず知らぬ女子生徒に既に不幸の手紙を受け取ってしまったからである。

故に村で横行する呪いや祟りに清司は既に掛かっている可能性があった。

しかしその時ワラズマは呪い殺されない祟り殺されないおまじないというか呪いをかけられているので多分大丈夫だろうとおもう。もしワラズマの呪いでも駄目なら清司の命は後2日である。


「三人に送ることで一人送ることに1日伸びるけど。完全に呪いを解くには三人に不幸の手紙を送って読まねばあかん。だから呪いの拡散防ぐためにも犠牲者を増やさがためんもこの村では呪い手紙を書くことや送ることを禁句(タブー)とされてるんや。それなのにどっかの馬鹿が不幸の手紙を書きよって送りよった。家のクラスの愛佳も真奈もそのせいで死んでもうた。送った奴、絶対許さへん!。」


ぐぐと弥恵は握り拳をつくり怒りを露にする。

清司は少し身震いがした。


「着いたわ。」


目の前には確かに図書館があった。それほど大きくなく。村ならではこじんまりとした図書館である。


「図書館で何を調べるんだ?。」

「十年前のことや。この呪いの不幸の手紙は十年前から始まったと聞いちょる。なら十年前に何らかことが起こったちゅう私の推測や。」


弥恵はずかずかと図書館へと入っていく。

清司はぽつんと一人取り残されたように立ち尽くし。懐にしまう位牌箱に語りかける。


「ワラズマ。どう思う?。」

『十年前から呪いであるならば矢張十年前に何かしら起こったのだろう。呪いも祟りも何もなくて起こったりはしない。必ず起源点、要因となったものは存在する。』

「やっぱここの土地神様の怒りに触れたのかな······。」


村の崇めている神様が祟りを起こすとよく聞くが。


「いや···この村の土地神はそれほど気性は荒くはない。ただこの呪いや祟りに関しては·····。」


位牌箱にいるワラズマの声が難しげに口ごもる。


「どうしたんだ?。ワラズマ。」

『いや·····よい。まだ推測の域だ。確かめてからでも遅くはあるまい····。』

「?。」

「何してねん。早よ行くば!。」


弥恵は図書館の玄関口で大声で呼ぶ。


「ああ、ごめん。ごめん。」


清司は急かす弥恵を尻目に急いで村の図書館へと入る。


「館内ではお静かに····。」


村の図書館の司書と思われる眼鏡をかけた女性が弥恵は叱っていた。


「す、すまんちゃ。」


弥恵は頭を下げて謝罪する。

司書のきつめの女性は不機嫌に去っていく。


「てっ、まだ玄関口前だったじゃなか!。ケチ臭いわ!。」

「はは····。」


弥恵は不機嫌に頬を膨らせていた。

清司そんな姿を横目に苦笑する。


「で、どうするんだ?。」

「郷土資料部の方にいくと。あそこならこの村の十年前の新聞をとってるはずだ。」


清司は弥恵と一緒に郷土資料エリアにある十年前の新聞を探しだす。不幸の手紙に関することが書かれてないか隅々まで探しだす。


「これだば!?。」


バン!

弥恵はとある事件の記事の書かれた新聞紙を机の前に無造作に叩きつける。



「これは······。」

『··········。』


そこには十年前に起きた行方不明となった女子生徒の話とそのクラスで6人の女子生徒が謎の死を遂げたことが書かれていた。

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