怪ノ村 其乃弐 不幸死紙⑥
「何で‼️。」
教室内で大声を張り上げ非難する。
しんと静まり返った教室でクラスメイト達が皆非難する一人の女子生徒に冷たい目を向ける。
「もう呪いの手紙にうんざりなのよ。このクラスで二人も不幸の手紙でなくなったわ!。もう愛佳も真奈もいない····。」
一人のクラスの生徒が哀しげに泣き崩れる。
愛佳と真奈とは永嶋愛佳と渡辺真奈の事である。彼女は最も二人に親しい友人であった。
「私達はもう不幸の手紙に関わりたくないの。ほっといて!。」
他のクラスの面々が口々に吐く。
「だから言っとるじゃなかっ!、不幸の手紙の呪い真実を暴こうって!。これ以上呪い手紙の犠牲者を増やさんためんも。うちらが何とかしなきゃいけんのよ!。この村だけ不幸の手紙で死者がでるんのはおかしかっーー!」
「弥恵さん。これ以上我が儘言って駄目よ。」
静まり返るほ教室で猫なで声のような甘えた声が吐かれる。
そんな声に不快に弥恵の眉がつり上がる。
「浜根岸(はまねぎ)~!。」
弥恵の唇が憎々しげに歪む。
浜根岸という生徒はクラスでは問題児であった。猫被ったような表情と歯を浮くような口ぶりが弥恵は彼女が気に入らなかった。それ以上に彼女には悪い噂が絶えない
「クラスがこの決断をしているのだから貴女がその判断を否定するのはどうかと思うわ。団体行動はちゃんと守らないとね。」
浜根岸は甘えるような冷ややかな態度をとる。
「おまんがそれを言うかっ!!。」
弥恵は唸るように吐き捨てる。
「それだけん。私達は弥恵に手を貸せんと。申し訳ないども。」
弥恵は親しい親友達さえも断られる。
「まあ、貴女の手紙の柱となったお婆様には同情しますけどねえ。」
浜根岸は同情心など欠片もない素振りをみせながらも慰めの態度をとる。
「浜根岸!、それ以上ほざくとしばくぞ!!。」
鋭い目で浜根岸を弥恵は睨み付ける。
「お~怖。貴女の態度に恨みを買って不幸の手紙を送られないように気を付けた方がいいですよ。まだ不幸の手紙を送った犯人が解らないのですから。」
「そげんこと。心配せんでも解っとるわ!。寧ろそっちの方に不幸の手紙。送られんこと気いつけば。おまんの方が陰で恨み買いそうじゃしなあ。」
「······っ!?。」
弥恵の売り言葉買い言葉に浜根岸はいつものようにスルーすると思っていたが。何故だか彼女は少しびくつくように同様を見せる。
「·····?。」
そんな態度に弥恵は首を傾げ困惑する。
ガラガラ
突然教室の扉が開かれる。
キンコンカンコーン
それと同時に学校のチャイムが流れる。
入ってきたのは担任の玲子先生ではなく。他の担任である間久沼先生であった。
「おい、いつまでも教室内で騒いでいる。もう授業だぞ。」
クラスに揉め事があったことなど間久沼には気に止めていなかった。
「間久沼先生。玲子先生は?。」
クラスの一人が手を上げ間久沼に質問する。
「ああ、玲子先生は今日は気分が優れないそうだ。だから今日は私が代わりにこのクラスの授業を受け持つことになった。」
バンと教壇に間久沼は手をかける
何だが間久沼の態度がやけに上機嫌である。
「それより早く席に戻れ!。神尾手(かんおて)お前も早く席につけ。」
神尾手と呼ばれた弥恵は唇をきゅっと強く縮ませる。自分の席に戻ろうとしたがふと弥恵は思い止まったように振り返り間久沼先生に声をかける。
「間久沼先生。」
「ん?何だ神尾手。早く席につけ。」
「先生は不幸の手紙の真実を知りたくばありませんか?。何故この村では不幸の手紙の送られば死によるんか。知りたくばありませんか?。」
「またその話か。いい加減にしろ!神尾手。この世に呪いや祟りと言ったものは存在しない。永嶋も渡辺も精神が参ってなくなったのだ。言わば集団ヒステリーのようなものだ。お前達も永嶋や渡辺に感化されないように。この世に呪いや祟りといったものは存在しないのだ。」
間久沼の解答に弥恵は予想通りの返しに弥恵の口からため息がもれる。
弥恵は力を抜けたように自分の席に着いた。
しかしぐっと歯をくいしばる。
ここで終わらせばなるものか。絶対呪いの不幸の手紙の真実を突き止める!。
弥恵は膝の上の指を強く握りしめ。
弥恵は更に決意を固める。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『それよりも清司。これからどうするつもりだ?。この村に止まるとしても宿の心配もあるぞ。』
「あっ!?。そうだった!。」
清司はこの村では泊まるところがないこと今思いだした。
『はあ~呆れたな。後先の全く考えてない。』
「別にいいだろう?。どうせ行き当たりばったりな旅なんだから。」
そもそも元々は野垂れ死に目的の死に行く旅である。行き当たりばったりなのは当たり前である。
『取り敢えず宿を確保しなくてはな。最悪ここの神社の社を宿変わりにするのも手だ。』
「んな罰当たりな。」
俺はワラズマの発言に呆れてしまう。
『私がここの土地神に頼んで許可もらうさ。思い出したのだが。どうやら私はこの村に来たことあるようなのだ。』
「え?そうなのか?。」
ワラズマがこの村に来たことがあるとは初耳である。てっきりワラズマと初めて出逢ったあの古びた旅館の居間でずっと住み着いていたと思っていた。
『この村が昔飢饉で苦しんでるときな。あまり話したくはない。私が昔立ち寄った村村には助けもしたが。それと同時に不幸も与えた。その後私が立ち寄った村村が本当に幸せになれたかなど。誰にも解らんよ。』
ワラズマの位牌箱から流れる声が何処か寂しげであった。
「取り敢えず。この村を散策しようか。もしかしたら泊まれる場所が見つかるかもしれない。」
宿の期待は出来ないかもしれないけど。夢の中で見た泥と傷にまみれたセーラーを着た娘のことも気にかかる。
「ばっちゃの手紙を読むまで時間がなか!。根性無しのクラスの連中には頼りも出来ん。どうすっか。」
放課後、弥恵は直ぐに教科書カバンにしまい。学校を飛び出す。
弥恵の祖母が手紙を読むのは今日である。その期限である3日間の間に呪い不幸の手紙の真実を突き止めなくてはならない。しかしクラス全員に協力をあおいだが。誰も手を差しのべてはくれない。でもここで諦める訳にはいかない。
弥恵は人手が欲しかった。
この村の呪い手紙の真実を突き止めるにも日数が足りない。だからクラス全員協力をあおいで人手の数で呪い手紙の真実を突き止めようとしたのだ。でも弥恵のあては外れてしまった。誰も呪い手紙に臆して協力してくれない。
「諦めてたまるか!。何か他に手は···。」
ふと弥恵に目前見知らぬ中年の男性が目にはいる。見た目はみすぼらしいスーツを着ていて。いかにも田舎の村に場違いな人間である。
「よそもん?。」
弥恵は直ぐに直感を感じた。それと同時に閃いた。あのよそもんに協力してもらおうと。弥恵は後先考えられなくなっていた。
村のよそもんが自分の事情を聞き入れる筈はない。それでも今の状況を打開するにはとにかく人手が欲しかった。
「あの、おまあ!。」
「おまあ?。」
聞いたことない方言に中年の男性は振りかえる。みすぼらしいスーツを着た中年の男は不思議そうに此方を見て首に傾げる。
「うちに協力して!。」
弥恵の言葉に中年の男は再び首を傾げる。
「そしたら家さ。泊めさせたる!。」
何故そんな事言ったのか解らない。もしかしたら目の前のみすぼらしいスーツを着た男は弥恵は浮浪者と勘違いしたのかもしれない。
『········。』
目の前のみすぼらしスーツを着た中年の男は眉を寄せ困ったように頭をポリポリとかきはじめた。
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