ボッチは蜘蛛の巣を張る
「おい藤村お前も何か良いアイデアを考えてくれよ」
「嫌よ。部員集めはあなたに一任すると言ったわよね?」
藤村に『ボランティア部の新入部員を1人以上集めて』の課題を脅しの元で丸投げされた日の放課後、藤村が読書を続けてるなか俺は頭を悩ませていた。
「そうは言ってもここは2人で協力した方が早いと思うんだよ」
「あなたね……ただ『ボランティア部に興味ない?』って誘うだけのことよ?」
読書をしつつもちゃんと的確な返事をしてくれるんだな藤村さん。
「簡単に言ってくれるな、今までの人生で誰かを遊びに誘った覚えもないやつに直接的な勧誘が務まるわけないだろ」
「はあ……ほんっと使えないわね。なら今すぐその殻を破りなさい」
人には向き不向きがあるものなんですよ藤村さん。
「スイッチを切り替えるかのように陽キャに変身出来たら苦労しねえよ」
だから俺は直接人を誘う以外の手で部員を集めて見せたいのだ。
だがそれには手がかりが……ってそういえば大事なことを聞かないと。
「そういえば藤村、今までの依頼ってどうして来たんだ?」
今までにこの部が一体どのような活動をして来たのかが気になるぞ。
「私が片岡先生にここに連れて来られたのは1年生の秋よ。でも私がボランティア部の所属と部長に決められたのは冬辺りからだから、荒牧くんが初めての依頼の対象でもあり部員ね。それまではずっとこうして読書をしてたものよ」
そうだったのか……何というかあの片岡先生らしい気まぐれな成り行きだな。
でもこの藤村がなぜ彼女の言いなりになってるのかは気になるところだが、不用意な詮索はプライベートに触れる気がするし今は止しておくか。
「そうだったのか。……それじゃあこのボランティア部を知ってる人自体が相当限られてるんじゃないか?」
今まで見に行ったことが無いから見覚えも無いが、部活紹介の掲示板にすらも部としての痕跡が残されてないと、先ずはそこから改善していかないとな。
「ええそうね。だから先ずはポスターとかチラシから作るのがアリかもね」
「完全に丸投げじゃねえかよ……はぁ」
そもそも掲示板が保健室の前にあるからあまり人が見ないだろうことも考えられるが、全く無いよりはマシだろう。
それにどうせなら人目を惹きつけるものを貼り付けるのが吉だろう。
「……パッと見やすくて……拡散されやすい……ぁっ」
閃いたぞ!上の条件にピッタリとハマったアイデアがなッ!!
まあこれはかなり特殊な思いつきだから藤村の協力が必要不可欠だが。
俺は携帯の藤村とのチャットボックスを開くと彼女にメッセージを飛ばす。
『ボランティア部って何をする部活なんだ?』
それを見た藤村は予想通りだが訝しむようにして俺を問い詰めてきた。
「ん?……ねえ荒牧くん、これは一体何の真似なのかしら?」
だがここは後日に驚かせたいところだから煽りで返しておこうか。
「部員集めは俺に一任してくれるんじゃなかったっけ?」
「はっ……?それはそうだけれど……意味がわからないのだけれど?」
「まあそのうち説明してやるから、とりあえずチャット内で俺の質問に正直に答えていってくれよ。手間が省けるからなるべく詳細に頼む」
「そこまで言うならとりあえず分かったわ」
渋々ながらも読書を中断してチャット内のやり取りを続けてくれた。
『人の悩みや相談ごとを解決するのに手助けをするのが主な活動内容よ
先ずは顧問に話を通す形で依頼を申請してくれたらやりやすいわ
もちろん個別に直接部室へ出向いてきても構わないわよ』
『なるほどな
それじゃあ部活の主な活動日時や時間帯のスケジュールは?』
『日時は祝日以外の平日の週5で、時間帯は午後18:00までね』
『活動場所は?』
『第三校舎の二階の一番奥にる教室よ』
『現在のボランティア部メンバーの詳細は?』
『顧問の先生は片岡紀子
部長は藤村彩海
副部長は荒牧ラファエロ』
『オッケー、把握した』
オイちょっと待ていつの間に俺副部長なんて役職を与えられてたんだよ。
けどまあ良いか。それにこれで必要な情報が大体は出揃ったようだな。
『久々か生まれて初めての女の子とのメッセージで喜んでるところ邪魔するけれど、さっさとポスターの作成に取り掛かった方が時間の節約になるわよ?』
一体何を思ったのか知らないが、わざわざメッセージで煽ってきたぞこいつ。
こんな煽り文句は口に出すだけで済ませるのが1番賢いと思うんだがな。
お前がそれでも構わないなら俺は承知しないぞ。恥かくのは自分自身だからな。
『そうだな。藤村の方からは何か希望があるか?』
『パパッと見やすいので十分でしょう?
いったい何をそんなに難しく考えてるのかしら
虫並みに知能が退化したのなら流石ボウフラと言ったところね』
真横を見てみたらいつものサディスティックな笑みを浮かべてたようだ。
本当懲りないよなこいつは。だが今回ばかりは最後に笑うのは俺の方だぞ。
むしろ深く考えもせずに安易に罠に飛び込んできたのが馬鹿とすら言えよう!
クククっと内心でほくそ笑みながらも、チャットを閉じて違うアプリに移る。
「……さっきからあなたは1人で何をしてるのかしら?」
俺が張り紙の作成に取り掛からずに携帯を弄り続けてたのを疑問に思ったか。
「何ってツイッティーだよ。まだ公式のアカウント作ってなかっただろ?」
ツイッティーとは文章における情報拡散が醍醐味のSNSだ。利用者数も全SNSの中でも最多と言われていて、裏では出会い系アプリとも言われているSNSだ。
ちなみに俺もラノベの読書感想を投稿したり他人の読書感想を読んで読みたい作品を絞ったりと、オタ活に積極的に利用してたりもするのだ。
FFも共に3000越えと割と業界に馴染んでたりもするものだ。おかげで好きな作者さんの活動報告を見たり書籍との出会いをもたらしてくれる神アプリだ。
「ええ、そうね。ぶっちゃけ今まで考えすらもしなかったもの。あなたはそこで宣伝のような活動をするつもりなのかしら?」
「ああその通りだよ。そのためのボランティア部の公式アカウント作成だ」
本格的に活動していくなら何とか学校中の奴らにも広げるのが一番なのだが。
「そう……」
「ちなみに部長である藤村が運用するのが一番だと思うが、運用の仕方がわかるか?」
「私はそう言うのがサッパリね。面倒ごとは全て副部長兼、雑用係のあなたに任せたわ」
「勝手に俺の役職を増やすな俺はまだ納得してねえぞ!」
油断する隙も無いなこの野郎。最近の俺の扱い方が荒くなって来たぞ。
とはいえ公式アカウントの設定とやるべきことを進めていこう。
タイトルに『花園ボランティア部』にして。
プロフも『花園高校/ボランティア部/#ボランティア』で。
初回のツイーティングも予め作成しておこうか。
『花園高校のボランティア部です。
主な活動内容は人の悩みや相談ごとを解決す
るのに手助けをすることです。先ずは顧問に
話を通す形で依頼を申請するか、直接部室に
出向いて来ても構いません。ただいま依頼人
も部員も募集中なので、いつでもお越し下さ
い。いつでもお待ちしております。
#拡散希望』
よし、投稿からのプロフへ固定っと。
それでこれから学校の生徒の垢を適当にバーっとフォローしていったら良いと思うんだが、肝心のアイコンと背景がまだ設定できてないな。
だがここはやっぱり高嶺の花が適材適所だろう。
「なあ藤村、公式アカウントのアイコンにお前の顔を使いたいんだが、」
「──却下」
ですよね……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます