第240話

「王妃様いかがでしょうか?」


「では頂こうかしら」


「かしこまりました」


さて、どのお酒にしようかな。

男性陣みたいに選んでもらおうとも思ったんだけど、こっちの果物分からないよね。

……まずは無難にカシスとオレンジにしようか。


グラスに氷を入れグラスの4分の1ほどカシスリキュールを注ぐ。


王妃様達は面白そうにこちらを眺めている。

……そう言えばベルゲマン公爵もサフィリア様もリキュールは初めてか。


今度は4分の2ほどオレンジジュースを注ぎ混ぜ棒で混ぜた。


濃い紫と鮮やかなオレンジが混じりあう。


「お待たせいたしました。 そのままお飲みください」


「……その色は大丈夫なのか?」


陛下が心配そうに見つめる。


「私が毒見いたしますか?」


オリヴィア様が声を掛ける。


毒見のこと忘れてた。


「申し訳ございません、私が一度毒見いたします」


慌ててグラスを受け取ろうとするが王妃様はにこりと微笑まれた。


「構いません、では頂きます」


そう言い一口カシスオレンジを飲んだ。


そして口元を抑え驚いたような表情を浮かべる王妃様。


「レオノーラ?」


その様子を見て焦りを見せる陛下。

私もちょっと焦る。

口に合わなかったか?


「……美味しいわ。 これお酒なの?」


子供のように瞳を輝かせてこちらに尋ねてくる王妃様。


「身体は平気か?」


「平気です。 とても……とても美味しいわ」


「……私にも頂けるかしら?」


サフィリア様が声を発した。


「か、かしこまりました。 同じ物が良いですか? それともシャンパンのように炭酸が入った方が宜しいですか?」


「まずは同じ物を頂こうかしら」


「かしこまりました」


同じものをサフィリア様に作って出す。


「これは……お酒……なのかしら」


少量口に含み喉を潤すと、サフィリア様はそう感想を述べた。

オリヴィア様はその様子を微笑ましげに眺めている。


その後はあちらの世界で果物で作ったビールを出した。

こちらも女性陣には好評で、それで興味を惹かれた男性陣に出すと甘すぎると言われてしまった。




「……さて、楽しいお酒をありがとう」


夕食を終えると片づけをスタッフに任せて終わらせてもらい、私たちはリビングに場所を移動した。


軽くつまめるお酒のあてを数種類用意し、二次会へと移行した。

先ほどとは違いテーブルの周りを囲うように置かれたソファーに腰を下ろす。

まず真ん中に陛下、右隣にベルゲマン公爵。

陛下の左隣に王妃様、侯爵の隣にサフィリア様。

側面のソファーにはアルフォート様、その対面にはオリヴィア様。


陛下と公爵の対面に私と長谷川さんが座らせられた。


「そろそろ本題だな」


本題とは?


陛下とベルゲマン公爵からそう話を切り出された。

まって、そう言うやつ聞いてないよ。


「まず……レシピ産の魔道具の件だ」


レシピ産? それ私管轄外ですけど……。


「作製した物についての一覧はアルフォートから貰っている」


いつの間に!!

……転移門を教えたなら当然……か?


「率直に言おう。 何か作製したらアルフォートを通じて連絡をしてくれ、心臓に悪い」


「この小型の通信の魔道具然り、転移門しかり、この2つだけでも全世界に激震が走る」


「聞かされたときのこちらの心境を考えよ。 心臓が止まったかと思ったぞ」


「報告連絡相談いいですね」


陛下と公爵から怒涛の説教が浴びせられた。

ちらりとアルフォート様を見ると穏やかな表情をしてやがる。


肩の荷が下りた。 って感じだ。


「なにかを作製してくれとかはあるんですか?」


「……それを簡単に言えることがおかしいと思ってくれ。 普通は作れないんだぞ」


ガックリと肩を落としながらそう言う陛下。


「桜さん、安易に魔道具を市場に流さないでください。 これらが市場に出たら国が混乱してしまう」


「分かりました。 持ってる事も秘密にしておきます」


「そうしてくれ、くれぐれも。 くれぐれも頼んだぞ」


二人から念を押され頷くしかなかった。

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