第235話
ブリストウ領のアルフォートの館
「陛下、突然来られても困ります」
「転移門の確認をしようと思ってな。 なるほど……こんなものが出来ていたとは……」
苦言を申し述べようにも痛いところを突かれて何も言えなくなった。
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転移門、通信の魔道具、自販機。
ドルイット侯爵とフォルラーニ侯爵が領地へ帰ったあとすぐさま陛下へ連絡を入れた。
至急登城せよと厳命され、グリフォンを使用し王都へ着いたのが深夜になっていた。
それでも寝ずに起きて待っていた陛下に魔道具事情の事のあらましを説明する羽目になった。
話を黙って聞いていた陛下が口を開き、実物を見せよと申されたので、マジックボックスを使用し持ち込んだ転移門の片割れと通信の魔道具、自販機を見せた。
転移門をくぐり、ブリストウ領の応接室へ共に赴く。
にわかには信じられんと言った様子の陛下だったが、倉敷の名前を言えば天を仰いで掌でまぶだを覆った。
「……奴か」
「倉敷だけではありません、魔石を用意できる菅井、レシピ産の魔道具を改良できるドワーフのマッヘン、ドラゴンですら狩ってこれる相良、それらの魔力を回復できる橋沼桜がそろった結果がこれです」
「……また橋沼桜か!! 次から次へと……これは橋沼桜が居る場所へも通じているのか?」
「別の転移門が設置されております」
「そうか……そうか……」
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そして今に至る。
「私も利用しようと思う」
「陛下?!」
「これを使用すれば秘密裏に橋沼桜に会えるのであろう?」
「……そうですね」
「ここの所誰かのせいで疲れがたまってるのでな、王妃と共に楽しめる宿に案内してもらおうか。 今度はそうかしこまらなくてもよい」
「……分かりました。 伝えておきます。 それではいつにしましょう?」
「今日だ」
「今日?!」
「夕刻に王妃を連れてここにまた来る。 頼んだぞ」
転移門を使用し陛下が王城へ帰られた。
言われたことを考えしばし呆然とするが、時間が無いと理解し、長谷川を急いで呼び寄せた。
「……という訳だ」
「なんかごめんなさい」
改めて説明されると、アルフォート様巻き込んでごめんねって感想が沸いてしまった。
にしても……
「どんな宿が良いのか」
「王妃様も楽しめる宿だよね」
「従者とかは付くんですか?」
「付かない。 というか連れてこれない。 こんなの話すわけにはいかないからな」
「となると一棟貸しの方が良いのかな?」
「まずは慣れるためにその方が良いかもしれないな。 こんなのがちょくちょくありそうだ」
「私も行った方が良さそうかな? 長谷川さん私も行っても良いですか?」
「いや、オリヴィア様も行かれるからな。 王妃様の案内はオリヴィア様にやってもらう手はずになっている」
「そうですか……桜頑張ってね」
「うぅ……頑張る。 でも一緒に宿選んで……選んでくださいませ灯里様ぁぁぁ」
「分かったよ、じゃあ後で一人でも楽しめそうな宿教えてね」
「分かった!! 交換条件ね」
こちらではインターネットが使用できないので日帰り温泉を適当に選択し、3人であちらの世界に行った。
そこで温泉そっちのけで灯里と長谷川さんと一緒に陛下達を案内する宿を選ぶことにした。
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