第225話
案内……しようとした。
「あれ? 桜さんそちらの方は……?」
途中で魔獣狩りから帰って来た相良さんに遭遇したからだ。
「今こちらにお越しいただいたフォルラーニ侯爵です。 今倉敷さんの小屋にドルイット侯爵がいらしてるのでそちらに案内するところですよ」
そう相良さんに告げると、私の背後からゾワッとするような感覚が沸き上がった。
理解できない感覚に慌てて振り向くと、先ほどまで朗らかな表情をしていたフォルラーニ侯爵が恍惚とした表情を浮かべて相良さんを見ていたのだった。
一瞬理解できずに立ち尽くすと腕を誰かに引っ張られた。
何事?! と思って引っ張った人物を見るとアルフォート様だ。
へ?!
何々何々?!
そう思ってると私が元々立っていた場所に火柱が上がった。
「ほえあ?!」
素っ頓狂な声を上げたのは私です。
そちらを見ると相良さんとフォルラーニ侯爵が組み合っていた。
「素敵ね」
「なんですか? いきなり」
相良さんが距離を取ろうと防御魔法を発動する。 それをフォルラーニ侯爵が素手で叩き割っていく。
素手で割れるのそれ?!
すると今度は攻撃を防ぐのではなく、動きを阻害するような形で相良さんが防御魔法を繰り出した。
丁度関節の回りだ。
動きが阻害され力が籠めにくいポイント。
よくそんなピンポイントで複数魔法が出せるなと、その精密さに感心する。
これでフォルラーニ侯爵も身動きが取れないは……?!
それを把握したフォルラーニ侯爵は数枚破壊すると素早い動きで回避し相良さんと距離を詰める。
距離を詰められた相良さんは風魔法を使い土を巻き上げ視界を奪う。
なんだかよく分からないが相良さんもフォルラーニ侯爵も互いを敵視しているというよりも、楽しんでいるように見られる。
次から次へと技の応酬が目の前で繰り広げられ呆然と見守った。
「結局こうなったか……」
そんな私の耳にはアルフォート様のそんな声が届いたのだった。
その戦いの音に倉敷さん達が小屋から出てきた。
「敵襲……じゃないな。 なんだこりゃ」
「戦っておるのう」
「あの人が噂の極大魔法の使い手ですか?」
「……そうだ」
「隠し通せませんでしたね」
「……はぁ」
アイテムボックスからソファーとテーブルを取り出し簡易の観客席をセットする。
「お茶とお菓子はいかがですかー」
お盆にペットボトルの飲み物とスナック菓子を乗せソファーに腰を下ろすみんなの後ろから声を掛けた。
「俺コーラ」
「僕はお茶」
すぐさま倉敷さんと菅井さんから返答があった。
「ん? これはあちらの飲み物と食べ物ですか? 頂きます」
ドルイット侯爵にはコーラを、アルフォート様にはお茶をマッヘンさんにはお茶と見せかけて青汁を渡した。
噴くかなとワクワクしながらマッヘンさんをちらちら見る。
私の予想とは裏腹にマッヘンさんは美味しそうに喉を鳴らしながら飲み干した。
「……桜魔法で防御張っててくれ」
倉敷さんにそう言われ果物を食べながら私は光魔法で防御を張った。
次の瞬間、フォルラーニ侯爵の手が光りを放ち、同時に相良さんからも謎の物体が放たれた。
それらが触れ合うと周りは暴風に包まれた。
「うひゃぁ!!」
砂埃が舞い上がり光盾(ライトシールド)で覆われた外の景色が見えなくなった。
「フォルラーニ卿の技が出ましたね」
「こうなると思った」
アルフォート様とドルイット侯爵はのんきにそんな会話を繰り広げている。
しばらくすると砂埃が晴れ視界が開けた。
二人が立っていたところには穴が開いており、その中心に二人は立っていた。
「……っあっはっはっはっは!!!!!!」
「ふふ……!!」
フォルラーニ侯爵が大口を開けて笑い、相良さんも控えめに笑っていた。
「あー楽しかった!! やるわねあなた」
「こちらこそとても楽しませていただきました。 ありがとうございます」
二人は握手をし互いを称えあっていた。
こうして侯爵二人の来訪は終えたのであった。
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