第189話
……うん、ミキサーにかけるまではいいよ、順調だよ。
ひと口サイズにカットしてもらったし、入れるだけだし。
……繊維邪魔!!
ミキサーにかけたものを漉し器をセットした漏斗に注ぐ、注いだらすぐに繊維が目詰まりした。
取り除くのに手がベタベタになるしいい方法ないの?!
腕を組み考えていったん検索すべく日本に行くことにした。
カタログギフトの日帰り温泉を選択し使用する。
慣れた手つきで受付を済ませ、ロビーに移動しタブレットを使い検索。
その結果、容量大きめのジューサーを購入することにした。
これなら繊維を取り除けるね。
目的の物を購入したのですぐさま元の小屋に戻る。
テーブルの上にジューサーを取り寄せる。
……結構でかい。
私の胸元から腰位まで高さがある。
洗浄の魔道具を使用し綺麗にしてセットし先ほどミキサーで砕いた果物を入れる。
液状になっていたのでさらに追加で実を入れた。
電源を入れ動作確認をする。
……ちゃんと動くね。
ならばと同じものを5台ほど取り寄せた。
それぞれ違う果物を入れ電源を押す。
最初に電源を入れたものは、もともとミキサーで砕いていたこともあり受け皿に果汁が溜まり始めていた。
注ぎ口に付属のジュースカップを置き蓋を開ける。
……おお!! ちゃんと繊維取れてる。
さらさらとした果汁が流れ出てきた。
まだまだ果物種類あるから……
電源も足りなくなったので発電機も取り寄せ、ジューサーもさらに5台追加した。
わわ……意外と忙しい。
計10台のジューサーに果物を補充しつつ、果汁を取り出しドリンクサーバーに移す作業は、量が増えて行過程が目で確認できる分忙しいけど楽しかった。
絞ったらフルーツビール造りだね。
そう思いながら今日一日は果汁絞りに精を出した。
王城
王の私室にて
「……いかがでしたか」
「なんともまぁ……筆舌しがたい世界だった」
この部屋に居るのは私と父上、現公爵のみ。
人払いし、念のために盗聴防止の魔道具も起動させた。
元々半信半疑ではあったが、この父上の様子を見る限り確定らしいな……。
かの地の領主であるアルフォートから報告を受け公爵に命じ、視察に行ってもらった。
他の者では事がことだけに方針を決めるまでうかつに漏らす事も出来ない、
そしてあわよくば父上の治世時代に現れてたらどう処理するか聞きたくもあった。
「残すべきか排除するべきか父上のお考えをお聞かせ願えますか」
「私だったらか……」
父上は父上の父、私から見て祖父の、激動の時代の後始末を一代で終え、この平穏な国に導いた王として尊敬している。
祖父の時代は、歴史に記録された渡り人との記憶が薄れかけた時代で、末期には貴族と渡り人の衝突が激化した。
貴族と渡り人の溝があき、世の中もそのあおりを受け疲弊した。
祖父も懸命に治めようとしたが、もともとの気質が弱いゆえ、その心労がたたり志半ばで崩御されてしまった。
それを立て直したのが父である現公爵だ。
そんな父も50を過ぎて退位し、まだまだ若輩の私が引き継いだ。
父の苦労を水の泡にするわけにはいかない、取り戻した平穏を磐石なものにし次代に受け継ぐ。
それが私の役目だ。
「私の時代だったら……不穏分子として処分してたな、あの時代には過分な者だ」
眉間に皺を寄せ、何かを考えるそぶりを見せながらそう言う。
「処分ですか」
てっきり利用するのかと思いきや、出てきた言葉に驚きつつも納得する。
……あの時代ならしょうがないのか、魔力回復なんて……1人いたらそれだけで勢力がひっくり返ってしまうからな。
いくら惜しい魔法とて無理なものは無理か。
「……私の時代だったらだ、今はお前の時代だ。 私の時とはまた人も流れも時間も違う。 私では選べなかった選択肢も選べるだろう」
諭すように紡がれた言葉、父の時代では過ぎたるもの、残した場合の使い道。
「……助言ありがとうございます」
……その言葉に活用方法が思いつき、父に礼を言った。
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