第123話


「処分しないでよかったんですか?」


「ああ」


渡り人が帰った後に護衛の長谷川からそんな言葉を言われた。


今この部屋には二人しかいない。


従者のイネスは席を外している。


盗聴防止の魔道具を起動させてあるから盗聴の心配もない。


「そう言うお前はあの男に勝てるのか? あの魔獣の群れを葬ったやつだぞ?」


「無理だな。 というかなんで呼んだんだ?」


「純粋に感謝を伝える為だよ。 一番の功労者を労わないで他の者にも褒美を出せないだろ」


「まあ……そうだな」


「……そしたらとんだ大型魔法を放りこまれたな」


「あの時の顔すごかったな。 俺も笑いそうになった」


「まったく……お酒の話なんて飛んでったよ。 スタンピートだけならその場で処分で簡単だったが……まさかあっちの世界に行けるとは……。 さてどうするかな」


「人は付けといたぞ」


「分かった」


今回あっただけでは人となりがわからない、しばらくは泳がせて観察だ。


渡り人から貰ったカタログギフトに目線を落とす。


釣られて長谷川も自分の手元にあるカタログギフトを見た。


「これ……本当に行けるのか?」


半信半疑だ。 私も疑いつつももしかしてと期待が高まる。


こんなに気分が高揚したのは下の娘が誕生して以来か?


「疑うなら返せ」


「いやだ」


そう言ったらそそくさと自分のアイテムボックスに仕舞いやがった。


お前こそ浮き足立ってるぞ。


「長谷川、街では使うなよ。 それと……お前の魔力の残量はどれくらいだ……?」


「100万切ってる……街では使わない」


「ならばいい。 ……全く、もうちょっと長い付き合いになりそうだな」


「回復できればな」


そう言って互いに軽く笑い合う。


まずは一度使ってみて効果を確かめねばなるまい。 それで効果があったら……王へ報告。 効果なしなら危険人物として処分。 化け物の目を掻い潜ってか。 


「はあ……面倒なことになりそうだ」


「そうだな……と言いつつ顔がにやけてるぞ」


「お前もな」

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