第96話 スタンピード3



西側城壁門前



冒険者が受け持つのは西門と南門。


東門と北門は領主の兵が受け持つ。


互いに全ての門を守ることが出来ない為割り振りが決まった。


「魔術師は支援物資の魔力ポーションは持ったか!!」


「おうっ!!」


「弓部隊も位置に着いたか!!」


「「「おう!!」」」


「最低数名で固まって動け!! バラバラに向かっては勝てん!! 各自最低でも生きて戻れ!! 怪我ならなんでも回復出来る!! 分かったな!!」


「「「「おう!!」」」」


「いいか無理はするな。 Aランク以上の者は率先して高ランクの魔獣を狙え。 低ランクの物は死にたく無かったらとにかく纏まって動け」


高ランクの魔獣が相手では低ランクの者はすぐさま死んでしまう。


皆に最善を尽くしてもらえるよう指示を飛ばす。


まずは魔術師の合同魔法で魔獣を壁から遠ざける。


城壁上の弓部隊が狙撃し動きを鈍らせその隙に冒険者達が討伐する。


魔力ポーションで回復して魔術師がまた魔法を放つ。


5つの班に分かれそれを繰り返す。


この数では焼け石に水かもしれんが地道に倒していくしかない。


一気に片付くなら一斉投入もありだが終わりの見えないこの戦いでは休息も必要になる。


本当に少しづつ被害を抑えつつ減らすしかない。





「涼!!」


「はい」


「すまないが皆んなの支援頼んだ」


「分かりました」


涼は自体も冒険者として数年活躍して来た。 現場感もある。


そして何より無尽蔵のアイテムボックスと魔力と鑑定がある。


領主様や各ギルドからの支援物資を配布し他の者が戦いやすい様にサポートを頼んだ。


灯里は近くで重傷者の回復の為待機して貰ってる。


と言うか支援ポーション助かった……。


灯里や神官の負担も減るし戦線復帰も早まる。


溜め込んだ物資を吐き出させるくらい危機感持ってくれて良かった。


領主様も軍を動員してくれる。


近隣の冒険者ギルドへの連絡も済んだ。


応援が来るまで持ち堪えねば……!




商業ギルド


「ただいま……」


「お帰りなさい」


朝日が昇ると同時に森から帰ってきた。


「お茶をどうぞ」


「ありがとうオーフェン」


着ていた衣服は洗浄の魔道具で綺麗にしたが所々破れた箇所からはうっすら血が滲んでいた。


アイテムボックスからポーションを取り出し蓋を開けグイッと煽りオーフェンが入れてくれたお茶を飲んで人心地ついた。


「どうでした?」


「もう! なんてフラグ立てたのよ!」


「フラグ?」


「こっちの話よ。 ……高ランクの魔獣は出来る限り間引いて来たわ……だいぶ戦いやすくなったはずよ……ただ」


「ただ?」


「一晩で行って来れる範囲しか出来なかったわ。 奥は全然……まだまだ終わりがわからない……全然減らないんだもの……こうなるんだったら大規模魔法練習しておくんだったわ」


オーフェンがソファーに移り膝を叩いた。


お茶を飲み終えカップをテーブルに置くとオーフェンの隣へと移動する。


静かに話を聞いてくれるオーフェンの隣は心地良い。


「昼間はガドラス達が減らしてくれるでしょう。 ポーションも奮発しておきましたし……安心して春子は休んで下さい」


「ありがとう……また夜になったら行ってくる……わね」


肩にもたれウトウトしながら返事をする。


「……お疲れ様です」


頭に乗った手のひらから伝わる熱は心地良かった。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る