第九六話 星幽迷宮(アストラルメイズ) 〇五
「……え? 私リヒターさんと戦ってませんけど……一緒にお茶飲んだだけだし……」
「ぐ、ゴホン……わが
私のツッコミにリヒターが咳払いをしてから再び敵へと向き直る……リヒターの中で私との出会いはどういう記憶になっているのか少しだけ疑問を感じつつも、とはいえ先程までの能力で敵対していたらと少しだけゾッとした気分になる……はずなんだか気が抜けちゃうなさっきの会話。
リヒターと私の掛け合いを見てエツィオさんが少しだけ緊張感なくクスクス笑い始める。
「全く……君らは……」
「
リヒターはカタカタと骨を鳴らしながら腕を
衝撃波を軽いステップで躱すと再び連続で矢を打ち出すものの、リヒターを守るように
「ふむ……
「私は本来神に仕えるものだ……だが、生前の役割が他の
「ん? するってーと、
「できるぞ、本職ほどでは無いがな……まあ四肢欠損は難しいから新居、そういうのはやめてくれ」
私の疑問にも丁寧に答えるリヒター……まあ、できるっちゃできるってことか。前世の仲間だったウーゴも
「うん、まあ怪我しないようにします……」
「では……
リヒターの言葉と同時に、真っ白な美しい毛並みを持つ狼のような生物が召喚される……
「……征け、食いついて動きを止めよ」
リヒターの命令と共に、
前世でもこの生物は死ぬほど厄介で……攻撃を凍り付かせるという特殊能力を持っていたはずだ……ノエルもこの生物と出会うことを嫌って冬は娼館に入り浸ってシルヴィさんにぶん殴られていたはずだ。
リヒターはほぼ動いておらず攻撃を素早い召喚生物で、防御を精霊でというこのスタイルは彼が長年培ってきたものなのだろう……観戦していてもどうやってこの防御を崩すのか自分でも悩ましく感じる。
「グァッ! く、くそっ……」
あれ厄介なんだよなあ……野生の
「では続きだ。次で仕留める……」
「……まだ呼び出せるのか?」
リヒターがカタカタと顎を鳴らすと、さらに何かを召喚するために恐ろしいくらいの魔力を展開し始める……まだ呼び出せるのか? 規格外の行動に私もエツィオさんも驚きを隠せなくなる。
前世の仲間だったウーゴも同時に二体以上の
「
リヒターが召喚したのは黄金の槍を携えた……
詠うような美しい声を響かせながら大きく槍を振りかぶると
黄金の槍は寸分違わず
「ぎゃあアアアアアアッ! 馬鹿なっ……」
「私を死体風情と言った時からお前の敗北は決まっていた……
リヒターがビシッ! と指を差して次第に崩れていく
そして、どこかで見たようなポーズだったために私は思わず噴き出してしまうが、そんな私を見てエツィオさんが呆れ顔だが、彼は漫画を読んだことがないのだろうな。
「リヒター……やめてよ、そういうの……」
「決まったな……このポーズも練習したのだぞ。なんて私かっこいいのだろう」
ふっ……と息を吐きながらなぜか満足そうな表情を見せるリヒター……前世にこんな
KoRJ内でも彼は案外面白いキャラクターとして認知されているようなので、まあ生きている時は相当にコミュニケーション能力の高い人物だったことは間違いないのだ。
「……見事……だが、この
ボロボロと崩れ落ちる
リヒターが思っていたよりも強すぎた、というのはあるが……異世界での地獄は階層ごとに住んでいるものが違い、階層が深くなるに従って人の身では対応しきれない化け物も出現するようになる。
「どこまで出てくるでしょうね……」
「そうだな……出てくるとしても第四階層程度だろう。我々でも対応可能だと思うがな」
リヒターはコキコキと肩を鳴らしながらこちらへと戻ってくる……彼が召喚した生物や精霊はすでにその姿を消しており、強制的に送り返されたことがわかる。
第四階層……私が前世で戦った相手は第三階層までだ、経験しない敵が出てきたとしたら……どうなることやら。
私の心配をよそに、リヒターは満足そうな顔……と言ってもよくわからないけど、そんな表情らしい顔でエツィオと言葉を交わしている。
そんな私たちを尻目に、
どうやら次の場所までの通路が形成されつつあるらしい。わたしたちは互いを見た後、言葉を発さずに頷く……この先もこういう敵だらけの場所を通過しないといけないのだろうな。
「さあ、行きましょうか……次の敵が待ち構える場所へ」
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