10月23日(水)

〈アキラ視点〉








窓の外を見て「やっぱり」と呟いてから

レジ前の椅子から立ち上がると

俺が呼び止めようと思っていた人物の後ろを

少し離れて歩く人物が目に入った






アキラ「・・・・・・」






俺は店の外にでて「オイ!」と声を上げると

俺が最初に呼び止めようとしていた人物が

「えっ?」と振り返りその後ろを歩いていた

マスクをした男もコッチへと顔を向け

俺が黙ったままマスクの上の目を真っ直ぐ見ると

そのまま足早に角を曲がって消えていった…





「・・・・久しぶりだね…」





お姉さんは俺を見て

気まずそうな顔をしている…






アキラ「出張中じゃないの?」





「・・・・早く終わって帰ってきたの…」





アキラ「先々週も早く帰ってきてたの?」





「・・・・・・」






俺に帰るのを見られていた事がわかったのか

黙ったまま顔を俯かせている…






アキラ「ねぇ、なんかあんの?」





「・・・・・・」





アキラ「アイツ心配してたよ?」




 

「・・・・・・」





アキラ「・・・・アイツのバイトが嫌?」






お姉さんは俺の言葉にゆっくりと顔をあげて

俺の目を見てきたから

バイト先の同年代の女にヤキモチを妬いているのか

会えなくなって寂しがっているのかのどちらかだと思った…







アキラ「ちゃんとアイツと話しなよ!

  ちゃんと話したらアイツはお姉さんの為に

  無理にでも時間作るし…

  バイトだって他の変えるよ…」





俺の言葉を聞くとお姉さんは

小さく笑って「そっか…」と呟いた…





お姉さんはその後何も言わないで

帰ろうとするから「ちょっと待って」と呼び止め

奥のスタッフに少し抜けると伝え

お姉さんの元へと歩いて行き「送る」と言った






「いいよ、近いし」





アキラ「さっきの奴がまたいるかもしれないからだよ」





「さっき?」





アキラ「気づいてなかったの?

  さっきのマスクの男につけられてたじゃん!!」





「・・・・マスク?」





アキラ「・・・・いいから送るよ」






さっきの男の事も目に入ってない位に

何かを考えて歩いていたんだと分かり

「どこ?」と言って案内させると

お姉さんのアパートは陽兎から

聞いていた通り近かった






アキラ「・・・・なんでこんなに遅いわけ?」





「ん?残業してたらね…」






仕事が忙しいのは本当なのかと

思いながらアパートに目を向けて…



 


アキラ「オートロックもないんだから

  後つけられて部屋の中に押し込まれるよ…

  せめてもう少し早く帰ったら?」

 

 




俺の言葉に「オートロック…」と呟いて

アパートの方へと顔を向けてボーっと眺めていた…






アキラ「陽兎が卒業した時に一緒に住むんでしょ?」






お姉さんはアパートを見ながら

「そうだね…」と言うと顔を俺の方へと戻して

「ありがとう」とだけ言って階段を登っていった…

 




陽兎に偉そうに色々と言うけど…

俺も陽兎と同じ大学3年生のガキで…

お姉さんが何に悩んでいるのかも気づかなかったし

陽兎との別れを知らずに後押ししていた事にも

全く…気づいてなかった…








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