1月12日

〈ジン視点〉










ジン「・・・・へぇー…」






陽兎の方をチラッと見ると

不機嫌顔ではないがビールをゴクゴクと飲んでいて

機嫌は悪そうだ…





今日はサッカー部の奴らで集まって飲んでいて

その中の一人は陽兎と同じ様に

年上のお姉さんと付き合っているようで

今その話で盛り上がっているが…







男「お前らも年上の女捕まえろよ!

  飯も服も何でも払ってくれるから!」






男「年上のお姉さんとか、えろいな!

  あっちの方はどうなんだよ?笑」






男「最高だよ!マグロじゃねーし

  よく動いてくれるから疲れないしな?笑」







俺もどんな顔をして聞いていいのか分からず

メニュー表を見るフリをして目線を下げていた…




恋人同士にはそれぞれの付き合い方があるし

俺らがどうのこうの口出す事じゃない

ただ、コイツの話を聞いているとそのお姉さんが

特別好きなわけじゃなく都合よく付き合って

いるようにしか聞こえなかった…







男「でも20後半の女って結婚とかどうすんの?」






男「結婚!?まだ大学生の俺にそんな事求めてねーだろ?笑」





男「分からねーぞ?卒業するの待ってるとかじゃねーの?」





男「えー…無理だろ!!

  だって社会人になって直ぐ結婚とかありえねーし

  自分と歳の違い同期や後輩も出てくるじゃん」






男「じゃー卒業する前に別れるのか?」





男「そうだな…就職で忙しいとか言うだろな?笑」





男「最悪だな?笑

  年上の彼女持ちって皆んなこうなのかよ?」





男「他誰かいたっけ?年上の彼女持ち」



 



俺は陽兎が何か言うかと思い

顔は動かさず目線だけを向けると

陽兎は知らん顔をして料理をムシャムシャと食べていて

言わないんだなとホッとしていると

同窓会に参加してた奴が「陽兎は?」

と声を上げて俺はギョッとした…






男「年末の同窓会で彼女いるって言ってただろ?」






ゆっくり陽兎に顔を向けると

陽兎は口いっぱいに食べ物を詰めていて

おしぼりで口の周りに着いたのを拭き取ると

真っ直ぐと顔を上げて「いるよ」と答えた







男「タメ?年下?」





ハルト「年上だよ」







怒ってるかと思った陽兎は笑っていて

不思議だったが険悪な雰囲気になるよりかは

マシかと安心していたが…





陽兎は自分のお姉さんにベタ惚れだし

皆んなから何か言われたら間違いなく

殴り合いになる気がして俺は酒を飲まずに

掘り炬燵から足を上げて直ぐに止めに入れるようにした






男「お前も年上!?いくつだよ?」





ハルト「29歳だよ」





男「俺と一緒じゃん!笑

  今着てる服も買ってもらったのか?

  ちょっと上のブランドだもんな?笑」





ハルト「まさか!笑 自分で買ったんだよ」





男「お前の彼女は買ってくれないのか?」





ハルト「俺はお前のお姉さんが少し羨ましいよ?笑」







何言いだすんだとヒヤヒヤして聞いていると

「だろうな?」と皆んなの笑いが広がり

頬が引き攣っていると涼しい顔をした陽兎が続けた







ハルト「あぁ…羨ましいよ!!だって…

  そんな格好してても一緒に歩いてくれるんだろ?」

 





男「・・・・はっ?」






ハルト「俺の彼女はダメなんだよ…

  だって、大人で綺麗で、可愛い彼女の横を

  そんな大学生丸出しの格好で歩いたら

  自分の彼女に恥かかせちゃうじゃん?笑」






男「何??陽兎の彼女めちゃくちゃ綺麗なの?」






男「確かにパーカーにデニムじゃ29歳の横は

  無理かもな??下手したらヒモみたいだし?」






ハルト「うん、スッゲー綺麗で…

  抱いてる時とか、もう何って位に綺麗だから…

  俺ならそんな姿の彼女の話なんて絶対にしないね?

  他のヤツに見せたくも、知られたくもないから」







陽兎の言葉に俺も他の奴らも固まって

何も言えなくなり…

陽兎一人が何もなかった様に

箸を握って料理を食べ出しその咀嚼音が響いた…







あの後しばらくは気まずい雰囲気が流れたが

各々違う会話で盛り上がりだし

二次会は恒例のカラオケに行った






誰も年上の彼女の話には全く触れなくなったけど…

皆んな内心は陽兎を羨ましく感じている






先に年上の彼女の話をしていたアイツは

どちらかと言うと自分の彼女の質を落として

20歳の俺が寂しい29歳の彼女と

付き合ってやっている風に話していたが






陽兎は全くの逆で…

29歳の綺麗なお姉さんに20歳の自分が

どうにか背伸びをして相手してもらってるんだと話した…

誰もが皆んなそんな良い女の彼氏である

陽兎を羨ましく思っただろう…






最初の奴の話を聞いていた分余計に

陽兎が自分の彼女の事を

話そうとしなければしない分…

陽兎の彼女への期待度が上がった…






( 俺もカッコいいと思っちゃったしな… )





 

帰り道に陽兎と二人になり

よく殴らなかったなと聞くと陽兎は

「殴れないよ」とコートに手を突っ込んでポツリと呟いた







ハルト「9月1日のあの日…

  俺もアイツとあんまり変わりない事考えてたし」






ジン「あぁ…リベンジだっけ?」






ハルト「そっ!ヒナの気持ちなんて無視して

  どうにかして抱く事しか考えてなかったよ」






ジン「だけどお前の場合は惹かれてたから

  あんなにしつこく童貞にこだわってたんだろ?

  確かにお前も最低だったけど

  アイツとお前は全然同じじゃないよ」






ハルト「・・・・・・」






ジン「本当は殴りたかった?笑」






ハルト「ボコボコにしたかったよ?笑

  ヒナの事何か言ってきたらヤバかったね?笑」






ジン「サッカーでは一度も敵わなかった相手だから

  その分も込めて殴りたかったんだろ?笑」






ハルト「当たり前だろ!笑」







陽兎と深夜の真っ暗な道を

ふざけながら歩いて帰った…







( 誰が聞いても…今日の勝ちはお前だったよ… )








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