第13話 旅立ち

 俺の運命が変わった日。

 五年間もいたパーティーを追放され、ギフトが《無限の魔蔵庫》に進化し、エムピーと出会った日。


 その翌日、朝早くから馬車に乗り込み、違う街へと旅立った。

 ガイたちから離れるため。

 そして、場所を変えてやり直すため。


 2週間にわたり馬車に揺られたが、それも今日で終わり。

 夕方には目的地である『メルバの街』に到着する。


「ようやく、馬車旅も終わりだね」

「はいです〜」


 俺の肩に座っているエムピーに小声で話しかける。

 この旅で俺の右肩がすっかりエムピーの定位置になってしまった。

 つややかな銀髪を風になびかせ、お人形のように整った顔立ち。

 だが、その愛らしいエムピーの姿は俺にしか見えず、耳元でささやく鈴の音のような声は俺にしか届かない。


 馬車の進む音によって、俺の小声はかき消されるが、はたから見ればブツブツつぶやいている怪しい奴だ。

 最初のうちは怪訝そうな視線を向けられたが、慣れてしまったのか、今では誰も気にしなくなった。


 おかげで誰も俺に話しかけてくれないのだが、エムピーがいるので寂しく思ったり、退屈したりすることはなかった。


 馬車の旅は順調だった。

 運が悪いとモンスターや盗賊の襲撃を受けることがあるが、今回はなんの問題も起こらない平和な旅だった。


 旅慣れた者には退屈な風景も、エムピーには新鮮だったようだ。

 ゆっくりと流れ行く街道沿いの光景にキラキラと瞳を輝かせて見入っていた。


 馬車に揺られる2週間。

 この間、エムピーと会話する以外に俺が何をしてたかというと――。


 覚えたばかりの【魔力運用】を使って、最大魔力量を上げただけ。

 使える魔力全部を【魔力運用】にぶち込んだのだ。

 そのおかげで、最大魔力量は追放時の1,210から4,709まで増えた。


 その途中、馬車旅を始めて6日目にステータスが【魔力運用】のレベルアップを告げた。


〈【魔力運用】で累計100,000MPが消費されました!〉


〈スキル成長条件を満たしました!〉


〈【魔力運用】がレベル1から2に成長しました!〉


〈【魔力出納】が使用可能になりました!〉


 新しく手に入れた魔力出納の能力は――。


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【魔力運用】


 【概要】魔力を運用して、様々なことが出来る。


 LV1:最大魔力量増加

 LV2:魔力出納(NEW!)

 ・取得条件:【魔力運用】で累計100,000MPが消費

 ・効果  :本人と魔蔵庫の間で魔力を出し入れできる。


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 魔力を魔蔵庫から自由に出し入れできるのか……。

 現時点では使い道が分からないが、エムピーが言うには今後絶対に必要になるそうだ。


 ともあれ、最大魔力量は2週間で4倍――信じられない増え方だ!


 魔力量だけでみれば、冒険者ランクAでも上位並み。

 トップクラスの仲間入りだ。


 とはいえ、いまだ戦闘スキルは皆無。

 戦力で言えばEランク並。

 ずいぶんといびつなステータスだ。


 ――最大魔力量を増やすことが、強くなるための第一歩。


 以前、エムピーが言っていた。

 俺が強くなるのはこれからだ。


 そう思いながらステータスを眺めてニヤニヤしていると、最大魔力量が4,710に増えた瞬間――ステータスの声が脳内で鳴り響いた。




   ◇◆◇◆◇◆◇


【後書き】

 最大魔力量を増やすことによって自然回復量を増やすのが狙いです。

 【魔力出納】の使い道は、後で明らかになります。


 次回――『スキル購入』


 わくわく。

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