練習作
@yakumo_aska
三題噺(だったもの):トランポリン・雪・焼肉
「――――はい、はい……被害者は……4歳の男児が――――」
知らない。
私は知らない。
あんなやつ育てる気なんてないし。
私は悪くない。
◇
跳ねる。
跳ねる。
落ちる。
落ちる。
跳ねる。
繰り返し、繰り返し、繰り返し。ループする。
「ねえ、今度焼肉連れてってあげるよ。良いとこなんだ」
うるさい。
私の邪魔をするな。興味ない。
食事なんかじゃ焼け付く熱情は感じられない。
「あ、見て。雪、降ってきた…綺麗だね」
綺麗なものか。
もっと軽やかに飛べなければ。
もっと鮮やかに飛べなければ。
誰も私を見てなどくれない。
――ねえ。
――ねえ。
黙れ。
今更。
何を。
◇
『結婚してくれ』
え。
『バツイチでさ……子供もいるけど……それでも君がいいんだ。本気だよ』
――――嬉しかった。
『でさ、そうなったらそんなこと止めて俺と』
――――は?
◇
ずっとずっと飛び続けてきたのだ。
幼いころから何千何万回も。あの柔らかくも力強い舞台の上で。
なぜそれを否定する?なぜ否定した上で私に愛を囁ける?
理解ができなかった。嫌悪さえ覚えた。
彼の息子にすら。
あの子が「跳んでみたい」と言ったらしい。
正直気にくわなかったけど、トランポリンに興味を持ってくれること自体は嬉しい。
仕方なくいつも練習している場所に案内し、用意してあげた。
そう。仕方なかったのだ。
夢中になって飛び跳ねているあの子から目を放し
――――グキッ
わたしはわるくない。
わたしはわるくない。
わたしはわるくない。
わたしはわるくない。
わたしはわるくない。
わたしはわるくない。
わたしはわるくない。
わたしはわるくない。
わたしはわるくない。
わたしはわるくない。
◇
彼が何か叫んでいる。
おまえが――――見ていれば――――ひとでなし――――治療費――――
なんのことだろう?
考える理由もない気がする。
よし。今日も跳びに行こう。
練習作 @yakumo_aska
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