151 その36 ~遠い地からの侵略 その24~

暫くの期間の移動要塞「シディ」の砂漠の町「バザー」周辺に滞在と、その期間内…乗組員たちの「バザー」に出入りし、買い物や宿へ宿泊する…その2点と引き換えに「バザー」防衛システムを提供するという取引を締結するザック。

いうは易いが実現は困難。少なくとも、施設と実働ゴーレムの建造には短くても半年…長ければ数年と見込んでいたダウザーはその目論見が外れる…それは、第1婦人のファーサも同様だった。

ダウザー「嘘だろう!?…何で1日2日で…!?」

ファーサ「何て恐ろしい子…貴方!…養子に迎えられないかしら!?」

無論、レムとナルが許す筈も無く…だが、部下たちの骨休みも必要だろうと、少なくとも1週間以上は滞在することを、シディ内部でだけで決定するのだったw

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- 防衛ゴーレム建造 -


「うーん…」


ガワは創ったはいいが、実際に稼働するゴーレムの設計をどうするか…が、未だ決まっていなかった。


「地竜なんてのが攻めて来るし…人間サイズのゴーレムだときついよなぁ?」


幸い、ハンガーはかなり広々とした敷地面積を持つので多少大きいサイズのゴーレムでも問題無く収容可能だ。必要とあらば、地下に広大なドックを創り、搬出路を外壁の外に創ればいいだけだし。


「う~ん…でも、余り強大な武器を持たせると悪いことを考える人間かもだしなぁ…」


普段は善政を敷いている為政者でも、強過ぎる力を持てば強欲に惹かれて豹変しないとも限らない。だからこそ、防衛専用で攻撃に出るようには創ってないが…


※専守防衛ではなく敵意を以て攻めて来た場合、影響の出る直前で防衛に出るように設計する予定です



「取り敢えず、人間サイズで見た目は甲冑姿のアイアンゴーレムっぽい奴で50体」


顔は創らず、映像と音を拾う穴。警告用の声を発する穴の5つを小さい穴で構成(眼だけは複眼の出っ張りなので穴とはいえないが、遠くから見れば穴が空いてるように見える?…ちなみに兜はフルフェイスでそれに穴が空いてるような感じ。複眼部分は防御の為に薄い防御版を上から張り付ける)


他の部分は体全体を覆うフルプレートみたいな感じで関節部分も覆う(関節部分は腕や足を曲げる関係上、少し柔らかいけど)…素材は疑似ミスリルと魔鋼鉄の合金製。耐熱・耐腐食・耐打撃・耐斬撃・耐魔攻を持たせておく。魔力を欠かさず補充すれば50年はもつが、魔力不足の状態で戦わせると10分で破壊される…って感じの魔力べったりな設計。


※MPでいえば攻撃を受け続けると内蔵魔力コアの魔力を1MP/秒で消費されて、10分=600秒でMP切れて防御力ゼロになるって感じ(満充填で600MPが最大容量)…MPゼロの状態で放置すると、環境にも依るが、構造材がどんどん脆くなるので常時魔力充填状態を維持することをお勧めする(ゴーレム内蔵魔力コアは基本動力であり、装甲保護とは別。装甲保護の為の魔力は装甲内蔵魔力コアがあり、通常はそちらに補充する(最大魔力値は10,000MP=2時間46分の継戦能力を維持可))


※体高2m。質量200kg。全部その仕様で創造。手足の長さなどは人間と同じバランスで(手足が伸びたりはしない)出力は133馬力ちょい。10トンの重りを毎秒1m動かせる力と同程度


攻撃力は装備した武器依存。強い武器ならより強く。弱い武器を持てば弱くなる(装備した武器が壊れない範囲でしか力を発揮しない為にそのような仕様となる)


標準装備として、


◎基本形の盾と剣装備。素材は装甲と同じく疑似ミスリルと魔鋼鉄の合金製。魔力を注いでおけば地竜にすら破壊されず、逆に切り倒せる堅牢性を発揮する(内蔵魔力コア在り)


◎遠距離攻撃用として、弩弓型(クロスボウ)と長距離魔力砲(ライフル)がある。どちらもある程度離れた敵を攻撃する武器だ。


※クロスボウは短矢を番えて発射するが比較的短距離(最大100m程。風魔法に依る圧縮空気で発射し、ガイドレールとして真空場を作るので弩弓と比べて4倍程の射程を誇る)


※短矢は金属製で用途に依って唯の鉄矢を使ったり、爆発する短矢や固い敵に刺さるような特殊な短矢を選べる


※ライフルは魔力塊を圧縮して撃ち出す。遠見の筒スコープではなく、ゴーレムの眼でロックオンした目標目掛けて撃つ為、視界が射程距離となる。多少は天候に左右されるが…ゴーレムの眼は相手の魔力も視える為、ロックオンされた敵は魔力塊を打ち落とすことができなければ逃れる術は無い…。尚、単発式で連射はできない(1発毎に魔力を圧縮する手間が掛かる為)


※弾丸は薬莢や弾頭が一体化した物で弾頭には内包する魔力を込める魔石があり、その場で魔力を込めて再装填することも可(魔力塊は弾頭から魔力を抽出して圧縮するイメージ)


◎短距離面制圧用として、散弾魔力砲(ショットガン)がある。見た目はライフルと違い、ライフルの砲口がラッパのようにやや広がっており、そこから放水するように魔力波を放出して攻撃する。


※弾丸は専用のカートリッジであり、シリンダーに3発が入る。射程距離は100m程で設定値により100m先でどれくらいの範囲を攻撃範囲にするか決定できる。放出する魔力も設定で全魔力放出、半分、1/10と3段階で設定できるので、1つのカートリッジで1、2、10回撃てるといった感じだ。


◎仲間のゴーレム修復用の耐久値再生デュラビリティ・リペアーカプセルを5個運用可。


※デュラビリティ・リペアーの魔方陣を内包したカプセル。使い捨て。ハンガーの製造施設でのみ製造可(例の砂を物質変換して直接創造している)…人間や動物には使えません


◎人間専用回復薬ポーションを5個運用可。


※唯のポーション。小瓶ではなく、例の砂を物質変換して創造した回復薬入りのカプセル。唾液で溶けるが水などでは溶けない(泥水とか雨水でも同様)無論、手でも溶けない(お口で溶けて、手で溶けなぁ~い♪)…敵でも人間なら効果があるので注意(敵味方の判別なんか薬には無理なので)



「次、大規模戦闘向けのゴーレムを10体」


基本能力はアイアンゴーレムの30倍(魔力容量が係数となる)


装甲は疑似オリハルコンをメッキした疑似ミスリル・魔鋼鉄メイン装甲をアイアンゴーレムの5倍程。防御的にもアイアンゴーレムの魔力容量は30倍な為、継戦能力もそれに準じて伸びている。但し、自重が重い為に下半身の負担を抑える「負担軽減能力」に僅かに魔力を喰われる為、単純にイコールではない


体高8m。質量3トン(色々内包した結果、何とかその重さに抑えられた)スタイルは人間より腕が長く足が短い少し不格好な感じに(体重バランスを取ろうとした結果)出力は1万3333馬力ちょい相当に。1000トンの重りを毎秒1m動かせる力と同程度(但し、通常時。全力運転する場合は更に10倍の力を発揮するが、内包魔導具や装甲や周囲に被害が出る可能性もある)


◎基本装備として、その体を武器に戦う(手足、肩など)その分、攻撃に用いる部分の装甲は攻撃時に強化魔法でより硬くなる。攻撃を防ぐ場合、体全体を防御力強化で物理的にも魔法的にも大幅に強化される(疑似ミスリルを上回る疑似オリハルコンをメッキしているのはこの為ともいえる)


※所謂「ステゴロ」…ナグールケル、トッシンスル、マモル…ってかw


◎強大な竜種や巨人種に対する装備として、槍が用意されている。貫通特化の「螺旋葬らせんそう」と超長距離・大規模殲滅用の「果てを焼くモノ」の2つがある。


※螺旋葬は螺旋してドリルのように敵に潜り込んで貫通する槍。槍と名の付いているドリルともw


※果てを焼くモノ…いい名前が無かったのでそのまんま。目標の地面まで飛んでって突き刺さり、そのまま焼き尽くす槍。使い捨てなので燃え終わったら何も残らない。酸素を燃やす訳ではないので真空中でも内包魔力を燃やして燃やし尽くします!(こちらも障害があっても貫通するので、次元断層とかでないと防げませんw←螺旋葬にナパーム弾を括りつけたようなもん)


他に案があれば何か創るってことで、素材は明日から毎日「砂」をアイアンゴーレムたちに頼んで運ぶようにして貰ったので地下のドックに溜め込むようにした…



- 報告 -


「…以上、初期ゴーレムを大10、小50を建造しました。能力としては配りました書類をご覧ください」


「「「…」」」


沈黙するバザー勢。


専門用語が多くてわからないのかな?…と、ちょっと困ったザックと、「ほら見たことですかっ!」…と思っている従者ゴーレムたち。


無論、念話にも漏らさないのだが何て思っているかはその態度と目、表情を見ていれば何となくわかるだろう!w



「おい…これ…」


「はい…」


「想像以上…ですね」


ダウザーとファーサ、カーシャは小声で話していた。想像以上とは、建造に掛った費用なのか…それとも、用意された戦力のことか…恐らくは両方だろう。そして、それに報いる為に黒い御山と乗組員のバザーへの滞在のみなど…ザックが許しても神聖ドラゴニア帝国の貴族としての誇りは許す筈も無く…


「ザック殿…」


「これは…」


ダウザーとファーサがザックに問おうとする。その声はやや掠れ…恐らく、このようなモノを短期間で用意できる人物に対する畏怖などを感じているのだろう。


「はい。先日の敵戦力であれば、十分対応できる防衛力だと自負しています」


そう答えるザックに、矢張りダウザーとファーサは声を出すことができない。そんな様子を見ていたカーシャは、


「で…では、もしあれらが配備されていた場合…どのようになるのでしょうか?」


カーシャの問いは1つ…ゴーレムたちがどのように動き、どのような結果を導いてくれるかを訊いている。2人の親はカーシャに振り向き…そしてザックに振り返る。どんな回答を口にするか…その興味は尽きないといった所か。


「そうですね…まずは」


ザックはその日の敵の動きを全て見ていた訳ではないが…その後、仲間たちから得た情報で補完していた。そこからナルによる演算で凡その経過と結果を聴いていた為、スムーズに答えられたという訳だ。以下、短く纏めた抜粋である。



◎「ドラゴニア帝国軍」が接近を感知した時点で、速やかにゴーレム大を外壁の外へ誘導。アイアンゴーレムたちには全武装をメンテナンス・ハンガーから運び出すように指示


◎10km以内に侵攻した時点で大部分の雑兵を焼き払う為、ゴーレム大が「果てを焼くモノ」を投擲。5km以内に侵攻するまでに、ほぼ全ての雑兵を殲滅する(在庫は3本)


◎3kmのラインを突破した時点でゴーレム大10体に依る「螺旋葬」在庫10本を全投擲。残る地竜を殲滅


◎大物を殲滅後、生き残った中型や小型の敵をアイアンゴーレム50とゴーレム大10で迎撃する


◎残った個体数にも依るが、1時間以内には掃討が終わるだろう…



「「「………」」」


配られた用紙を見て唸る面々と、説明を終えてニコニコしようと思っていたが…余り反応が良くないせいで困惑顔のザック。従者ゴーレムたちはあくまで無表情を取り繕っており…


「失礼…何か問題でも?」


…と、ナルが質問する。


「いや…空恐ろしくなってしまってな」


ダウザーは正直な所、こんなものを提供されたはいいが自分らが御することが可能なのか?…と考えていた。


「本当に…ここに書かれていることが?」


ファーサは未だに信じられないと疑心暗鬼を口に出す。隣りでカーシャも頷いている所から、彼女も母親と同意見のようだ。


「そうですね…模擬戦でもできればいいのですが…流石にあの大軍を用意しても「ブラフではないか?」と疑問視される可能性が高いですし…」


要は、やられ役を用意してもマッチポンプにしか見えないという訳だ。かといって、使い捨ての「果てを焼くモノ」は使い捨ての上にコストは馬鹿みたいに高い。「螺旋葬」も使い捨てではないが使用すれば内包されている魔力をそれなりに消費するし、外装も多少ながら消耗する。使うことでコストが嵩むのは確かなのだ…


(威力を目の当たりにすれば信用して貰えると思うけど…もし、翌日にでもまた軍が攻めて来たら…)


1日で「螺旋葬」は10本。だが魔力が減っている今は同じ数の生産は不可能。「果てを焼くモノ」に至っては消費してしまえば数を揃えるまで時間が掛かるし同様に魔力が足りないので1本を創るのも難しい…


だが…


警報アラート!…正体不明体アンノゥーン接近!…警報アラート!…正体不明体アンノゥーン接近!〉


「…」


『正体は?』とシャーリーに訊くザック。


『ん~と…あ、この前と同じ集団だね。多分、ドラゴニア軍の後方部隊じゃないかな?』


『成程…』


念話を終えたザックは、目前で


「この声は一体…!?」


とざわついていたダウザーたちに、


ニコッ…


と笑みを浮かべて報告する。


「どうやら…我がゴーレム防衛隊の実力をお見せする機会がやってきたみたいですよ?」


…と。


━━━━━━━━━━━━━━━

ゴーレム防衛隊のデモンストレーション…実力のお披露目の機会が到来!


備考:プレゼンとしては実力も問題無い、敵軍の襲来だっ!(浮かれてなんていませんよ?w)

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