137 その22 ~遠い地からの侵略 その10~

え~…蛇型ドラゴンが襲って来て、生身組みが鼓膜破裂して出血。治療後、ザックは最新の強化を施したゼロスリーナンバーのゴーレム娘たちを召喚…だが、無理が祟って気絶してしまう。

アイテムボックスを託されたレム。そして召喚されたゴーレム娘たちは…スタートアップし、目を覚ます。そしてザックに施された真の力を今…レムたちの目前で示すのであった…!

━━━━━━━━━━━━━━━


- 転移成功…だが -


「!…敵に居場所がバレたようです。では…転移!」


何の溜めもなく、軽くコマンドワードを唱えるレイ。そして…高速で転移魔法が実行され、全員別の場所へと移送されるのであった…



「此処…は?」


ざざ…ん…


潮騒しおさいの音と潮の香りがする此処は…最初に襲われた無人の砂浜…ではない。


「別の海岸だ。砂浜ではないが…」


ジェリコ皇女が問い、レムが回答する。非常時なので一切身分が上の者への礼儀はとってないがジェリコは気にしてないようだ。


「あれ…は…」


シャーリーが絶望的な表情をしている。探知魔法の圏内に先程の…結界を通してでもマスターであるザックたちの鼓膜を破裂させた敵性生物…蛇型ドラゴンがこちらに気付き…接近中だと気付いたのだ。


「では、行って参ります」


ちょっとそこまで散歩を…のような気軽な感じでイオNo.010がレムと統括体ナルに挨拶?し、海へと歩いて行く。イワンNo.011たちも後に続いて行った。


「なっ…ちょっ!?」


レムが珍しく狼狽えている。ナルはその肩をそっと触れて止める。傍から見て、どう見ても囮になりに行くとしか思えない彼女たちを何故止めるのか?…そう非難した目でナルを見るレム。


「今の内に」


それだけいうと、レムは歯ぎしりしつつ…ナルのいう通りだと判断を下してナルに続く。


「お、おい…いいのか?」


ザックをお姫様抱っこしたモンブランがレムに問うが、


「彼女らの犠牲を思うなら急ぐことだな…」


と、振り向きもせず答えるレム。


「モンブラン…」


マロンがモンブランを急かし、ザックを揺らさないように足を急がせるモンブラン。一行は「蛇」から見えないようにと海岸の下…崖の下を歩く。崖の上から飛び降りて(ザックはモンブランがお姫様抱っこし、サヨリとジェリコ皇女はレムとナルが抱っこか背負って飛び降り、他の者は自力で飛び降りた)


「一時的に身を隠すにはここらが妥当だろう…」


横穴…洞窟を発見したレムは、全員が中に入った後…入り口を土壁で塞いだ。無論生身の人間が居る為に空気穴は忘れずに小さく開けておいたが…


外では…常軌を逸した怪獣大戦争が展開されていた…



- レイたちの覚悟 -


『行くわよ、みんな!』


『『『はい!』』』


全員、艤装した状態で海面を滑るように駆けていた・・・・・…そして


『目標…蛇型ドラゴン!』


くぃ~ん…


装着された砲門が目標に向けて微調整される。


『全員目標に向けて…発射てーっ!』


どどぉ~んっ!!!


ほぼ差を感じさせない間隔で発射される法弾。全ての砲門から発射されるのは実弾ではなく、魔力法弾だ。質量を伴わない法弾は風にも重力にも影響されない為、その射線はほぼ真っ直ぐ…目標に向かって突き進む…そして


どごがぁんっ!!!


〈KiSYAAAA!?〉


命中し、その弾の大きさにそぐわない大きい爆炎と共に爆圧で蛇型ドラゴンが狼狽え、仰け反っている!


『油断せず、追撃!』


『『『はっ!』』』


どどぉ~んっ!!!


どどぉ~んっ!!!


どどぉ~んっ!!!


3連射した法撃に合計42×3発の法弾が仰け反り中の蛇型ドラゴンに叩き付けられる!!


どごがぁんっ!!!


どごがぁんっ!!!


どごがぁんっ!!!



〈KiSYAAAAAAA~~!?〉



鱗がひび割れ、血が飛び散り…法弾の何発かは胴体の半ばを貫通して千切り飛ばす!



〈GiSYAAAAAA~~~!!〉



そしてラスト…とある目標を狙っていたレイ、イワン、ロゼが一斉射すると…


どぱぁぁんんっっ……!!



余りにもタイミングが合致したせいで射撃音が高い変化を起こし…仰け反っていた蛇型ドラゴンがその首を元の位置に戻したと同時に命中する…ヘッドショットが成立する。



〈Ki…!?〉


どぽぱっ………



全弾が蛇型ドラゴンの眉間に、口内に、両の目に、逆鱗に…突き刺さり、貫通する…


〈………!!!〉



がくん…と力が抜けたその巨体は…制御中枢を失った身体は…一旦静止したが、その状態を維持できる筈も無く…遂には崩れ落ちて…



ずだだぁぁぁんんんっっっ!!!………



と、海に到達する前にその体躯を地面へと横たわらせるのだった…




『勝った?』とミクNo.039


『斃したかも?』とミナNo.037


『『怖かったぁ~…』』とルミNo.063サシャNo.034


『…確認するまではわかりませんよ?』とロゼNo.060


『その通りです。確認をして来て下さい!』とレイNo.001


『じゃ、行ってきます!』


ミクがミナの手を引っ張って海面を滑るように駆け…海面から小石の多い僅かな砂浜へと上陸する。そしてジャンプして崖の上へ…


「う~ん…」


つんつくつんと斬艦刀を鞘に入れたまま、ピクリとも動かない頭部をつつくミク。斬艦刀とは付いてはいるが見た目は短剣相当だ(凡そ80cm程)…脇差といった方がわかり易いだろうか?


「こんだけつついても動かないなら死んで「避けて!」る…え?」


かっ!…と眼球の無い眼窩が開かれ、半壊した顎が開かれて覆い被さってくる…


「ひええええっ!?」


ぎゅるんっ!…と艦載砲塔全てが、目を瞑って頭を庇っているミナの意思に反し…否、自らの主人であるミナを護ろうと、反射ではあろうがその砲塔を向け、砲身を調整し…


どどどどどどどどど………


主砲は距離が近過ぎて爆発の影響で主人を傷付けると判断したのか発砲を控え、射撃を開始したのは高射砲のみとなり、防御は簡易結界の展開のみに抑えられていた(内側からの攻撃は素通しするが防御力は弱くなる)


「こなくそぉ~~~っ!!!」


ミクは渾身のダッシュ加速してでのドロップキックをかまし、


ぱかぁんっ!


と、ミナを襲う蛇型ドラゴンの頭部を蹴り飛ばし、1回転宙返りを決めてからの…



どぱぁんっどぱぁんっどぱぁんっ!!!

どどどどどどどど………!!!



…と一斉射をかまし、更に遠くへと吹き飛ばす!


「ひえええええっ!?」


至近距離を一斉射の法弾が通過してチビリそうになるミナ。だが、無事蛇型ドラゴンの頭部はミクのドロップキックと法撃と射撃に依り…無事にトドメを刺せたようだ!


「念の為…」


ミクはまだ無事そうな胴体部分にもザクザクと斬艦刀を差し込みつつ、輪切りにしていく。



かつん…ぐりぐり



「ん?…何か硬いのがある?」


表皮を斬り、皮を剥ぎ取り、肉を斬り削ぐと…中から大きい塊が現れる。それは…



『えっと…蛇の死亡を確認。んで、中から硬いのが出て来たんだけど…』


『見せて下さい…これは…魔石、ですね』


『魔石?』


『はい。それは天然物ですが…我々のコアに近しい物ですね。何かの役に立つと思います。死体もですが可能な限り回収をお願いします』


「はーい。ミナ、手伝って?…流石にこれ全部は無理だし」


「う、うん…わかった」



こうして…レイ以下、新生ゴーレム娘たちは初陣を勝利で納めたのであった…!


で、結局2人のアイテムボックスには全て収まらず…レイ以外の全員のアイテムボックスを占めることになるのだが、それはまた別の話…



- 新大陸サイド -


「何?…まさか…龍がやられた…だと!?」


「はい…原因は不明ですが。実験中とはいえ、まさか龍が…古龍ク・ロンが破られるとは…」


「空竜の…スカイドラゴンの10倍強いというのは伊達だったのか?」


「まさか…いえ、実は13倍なんですが…負けてしまっては負け惜しみにしかなりませんね…」


「本当になっ!…侵入者の正体と共にその強さも調べないと…こちらの戦力を無駄に消耗させ兼ねんぞ?…全くこの忙しい時に…」


ミラシア大陸を侵略しようという時に…と基地司令が忌々しい!…と思っていると、


「指令!緊急報告です!」


「何だ!?…このくそ忙しい時に!!」


と、伝令兵に怒鳴り返す指令。


「あ、申し訳ありません!…ですが、本当に緊急で!」


と、報告書を差し出す伝令兵。本来なら読み上げる所だがこの指令は口頭よりは見せた方が早いと判断して差し出したのだ。面倒な!…といった顔で報告書を奪い取り、忌々しい!…と読む指令だが…その表情が読み進める度に表情を変えて行く…



「何だ、と…これは…本当、なのかっ!?」


「あ、いえ…私は伝令するだけですので真偽は知らされておら「もういい!」ず…申し訳ありません」


下がれ!…と怒鳴られたのを機に下がる伝令兵。


「可哀そうに…」


と笑いながら下がって行く伝令兵を見る副指令。指令はキッ!…と副指令を睨むが、読み終えた報告書を副指令に投げ寄越す。情報は共有してないといけないが、伝令兵の口頭伝達を邪魔してしまったので報告書を見て貰うしかなかったのだ…



「ふむ…ミラシア大陸が滅亡…ですか」


ざわ…っと指令室がざわつく。


「攻め落とすまでもなかったですねぇ…で?…原因はっと…魔族の侵攻ですか…」


ざわ…ざわ…と、またしてもざわつき始めるが、指令が睨むせいでその声量は落とされるが…ざわつくことは止められなかった。


「まさか…こちらに飛び火…してこなければいいですが…」


副指令の言葉に、


「…だから、ドラゴンの強種を開発してるんだろうが…」


と零すが、ざわめきを大きくした指令室の誰にも…その言葉は届くことがなかったのだった…唯1人、副指令を除いて…


━━━━━━━━━━━━━━━

先見の明が!…だが、ザックの従者ゴーレムに負ける程度ではまだまだだろう!


備考:いや、普通単身で(この世界の)戦艦並みの戦闘力を持ってるゴーレム娘たちに勝てるか?(実は戦艦といっても、まだ丸い鉄砲弾を火薬で撃ち出す程度の砲しか持って無いけども(但し、片面で10くらい砲塔が並んでいる訳だが…))←大航海時代の戦艦程度?


※魔力砲塔は地面の上に固定して初めてその戦闘力を発揮できるけど、海上の艦艇では不安定だし魔力源である地面(の龍脈)が存在しないので、仮に設置しても魔力源である魔石がそんなに巨大なのは無い為…1発斉射すると終わりとなるので鉄砲弾がメインなだけ…空飛ぶ魔法船?…そんなコスパの悪い物は存在しません(苦笑)


※依って、風魔法で浮遊したり飛翔するシャーリーたちが、如何にコスパ良く非常識な存在か…推して知るべし!…てな状況ですw(内包してるコアもね!)

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