111 その12 ~護送依頼 その4~
早朝の朝。目覚めるドワーフの隠れ里「ドーフォク」の村長の娘、ソァーヌ。彼女の朝は戸惑いから始まったのだが…そして朝食を頂いて何故か気付くと風呂の中の人になっていたソァーヌ。そんな日常?も束の間…彼女を村長宅へ送った後、事件は起きる。隠れ里への魔物たちの襲撃だ。
だが、ザックたちに掛かればその程度の規模の襲撃を撃退するのは…終わってみればだが、何てことはなかった。オークキングは捕らえられた後、後悔したという…
〈こんなことになるなら…復讐なんて考えなければ良かった…〉
とw
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- オークキング -
「ふぅ…もういい。情報はこれで全部かな?」
「恐らくは…」
ザックたちの目の前には割とズタボロのオークキングが横たわっていた。新人ちゃんたちがある程度痛めつけて抵抗できないようにしてから輸送して来たのだ。単にロープで縛るだけでは心許ないので、四肢を千切ってから止血処置だけ施し、(ドラム缶のような)大きい桶に詰めて運んで来た…という訳だ。
その後、気絶状態から回復させて尋問したのだが…素直に質問に答えるとは思ってなかったので自白剤を予め投与してから。効くかどうかは不安だったが一応効いた模様…オークキングは豚の頭部の割には何とか聞き取れる口調でペラペラ喋ったという訳だ。
〈…〉
質問が止まったせいでオークキングも口を閉じて沈黙を守っている。
『これ、どーすんの?』
『お望みであればトドメを差しますが?』
『でもなぁ…魔物つっても無抵抗の奴を殺すのも気不味いんだけど…』
レムとザックが念話でこそこそ喋っていると、
『差し出がましいかと思いますが…宜しいでしょうか?』
ナルが割り込んできた。別に重要な内容を話してるでもないので許可を出すと、
『ドワーフたちに提供してはどうかと…元々、この隠れ里を襲った魔物たちの長のようですし…』
と提案してきた。まぁそれもそうだな…と思い。こいつの未来はドワーフたちに丸投げ…と相成った訳である!…心なしか、沈黙していたオークキングの体が震えていたような気がするが…気にしないようにした。
ちなみにオークキングもドワーフたちに処分されて美味しくイタダカレタ模様…討伐部位だけ返却されました。
- ドワーフたち、ザックたちを追い出す… -
「…という訳で、例の巣穴の残党たちが襲撃して来たので撃退しました」
説明の後、取り敢えず倒した魔物たちの亡骸をアイテムボックスから取り出して村長宅の庭に
どさどさどさっ!!!
…と置きまくる。流石に細切れにしたのは庭が汚れるだけなので牙とか耳などの討伐部位だけを出しておいた。無論、オークキングはまだ存命なので例の桶に突っ込んだまま転がして運んで来た訳だけど…
「なっ…なっ…」
「なんだこりゃ?」
レムが村長の台詞を先取りしてドヤ顔をしていたが…
「なんだこりゃーーーっ!?」
と、結局怒鳴る村長。耳が痛いんだけど?(鼓膜が破れる程じゃあないが(苦笑))←数回鼓膜を破られて強靭になった模様…つか鼓膜は破って強くする!?(嫌な強化方法だ…)
周囲を見回すと、うちの従者たちはゴーレムなので聴覚の調整でうるさくても問題は無いと…でも、ドワーフたちはそうはいかなくて耳を両手で抑えて回避していた。やっぱウルサイよね?
・
・
「…いや、失礼した。そしてその、里を護ってくれて感謝する…」
年取った親父ドワーフのデレ顔なんて要らないけど、感謝を受け取っておく。
「いえ、当然のことですので」
レムがキリっとした顔で対応する。
(降りかかる火の粉を払うのは)
という前置詞が付きそうだけどね。
取り敢えず、報酬の話しになりそうなので、数日間の滞在を許可して貰えれば…ということで無理やり決定した。そんなに裕福そうでもないし、既に貰える物は貰ってるし?(里から歩いて2日くらいの場所に持ち鉱山があって、そこでミスリルや色々掘れるからっていってたけど…それ、里以外の人にバラしたらダメな情報では?…その辺の機密情報の扱い雑そうだよなぁ…1度助けたからってオープンにし過ぎだよ…)
と、色々モヤっとしたけど心の中に仕舞うことにして(無論、ゴーレム娘たちにも徹底しておく)数日だけ世話になることとなった。
・
・
そして翌日…
「え…お肉?」
ドワーフたちの要望…だそうだ。斃した魔物たちの討伐証拠となる部位は返却する代わりに可食部位と交換したいとのことだ。
他、薬となる内臓や骨に性器など…成程。薬師を生業としているドワーフも居るということか…生憎だが、脳みそは倒す時に粉砕してしまったので粉々どころか色々混ざってしまっているので利用はできないだろう(心臓も同様、急所を破壊して斃したので混ざり物しか残っていない)
「いや、それくらいはいいんだけど…討伐部位との交換だけじゃ等価交換とはいえないんじゃ?」
暗に見返りは無かったのか?…と訊くと、
「製造した薬の一部を提供してくれるそうです」
と言質を取って来たらしい。流石
「ん~…わかった。じゃあ欲しい所を提供していい。但し…」
「わかっております。マスターが食べる分は残せ、ですね?」
うん…と頷くと、早速出してくれというので取り敢えずアイテムボックス(袋型)を創造して部位毎に仕舞えるように調整し、ストレージから取り出して渡す。
「じゃ、細かい所は任せた。僕はちょっとゴロゴロしてるから…」
と、暗に疲労が溜まってるから寝ていたいと告げると、
「はい!…あの、膝枕役、やっても宜しいでしょうか?」
と、数人のゴーレム娘(主に小隊員の下っ端シスターズ)が挙手してきた。
「え…と、いいの?」
とレムに訊くと、
「…変なことをしなければ」
と、歯ぎしりをして悔しそうな怒ってるような顔で、苦々しい表情も混ざった表情で許可を出すレム。
「あ!…有難う御座います!…お姉さま!!」
と、数名のゴーレム娘たちがレムに抱き着き、礼をしてから僕の手を引っ張って…他の子は押入れから布団を引っ張り出して敷いていた。いや何この連携力…
「コホン!…じゃあ出掛けて来るけど…本当に変なことをしちゃダメだからね?」
そういいながら、レムは数人の部下を引き連れて小屋を出て行く。ドアを開けた時に外を見れば、ドアの左右には門番宜しく、2名の中隊長が居て敬礼をしていた。そしてドアを閉める時、こちらをチラっと見て…ニコっと笑顔をしながら軽く礼をしてからドアを閉める。僕も軽く返礼をしたんだけど…
(中隊長たちがこの子たちの為に、かな?…考え過ぎだと思うけど)
ゴーレムとはいえ、思考コアに依って感情が発生してしまい…人間に近付いてしまった存在。それがこの僕ザック謹製のゴーレム娘たちだ。だから…精神的なケアも必要と考えたんだろう。一番簡単なケア方法とは…
(僕とのスキンシップね…)
既に敷布団が敷かれ、靴を脱いできゃいきゃいと笑みを浮かべてお話しに興じつつ…順番に膝枕をして僕を癒そうと頑張っているゴーレム娘たち。その柔らかさといえば…創造した僕がいうのも何だけど…
(女の子の太ももって…こんなに柔らかいのか…)
と頑張って耐えてるけど…
(ニヤケ顔が…うぐぅ…そうだ!…目だ!…目を瞑って!!)
と、余り意味が無いと思いつつもゴーレム娘たちに癒されていた。最初は耳かき、次に上半身を起こして肩叩きに肩揉み。また膝枕に戻って全身のあちこちを揉んで貰って…いや、数人の娘っ子にマッサージを受けるとか、下手なハーレムより癒されるんだけど…流石に
「じゃあ背中を上に向けて…うつ伏せになって下さい、マスター」
といわれて、うっかり膝枕をしてたことを忘れてて、股間に顔面が埋まる寸前に気付いて退いて貰ったんだけど…いや、普通に窒息するって!…あんな柔らかい太ももに顔面を埋めるとか…ン"ン"…ゲフンゲフン!!
・
・
そして数時間が経過…。流石にやることも無くなったし、ゴーレム娘たちと僕も癒され、疲れて自然と眠りに落ち、起きた時には幾つかの敷布団を並べて雑魚寝をしていた…
「戻りまし…あらあら」
「どうした?…しょうがないな」
ナルとレムが戻ってきた。そして、寝室兼リビングの大部屋の隅っこでスヤスヤと寝ている娘っ子たちとザックが仲良く寝ている現場を目撃し、苦笑いでそっと毛布を追加で幾つか掛けてやり…流石に夕飯の時刻になったので叩き起こすのであった!w
・
・
「ん?…誰か来たのか?」
門番である中隊長たちが外で何か話している声が聞こえてきた。聞き耳を立てていると…どうやらドーフォクの使いらしい。
「…帰ったみたいだな」
足音が遠ざかっていき、静かになる。そしてドアが開かれ、門番娘が1人だけ入って来て頭を下げる。
「何かあった?」
「あ、いえ…大したことはないんですが…」
少し気不味そうに門番娘が言葉を濁すが…構わないからと促すと、次のような内容だったらしい。
◎村長とその娘ソァーヌはそうは思ってないそうだが…と前置きし、
◎隠れ里の総意として…出ていって欲しいとのこと
◎理由として、魔物の襲撃は僕らが誘い込んだのではないか?…とのこと
◎報酬を受け取ったなら、さっさと出て行け!…という暴言を吐く里の者もおり、何か害意を示す前に出て行って貰った方が良いだろうとも…
「あ~…そらまぁ、あんなことがあった後だと…閉鎖的な村ではよくあるよね…」
「村八分って奴?」
「いや…それはちょっと違うかな。元々住んでいる村人に対して行う奴だし、それ…」
とかなんとか。まぁそれはいいとして、後数日はゆっくりしたかったんだけど…
「この家、どーしよっか?」
「元に戻します?」
「いや…前の廃屋は消えてるし(そもそも元に戻すつもりで改修した訳じゃないからなぁ…)」
存在を上書きするような形で創り直した為、元に戻すなら記憶を元にわざと壊れかけの家を再現するしかないが…果てしなく面倒臭い。
「では…どうしますか?」
うーん…と考えるザック。まぁ、これくらいの小屋?…置いといても問題はない。そもそも風呂だって魔力が無いとお湯を沸かせないし、台所だって魔力が無いと火をつけることも叶わない。通常は属性魔石を使って火をおこしたり水を沸かしたりするのだが…この家の物は直接「生活魔法」で行っているのだ。
仮に生活魔法を操れる者が居ても…大抵は魔力不足で調理中、或いはお湯を沸かす途中で魔力切れで止まってしまうことだろう。彼の従者ゴーレムもその生活魔法はマスターしており、調理やお湯を沸かす程度…少し内包する魔力が減る程度で途中で切れる者など存在しない。
生活魔法の多くはその場その場で単発で使うちょっと便利な魔法だが、継続して行使するには威力に対して消費コストが大き過ぎて使い物にならない。そんな使い方では熟練度は大して育たず…結果的に最大魔力も増えず、威力も持続力も低いまま…一般的に生活魔法はそんな認識なので、生活魔法しか扱えない者は冒険や探索には行かず、一般人として生活することが普通のことだったのだ。
「…まぁ放置してってもいいんじゃない?…目立つのは風呂とかくらいだけど工夫しないとちゃんと使えないし」
薪を燃やして沸かすでもないしせいぜい…水を汲んでくるか水属性魔法で溜めた後に弱めのファイヤーボールでもぶちこまないとお湯を沸かせない。見た目には風呂桶があるくらいなので風呂以外では水瓶代わりに使うくらいだろうか?…幸い、台所と隣接しているのでそういう使い方もできない訳ではない。
「他は…まぁふつう、だから大丈夫じゃないか?」
小屋?の部屋割りが短期間宿泊するだけだからと、殆どが寝室兼リビングの大部屋と台所、風呂場とトイレだけという大胆な構成くらいだろうか…普通に暮らすなら色々と足りない作りなのはわかるが、考えてる暇が無かったので足りない物があれば後で追加するつもりだったのだ。
「はぁ…まぁ休むのと帰る時間を引き延ばすだけの理由だったからなぁ…」
流石に片道4日。往復8日な予定の行程で2日で帰って来たら…流石に「依頼をこなさないで戻って来たのでは?」…と疑われかねない。一応完遂したとサインは貰っているが…受諾してくれるか微妙だ。
「うーん…しょうがない」
取り敢えずドーフォクは出て、何処か適当な場所で野営しつつ暇を潰す…という方針で行くことにする。その日、僕らは最低限の荷物を背負って(中身は空っぽで荷物は各自のアイテムボックス(袋型)に突っ込んである)ぞろぞろと出て行くことになった。一応、レムとナルと護衛の4名だけが村長宅に出かけ、これから出て行きますと報告に行き…後から合流することになっている。
・
・
「えっと…」
現在、僕はゴーレム娘に肩車して貰いながら…みんなが駆けている所だ。何でこんなことになってるかというと…
- 時間は少し遡る… -
「マスター。馬車は使わない方がいいですよね?」
「え?…まぁ…走った方が速いだろうし…対向車が来たら困るからね」
「じゃ、じゃあ…」
「ん?」
「私が背負いますから走って行きましょう!」
「あーっ狡い!私もマスターを背負いたい!!」
「じゃああたしは肩車する!」
「おお!その方がいいかも!!」
…と、非常にきゃいきゃいと騒ぎ出す小隊員娘たち。収拾が付かないと残っている中隊長娘に目を向けると…両手を上げて「我慢してね?」…とアイコンタクトされる始末…っておい!
そうして…抽選の結果。肩車担当が4人。盾となるタンク担当が4人。索敵担当が前後1人づつの2人の計10人。そして後からレムとナルと護衛2人が追加されて14人構成となる。シャーリーはザックの肩車で後頭部を柔らかいモノで包む係…ではなく、上空を飛んで遠距離索敵の任に就くので下からは見えないので員数外となっている。
「実質、最後の肉壁担当なのよね…私たち」
(物騒だけどそうなんだよな…)
「ま、まぁ…マスターと直接触れる機会なんてそうそう無いし!」
(いや…創造直後にストレージから出した時に触れてるぞ?…記憶が無いだけかも知れないけど)
「てことでマスター、至らないことも多いかも知れませんが…今日は宜しくお願いします!」
「「「しますっ!」」」
一斉に頭を下げて勢いをつけて戻す。普通のゴーレムがやると頭が転げ落ちそうになるけど…
(うん、大丈夫そうだな)
ザックは少しだけ不安気にしていたが、大丈夫そうだと軽く頷く。こうして…ザックたちは小屋を後にして…ドワーフの隠れ里「ドーフォク」を出た。残すと不味そうな物は片付けておいたが、残しても大丈夫だと思った物は放置して…
※施設としての小屋そのもの、風呂、台所。家財道具としての敷布団、毛布、ローテーブル、座布団など。食器類や台所での料理道具などはそのままお持ち帰りです(元々旅路で使う物を出して使ってただけなので)
・
・
「出て行ったな?」
「あぁ…」
「お嬢が気持ちいいといってた…何だっけか?」
「風呂だな」
「早速俺らも味わうとしようじゃないか…」
「あぁ…気持ちいいという話しだったな」
村の若い衆の2人がザックたちが一泊した小屋へと足を向ける。そして辿り着いた小屋を見て驚いていた。
「これが…あのあばら家か?」
「建築術って奴か?…まさか半日でここまで…」
夜には小屋で泊まったと聞く。ならば連中はこの元あばら家に着いてから夜までに建て直したということになる。小さめの小屋だった筈だがそれでも僅か数刻で建て直すなど、魔法でも使わないと説明が付かない…
「何人か部下らしい娘っ子たちが居たって聞くが…」
「全員冒険者らしいからな。腕力なら問題ないんじゃないか?」
ザックの存在は無かったモノとしてるらしい。いや、そもそも伝聞なので知らないのかも知れない。
「…これか」
「薪を燃やす所は?」
「いや…そもそも窯が無いんだが…」
どう見ても風呂桶らしい大きなお湯を溜めるモノが単体で設置されているだけだ。よく見ても、使い終えたお湯や水を排水する為の穴…を塞ぐ蓋があるだけだ。
「なぁ…ひょっとして」
「あぁ…こりゃあ魔法使いが居る前提…だろうな」
でなければ…隣の台所でお湯を沸かし、風呂桶に運んで入れるしかないだろう。それは非常に効率が悪いし下手をすれば火傷を負いかねない…
そのことに気付いた若者2人は明らかにがっかりと肩を落として脱力し、溜息を吐く…
「ま、まぁ…昼寝の場所が確保できたって考えりゃいいか…」
「あぁ…」
マメに掃除をして環境を維持できれば昼寝小屋としては十分だろう。何なら食材を持って来れば食事も可能だからだ…だが、ロクに料理をしたこともなければ掃除などもサボり勝ちな若者たちだ…次第に小屋は汚く変貌し、寝ていると虫などがタカってきて痒くて堪らなくなり…やがて人が近寄らなくなって最後には最初にザックたちが見たような
━━━━━━━━━━━━━━━
人が住まなくなり、維持管理をしなくてはどんなに新品の家でも廃屋になるって話w
備考:果たして、ザックたちは何処へ…!?
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