95 その11 ~魔族侵攻再び その4~

ザック邸(とゴーレム娘たちから呼称されてるだけ)の地下指令室(俗称w)にて対魔狼アクセを生産するザック。そしてレムたちに与えると思いの他、感謝されて戸惑うザック(シャーリーにだけ「何か違う!」と怒られましたがw)

そして時間を置いてから運び込まれるゴーレム娘たちの遺骸…まぁ潰され、破壊された残骸ですが…に「耐久値再生デュラビリティ・リペアー」を掛けるも、全ての娘たちを復活させるには至らなかった…恐らくは残骸が再生に必要な割合に至らなかったのだろう。

復活したゴーレム娘たちに現場復帰をして貰い、そのついでに新装備ネックリボンを持って行って貰い、それからは徐々に敵を駆逐していった…そして敵の全滅も時間の問題と判断する頃…新たな敵が現れる。果たして、マウンテリバーは…ザックたちは生き残れるのだろうか?

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- 溶岩の巨人マグマ・ジャイアント -


「まさか…溶岩の巨人?…」


そこには、灼熱の地獄からやってきたとでもいいそうな…溶岩の巨人マグマ・ジャイアントが着地した姿勢から立ち上がっていた…その顔に歪んだ笑みを浮かべながら…まだ距離があるのだが、背筋がやや猫背とはいえ…その体高はその後方に見える木々よりも尚高い。そして…


「ちぃっ…離れてるように見えるけど、後ろの木が燃え始めてるぞ!?」


ザックの言葉にレムもナルも驚きを示す。あんな物がマウンテリバーに入れば、折角復興した街は瞬く間に業火で燃え盛ってしまい、とても人々が住めなくなる…


「今すぐに…「待て」…ですがっ!」


「ロクな対策も無しに出ても、むざむざ死にに行くようなものだ…」


「…くっ!」


ナルが今すぐにでもゴーレム娘たちを迎撃に向かわせようとするが待ったを掛けるザック。そして無策で向かわせれば無駄死にさせるも同然だと追い打ちを掛け…それはいわれるまでも無くわかっているナルは…悔しさに口を閉じる。


「…」


「何を創ってるんですか?」


「試作品だ」


ストレージから取り出したのは、携行砲筒ランチャーだ。但し、以前創った物より重厚感があり、中の砲弾も1発限りの使い捨てだ。


「こいつをアレに撃ってみて貰いたいんだが…「はい!」…えっと、誰?」


偶々新装備を配り終えたと、わざわざ報告に戻って来たゴーレム娘がナルに報告中に挙手していた。


「…助けて頂いたイオナNo.107です!」


そういやボブカットの子だったな。見覚えがある。


「重火器の扱いはできるのか?」


ぶんぶんと縦に頭を振りながら


「任せて下さい!…私の隊ではランチャー発射を任されてました!」


慣れてる…という程運用してる訳じゃないと思うが、使ったことがあるなら問題は無いだろう。ザックはそう考えて、先にゴーグルを取り出して渡した。


「…これは?」


受け取りながらイオナが問う。


「これか?…頭部を保護するのと同時に着弾位置を誘導するゴーグルだ」


と説明し、使い方を説明する。ふんふんと説明を聞いていたイオナ。ゴーレムだけあってこちらの説明を理解さえできれば運用には問題は無いだろう…そして。


「わかりました。隊のみんなと協力して…何としてでも成功させてみます!」


「いや、それ試作品であれ溶岩巨人に効くとは限らないから。ダメだと思ったらすぐ引き返してくれ」


何となくだが特攻しそうな勢いがあったので慌てて「いのちだいじに!」を命令する。こくこくと頷くイオナを見て、


(大丈夫かなこいつ…)


と思わなくもないが…


「では、行って参ります!」


重たそうなランチャーを背に担ぎ、どたどたと指令室(仮)を出て行くイオナ。


ちなみに、ミナNo.037イオナNo.107ミクNo.039の3人はサンフィールド産のゼロフォーナンバーかと思ってたんだが…元々マウンテリバーで創ったゼロスリーナンバーで、レムが必要になるかと思って何人か連れて来た内の3名だそうだ…ややこしい。


で、その3人はこちらに戻って来て他小隊に補充要員として行動してるそうだが…元々こちらマウンテリバーでは一緒に行動してたそうで…まぁ仲がいいのはいいことだ。


「さてと…」


熱い物には冷たい物をぶつけて…というのが定番だが、それがダメだった場合のことを考えて、次善の策を用意しておくのは…


「こんなこともあろうかと思ってだな」


そう、何事も未来を予測して対策を用意しておくことは必要なことだろう。流石に高温の怪物に更なる高温の攻撃を用意するのは…不要ではないが普通に考えれば難しい。岩が溶ける温度を上回る高温などは鍛冶の仕事場で使われる炉なら作り出せるだろうが、あの巨体を押し込めるのは無理というか無謀だしどうやって攻撃に転嫁しろというのか?…と呆れられること請け合いだろう。


「ま、余計な考え休むに似たり…か」


見る限り、あれは自然に生まれた怪物ではなさそうだ。ではどうやって生まれたのか?


「多分、魔法生物…なんだろう。触媒を使って生み出された人工の生物…」


ならばやり方はあるなと判断するザック。そして暫く無言の時間が経過…


『やった!当たりました!!』


見上げれば、壁の映像ではイオナたちの隊が映されており、かなりの量の水蒸気が蔓延していた。遠くに苦しむ溶岩の巨人が唸りを上げており、対象の熱を急速に奪う弾が当たったらしい部位が白くなっていた。


「喜ぶのはまだ早い。急いでその場から離れろ!」


ザックが警告を発するが、


『ええっ!?…もうあれで倒したんじゃ?』


…などと聞こえてくるが。


ぴし…


表面にこびり付いた氷面にヒビが入る。そして…


ぱし…ぴき…びきびきびき…


がらがらと砕け落ちる氷が増えて赤味を帯びた溶岩の巨人が活動を再開する。


『ひいっ!?…退避!退避ぃ~っ!!!』


と、一目散に退避を開始する小隊のゴーレム娘たち。


と、そこへ溶岩の巨人の一つ目が明るい赤に輝き…


どっ…


と、何かを吹き出すような音が響き…


どんっ!


と近くの地面に着弾。直後、


どぱあっ!


と爆発する!!


『なっ!?』


映像では振り向いた直後…全面が白熱した何かが広がっており、直後に映像にはノイズが走り…途絶した。


「…はぁ」


ザックは溜息を吐き、「矢張りあれじゃダメだったか…」と呟く。


そして、急ぎストレージ内で目標の武器を創造し、仕上げる。


「はぁ…ちゃんということを聞けばあんな目に遭わなかったのにな…」


ぶつぶつといいつつドアの外が何やら騒がしいなと目を向けると、


「「「マスター申し訳ありませんでしたぁ~っ!!!」」」


と、ミナ、イオナ、ミクの3名が滑り込み土下座をしながら叫び、びっくりしたザックと


「「なにごとっ!?」」


と、レムとナルが大声で叫ぶのだった…いや、耳が痛いんだけど?


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創ったのはランチャーではなく、長銃型の魔法銃です。機能はいわれるでもなく…アレですw


備考:前話の後書きを見ればわかりますよね?…え、わからない?…ぉぃぉぃ。

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