83 その40 ~サンフィールドに帰還 その1~

えーっと…ドライールドの一貴族の軽い「できるものならやってみろ」と無責任な挑発の結果、砂漠の街周辺ドライールド領緑の魔界ユグドランの地に変わってしまったという…誰が責任取んの、これ…

シャーリー「飼い主マスター?」

ザック  「えぇ~っ!?…俺?…何も指示出して…あ゛(ヤルなら徹底的に…といったことを思い出す)」

レム   「はぁ…おばか」

その他一同「どんまい?」

※上限を設定しなかったザックが主原因でしたw

━━━━━━━━━━━━━━━


- サンフィールドに帰還す -


「ただいま~…」


サンフィールドに転移して戻って来たザックたち。現れた先は面倒になったのか領主の館の玄関前だ。流石に屋内にいきなり現れるのは不味いと思ったのだろう(失礼という意味では余り変わらないが…)


「ちょちょちょ!…ですから、来るなら門の前にして下さいよっ!?」


ガシャガシャと騒音を撒き散らしながら門番たちが玄関前のザックたちに勘弁してくれといいつつ走って来る。


「別にいいじゃん…一応念話で話しは通してあるんだし?」


統括体トウカを通して戻るという話しは既に通してある。単に門番までそれが通ってないだけなのだが…


「あら、間に合いませんでした」


と、使用人のメイドお姉さんが玄関を開けて1人呟く。多少息が切れているので早歩きで移動はしていたのだろう。


「入るけどいいかな?」


「ど、どうぞ…」


ドアを大きく開き、頭を下げるメイドさん。ザックたちは清浄化クリーンを軽くかけてから領主の館へと帰還した…行った時は数人だった従者ゴーレムの数は何百倍にも増えてはいたが…館の者たちは報告を受けていたミランダ婦人以外には知らない…



「ご苦労様でした…」


一応、簡単な報告はトウカを通してしてある。神妙な顔をしているミランダ婦人はどんな感情をしているのか…彫刻のように固まっていて窺い知れることはできなかった。


(そりゃ解析を使えばわかるだろうけど…今それをするのは悪手だよなぁ…)


鑑定の上位版の解析ならば、恐らくその対象の感情くらいは知ることはできる。だが、人としてどうなのか?…と考えれば


「ザックくん?」


「あ、はい…」


「ドライールドが滅びた…というのは…本当なの?」


「えっと…」


ザック当人から本当のことを…真実を知りたい。ということなのだろう…ザックは数瞬だけ迷ったが、ゆっくりと頷き。


「事実、です」


と返した。1から10まで説明する場面ではないと考えた為、単純に正直に事実を…結論だけを報告した。


「そう…恐らく、色々な要因の結果だと思うけど…それについては後で書面に起こして提出してちょうだい?」


「あ…勿論です」


「それでしたらこちらに…」


レムが既に用紙にして何10枚もの書類に纏めておいてくれたらしい。トレイに載せて待機していた…


「あ、ありがと…レム」


「いえ、これくらいは…」


まさに秘書の鑑のようなレムさんでした!w



- ミランダ婦人 -


(まさか…ドライールドを滅ぼして戻って来るなんて…)


それは想定外もいい所でした。上層部の首を飛ばして性根が良い者とげ替えるくらいじゃないと腐り切ったドライールドを変えることはできない…それでもやり過ぎじゃないかといわれていたのですが…


(報告書を読む限り…ドライールドは人も街も全て…ユグと呼ばれていた新造したゴーレムを核として生まれたユグドラン…世界樹の一種が産まれ…ドライールドの土地や人のマナを糧として緑溢れる魔界として変じてしまった…これ、本当なの?)


通常、世界樹のある土地というのは世界樹から産まれるマナが満ち、そこを棲み処とする神獣を育み、周辺の地にはそのお零れとしてマナが芳醇な土地が…と聞くが。


(うちの調査班が数日留まって調査した報告書もあるわね…えーっと?)



【緑の魔界調査書(抜粋)】

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◎名前:ユグドランの緑の魔界(仮名とする)

◎備考:元ドライールド

◎調査結果:

 ・周辺の地からマナを吸収し、世界樹「ユグドラン(仮)」の成長の糧としている

 ・ユグドランは現在、尚も成長中である

 ・成長が止まればどうなるかは今後も調査が必要だろう

 ・現状の緑の魔界は旧ドライールド領の面積を上回り、日に日にその勢力圏を伸ばしている

 ・成長速度は徐々に落としてはいるが…サンフィールドに到達はしないだろうと思われる

 ・逆に北側方面と西側には速度を落とさずに伸長している様子。東側は砂漠が殆ど無い為か侵攻が認められない…このことから、砂漠が存在する方面に侵食が進んでいると考えられる

 ・サンフィールドに侵攻が進んでないのは…推測ではあるが、核となっているゴーレムのマスターが存在する為と思われる

---------------



(まさか…こんな結果になるとはね…)


緑の魔界の発生原因がザックにある…とはいえ、そのように挑発したのはドライールドのハリーという大商人という…恐らく領主は関わってないのだろう…が、そのハリーが周辺の他領から人間を攫って売り捌き、私腹を肥やしていたのも事実らしい。


(まぁ…結果だけ見れば自業自得だが…)


ドライールドの元の状況と現状況の絵も添えてある。こちらはザックの従者ゴーレムのレムのお手製だが…それは緻密な絵で、まるでその状況を目の当たりにしてる気分にさせてくれるが…


※普通に黒インキなので白黒の写真のような絵である


(…本当にこんな変貌を遂げたのかしら…)


絵で見せられても信じられない。そう考えても仕方ないだろう。この世界では未だ写真の技術は開発されておらず、人の描いた絵がせいぜいだからだ。ピンホールカメラの技術すら発明されてないのだ。現存するゴーレムレムたちの腕で手で描かれた絵が写真代わりとなって見せられているが…逆に先進技術過ぎて理解を得られてないとも考えられる。


(取り敢えず人を調査に出しているから戻ってからね。まずはザックくんたちを労うべきか…)


ミランダ婦人は硬いことを考えるのはこれまで!…と思考を放棄し、自室から出て廊下を歩いていた使用人に声を掛け、ザックたちが今何をしているか訊き出すのだった…



- 労われるザックたち -


「はぁ~…大きな風呂にゆっくりするのも久々かも…」


ちゃぷん…


天井から水滴が落ちる音が聞こえる程の静寂の中、四肢を伸ばしてザックがその余りにも大きな湯舟で力を抜いていた。だからこそ気付かなかった!


「まぁ~すた?」


「レムっ!?」


「おひとりでナニしてるのかな?」


「しゃ、シャーリー!?」


「ナニって何ですか?」


「と、トウカ!?」


初期従者ゴーレム勢揃い&仮名かりのなではあるがこの屋敷のナンバーワンが勢揃いであるw…そして、シャーリーを除いて全員それなりの美人さんでそのボディもそれなりに…


「あたしが、ナニ?」


「あ、いや…何でも…って、おい!」


「イヤーン、マスターの、え・っ・ち・!」


すっぽんぽんで目の前を飛ぶなし!…と思ったが、50cmのボディも等身大にすればそれなりのスタイルで…などと妄s…否!…考えていると、ぐぎぃっ!…とレムに頭を…痛い痛い痛い!


「マスター…シャーリーばかり見てないでこちらも見て下さい!!」


一糸纏わぬ姿のレムが目の前に…いや!年頃の娘さんがそんな破廉恥な!…って、こいつらは生まれて1年ちょっとの赤ん坊と同じ年齢だったっ!!(トウカは数箇月)


「マスター…恥ずかしいからこっち見ないで下さいね?」


トウカはトウカで…多分羞恥心をミランダ婦人に叩き込まれたんだろう。頬を赤く染めて胸と股間を隠して…って、何で風呂に入ってんだよ!?…恥ずかしいなら入らなきゃいいだろっ!!


「あの…ミランダ婦人が癒して差し上げろと…恥ずかしいから嫌だといったんですが…」


とんだ策士!?…ってか自分の創造したゴーレムに色気でナニかされるとか…


「あ~…疲れも取れたし、僕は出る!」


と、頭に血がのぼって考えが纏まらなくなり、そう叫んで湯舟から出ようとしたザックだが…


「だぁ~め!…ちゃんと体を洗わないと!!」


「えぇ~っ!?…マスター体洗わないで湯舟に入ったの?」


「ちゃんと湯がけしたよ!!」


「でも、きちんと洗わないといけません!…よ?」


…とまぁ、あーだーこーだと引き留められ…結局体を洗われたのだった…それも、隅から隅まで…


(いや、あそこ股間は死守したよ!?)


流石にゴーレムの力でゴシゴシされたら潰れかねない…怖かったのでそこは死守した。特にレムはゴシゴシすれば綺麗になると信じて疑ってなかったからね…風呂から出て、暫く肌がヒリヒリしてたので回復薬ポーションを処方せざるをえなかったよ…トホホ。



- そして翌朝… -


「ザックくん、よく眠れたかしら?」


物凄い胡散臭いいい笑顔でミランダ婦人が朝食の場で問い掛けてくる。何が狙いだったんだか…


「えぇ…まぁ…。あいつらゴーレム娘たちの乱入が無ければもっと良い眠りにありつけてたと思いますよ?」


肌がヒリついたまま暫く寝苦しくて、ストレージから回復薬ポーションを出して傷口に塗り付けるまでは痛くて横になれなかったのだ…仕方なく、ストレージから収納してた警備ゴーレムを取り出して手伝って貰ったが…


(そーいや四肢切断してたのが居たのを思い出して、ストレージ内で耐久値再生デュラビリティ・リペアーしたんだっけ…時間は掛からなかったけど、回復薬ポーションの塗布を手伝って貰う代わりに修理してくれと頼まれたんだったんだ…)


その後、ストレージから主だった個体を取り出し…無事の再会やら何やらで時間が掛った訳で…


(まさか警備ゴーレムたちにあんなに感情が発達してたとはな…汎用ゴーレムとして創造したんだけど…ううむ…)


沈黙をどう捉えたのか、ミランダ婦人は表情に焦りを含ませて


「そ、そう…大変だったわね?」


と、それ以上の追求はして来なかった。どちらにせよ…マスターであるザックのゴーレムが、ザックにナニか色仕掛けをした所でミランダ婦人に得るものはない。実の娘にナニかをさせた訳ではないのだから…



「報告書は読ませて貰ったのだけれど…ドライールドが魔境になってしまったというのは…」


「本当ですよ。自分の目前で変化してましたし…」


「原因は…?」


「ドライールドの大商人である「ハリー=ドライールド」が僕のゴーレムにちょっかいを出しましてね…」


詳細は報告書に書いてあるので細かい内容は二度手間になるし、そのやり取りを直接聞いた訳ではないので省いて説明する。


「結果、ああなった…と聞いてます」


「伝聞形式だけど?」


「念話で聞いたんですよ。僕はその時、ドライールドから買収した土地の中に居たもので。彼女たちはその時、数km離れた貴族街に居たんです」


「成程…念話というのは?」


「えっと…ゴーレム技師なら普通に扱える技術です。従者ゴーレムと距離が離れてる時に会話する能力ですかね?」


嘘である。通常のゴーレム技師は普通に会話を経て命令したりするだけで、ザック謹製の意思を持つゴーレムや流暢な会話をするゴーレムは殆ど存在しない。意思的な声を発するゴーレムは存在するが、大抵は…


ま゛っ


とか、


ギギギッ


とか、


うがーっ!


とか…どうにも理性を持ってるか不明な擬音に近いゴーレムばかりであった。遠い昔には、カタコトであるが意思を以て会話できるゴーレムが存在した…という文献もあるようだが、門外不出の品なのでザックたちが知るよしも無い…このことから、ザックの創造するゴーレム娘たちが如何にチートな存在なのか、わかるだろう!


そして、大商人であるハリーが拉致監禁してまでヒナたちを捕らえ、調査して可能なら量産し、他国に売りに出そうと考えるのも…不思議は無いのである。調査しても解体して解析しても量産は不可能…という可能性があったにも関わらず…


「そう…まぁいいわ。これでサンフィールドにちょっかいを掛けていた勢力が1つ無くなったのだからね…ゆっくり骨休みして頂戴ね?」


「え…はぁ、まぁ…」


まるで他にもちょっかいをかけて来る勢力があるような話し振りに胡乱気な返事しかできないザック。マナを多く含む砂を十分に回収したらマウンテリバーに戻るつもりだったのだが…


「じゃあ、部屋に戻らせていただきます…ご馳走様でした」


「はい、お粗末様」


何となくまだ何か起こりそうな気がするザックはどうしようかと悩みつつ、与えられた自室へと戻るのだった…


━━━━━━━━━━━━━━━

最悪、サンフィールドの為に汎用ではなく強固なゴーレム軍を置いて帰ろうかな?…と思うザックでしたw


備考:収容してた警備・その他のゴーレム娘たちで無事な個体には別命(リーダー個体とサブリーダー個体にアイテムボックスを貸与して、サンフィールド周辺のマナを多く含む砂の回収を頼んだ)を指示しておいたので数日で戻れるようになる予定ではある。勿論、魔力カプセルと休憩用に例のゴーレム用の小屋を壁の外に設置しておいたのだった!

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