75 その32 ~ドライールドで彷徨う その11 & その他各地の現状~
ドライールド領は完全に敵対したと思っていた。だが真実はどうやら微妙に違うようだ…
ザックはドライールド領も一枚岩ではないと判断し、数体の新しいゴーレムを…隠密特化の情報収集型ゴーレムを創造し、ドライールド領へと放つ。
ザック「正面から戦うのも何か違うし、情報を集めて判断してからでも遅くないだろうしね!」
※アホなおっさんは正面から来てるけどなっ!w
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- シャーリーの調査報告書 -
今朝早く、シャーリーが戻って来た。内容は昨日追ったD領の私兵長を追って得た情報だが…
「領主の私兵だと思ったんだけどね…辿り着いた場所は何と!」
領主の館ではなく、大商人の住居だったらしい。それも並大抵の大きさではなく、宮殿と見紛える程の大きさの…残念ながらある種の結界で覆われていて…早い話、外部の人間…ではないが、シャーリーは許可証とかそれに類する物品を身に着けてなかったので中には入れなかったそうだ。
「どーにかして中に入ろうと思ったんだけどねぇ~…」
珍しく隙が無い結界だったそうで、どんなに高く昇っても地面を掘っても隙間は無かったらしい…とはいえ、身長50cmの抱き枕大の小型ゴーレムが一晩掛かって掘れる穴など…膂力が並み以下のシャーリーでは深い穴は無理だろう。
「あ~わかったわかった。お疲れさん…それより、風呂…は無いか。シャワーでも浴びてきたら?」
全身土塗れで汚れていたシャーリーにシャワーを勧めることに…土だなぁって臭いしかしないんだけど、ク●塗れにも見えるその姿を見てると流石にね…(苦笑)
※砂漠地方だからって全部が全部、砂しかない訳ではない…というお話
- 取り敢えず大砲が五月蠅いので黙らせる -
「これ、何?」
「トリモチランチャーだ」
「何に使うんですか?」
「外の大砲に撃って使えなくする」
最初の問いはシャーリーで返事はザック。次の問いはレムで返事は同じくザック。
見た目は以前創ったロケットランチャーや投網ランチャーと余り変わりはない。中身の弾がトリモチとなっているくらいか。故に設計図は残っているので量産は簡単だ。
「以前創ったランチャーと同じですか?」
「まぁ…そうだな。中の弾が違うくらいだからな」
「だったら以前創ったあの携行型の筒は残っているので中身だけ創ればいいのでは…?」
レムが暗に素材の無駄だから有る物は有効活用すれば?…と突っ込んでくる。突っ込みスキルがレベルアップしたなぁ…と、ザックは斜め上の解釈をして頷くのであった…(感心する所、そこ?)
※外見上の細部は創る度に毎回違うが、使用用途が「中の弾を発射する」という所は同じだった故の突っ込みDEATHねっ!w
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「…という訳で、壁の上から敵陣の大砲を狙い撃ちし、使えないようにして差し上げろ!」
「「「いえっさー、ますたー!」」」
索敵型と狙撃型、近接戦闘型のゴーレムたちは依然警戒を継続して貰い、警備ゴーレムたちに「大砲を使えなくしよう作戦」を任せる。ランチャーは以前創った物を流用することにし、1人10発を渡してノルマは最低でも1人1基の大砲を使えなくすることとした。
残存しているランチャーは57本があった(一部は破損していて、使えない訳ではないが危険なので回収して素材に還元した為に残っていない)ので570発のトリモチ弾を製造(1発だけ創った後、残りは複製で消費魔力を抑えた)し、1体1体に手渡しだと時間が掛かってしょうがないので10発入りの箱に詰めて勝手に持ってって貰った。
(…まぁ、その箱詰め作業も手伝って貰ったんだが…)
こちら側の人間が僕自身1人しか居ないのでマンパワーが絶対的に不足している。仕方なくゴーレムたちに借りられる手は貸して貰いまくってたって訳だ…はふぅ。猫の手が欲しい…癒される意味で肉球ぷにぷにしたい…
(そんな愛玩動物は王都に行けば飼われてるそうだけど。…あ、そういう癒しとかは出先の酒場で食事をしていた時に愛好家らしき商人の話しを聞いてたって訳で、その時は酷く疲れてたので「そんな動物が居るんだ~」程度にしか覚えてないけども(苦笑))
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それから凡そ1時間程が経過する。朝から散発的に響いていた轟音が聞こえなくなってから10数分が経過。
「成功したかな?」
と思った瞬間、念話ネットワークを介して静止画像が届く。
『マスター、成功したみたいだよぉ~?』
シャーリーから念話が届く。画像の中の大砲は白い巨大な粘液…というよりは巨大な溶け掛けたお餅みたいな物体をぶっかけられて…砲身の中も外も白く汚れていた。少なくとも、砲身の中を清掃しておかないと次弾装填も発射も儘ならないだろう。
『確かに成功だが…他の大砲も同じかな?』
トリモチ弾はすぐに取り除かないと硬化して対象にくっつき取り除けなくなるようになっている。特にあの大砲のような金属には癒着して剥がし難いように設計してある。尚、人体などの生物に当たってもお湯で洗えばすぐに剥がれる安心設計でもある。うっかり口と鼻にぶち込んだ場合はすぐにでも引っぺがさないと窒息する危険があるのはお餅と同様だが…
『反撃を優先している間に大砲を放置してたせいで慌ててる拠点が殆どみたい。うける~w』
警備ゴーレムたちには目標の大砲にトリモチ弾が当たったらすぐ引っ込み、次の拠点の大砲を狙うように指示してある。被害は最低限になるだろう。無論、D領兵には極力当てるなとも…まぁ、体を呈して大砲を守られたらその限りではないんだけども…
『中には「餅みたいだから火で焼けば!」とかいって火炎魔法で燃やしたり爆破してるんだけど…大砲が先に壊されて大慌て!って拠点もあるのっ!…うっかり大声で笑ってバレるかと思ったわよ!…あ~お腹痛いっ!!』
(いや笑ってないで迅速に各拠点の偵察を済ませろよ…)
ザックはシャーリーのアホな行動にジト目をせざるを得なかったのであった…
- そーいや外を巡回してる警備ゴーレムは居ないよな? -
「そーいや今は壁の外を巡回してる奴はいないよな?」
「ええ、それはもう…危険ですしね」
レムが「戦時下と同じですから」と返す。そりゃそうかとザックは頷くが…
「そういやサンフィールドで使った「ステルスマント」…じゃなくて「
記憶に依れば3000体分程量産したが、若しかすると使うかも知れない(どちらかといえば絶対使う機会が多いだろう)と思い、半分程持って来てあるのだ。
「ええ、持って来て正解でしたね。量産された全員に着せてありますよ?…まだ残ってるので警備ゴーレムたちにも標準装備で配布済みです」
「え…そ、そうか」
指示してないんだが…とは思ったが、別に問題無いので褒めておく。
「要らぬ配慮でしたか?」
「いや、よくやった。流石レムだな!」
「…!」
多少ぎこちなくなってしまったが、手を出すと頭を下げて差し出して来たので撫でておく。これはザックよりレムの方が若干身長が高いのでしょうがないのだが…無理をすれば手が届くが、レムは自然と腰を折り膝を曲げて撫で易く頭を下げていた。
「…♪」
まともに見れば蕩けそうな表情をしているが頭を下げている為にザックには見られていない。勿論、ザックも屈んで見ようとすれば見れるのだが…
(こうしていればレムも可愛いのになぁ…)
としか思ってなく、ナデナデし続けるのだった…シャーリーにバレるまでw
- サンフィールド・領主の館サイド -
「親書は届き、返事が戻ってくる頃合いですのに…」
ミランダ婦人は歯ぎしりしていた。親書という体裁を取ってはいるが、中身は唯の苦情書だ。得られた情報を読み、整理し、親書という体裁で苦情をドライールドの領主に送ったのだが一向に返事の書面が届く気配が無かった。取る物も取り敢えず、謝罪だけであれば数日中に届いても良さそうなものだが…
「…ということは、向こうは謝るべきことではない。と考えているのでは?」
と、
「確かにそうかも知れませんが…」
婦人は届いている書面…ザックから届いた物だが…を見詰めながら呟く。そこにはドライールド領の領兵たちから集められた自白の内容が述べられた内容をそのまま記されており、ややもすると支離滅裂な内容にも見えるものもあるが…恐らくは真実なのだろう。
曰く、ドライールド領のお偉方に家族を捕らえられ、仕方なく従っている。
曰く、他の者の家族同様に恋人を捕らえられ、仕方なく従っている。
曰く、借金を負わされて雁字搦めになり…以下同文。
曰く、曰く…
中には金で雇われた悪党のような者も居なくはないが…それは少数のようだ。一応、自白者の名前と所属、どういった経緯でドライールド領の領兵として動いているかも添えられている。彼らは現在ドライールド領のザックくんの土地に建てられた牢獄に収容されてるとのこと。希望すれば亡命させてサンフィールド領に迎えることも
「まぁ…家族や恋人が捕らえられているのなら、それも難しいかしらね?」
深い溜息を吐き、返事をせっつく親書?を出すべきか否かを考え始めるミランダ婦人。そしてトウカはトウカで増え続けるドライールド領からの侵入者の処分を聞こうかどうかと頭を悩ませるのだった…
- そしてマウンテリバーの現状サイド -
「ふぁ~…暇だな」
「だな」
ザックがサンセスタに出張ってからそれなりの期間が経過していたが、特に何も起きてはいなかった。あれだけ破壊された街並みも元通り…とはいかなかったが、寧ろスラムっぽい部分が無くなって区画整理され、家屋も新規に建て直し、大型化されたことにより住み易い街となっていった。
但し…貴族街は平民街より中途半端に壁が頑丈だったこともあり、被害は少ないが半壊未満の家屋が多かったことにより修理程度に留まり…要は平民街より見すぼらしい見た目の家屋が殆どだった。屋内に侵入され1階だけ目茶苦茶になっていたこともあり…壊れた家財を処分してスッキリしていたが買うにしてもマウンテリバー内では食料品などの売買はできても未だ家財道具などは販売の目途が立っておらず、外の街などから取り寄せるにしても時間が掛かるといった状態だった…
という訳で隙間風が吹く1階を晒している貴族街の家屋が殆どだった…(2階に寝室を設置している家屋が殆どなので寝るには困らないが、キッチンやダイニングなどは1階にある所が殆どなので、自炊ができず(勿論使用人たちが料理するのだが)外食だけで済ませているとかなんとか…。使用人は殆どは1階に住み込みしているか通いだが、一部の貴族たちはその使用人たちが魔物たちに殺されてしまい、困っているという話もあったりする。
他、今回のモンスタースタンピードで亡くなった人たちの為にマウンテリバー…ではなく、ノースリバーサイドに慰霊碑を建て、共同墓地を造ったそうな。ダークエルフたちも手助けしたという話もあるが…。ノースリバーサイドに建てるというのならば、彼らが手助けしない謂れはないだろう…
・
・
「…成程ね」
ザックは残して来た草…ではなく、隠密特化型ゴーレムの収集した情報を読んで頷く。一応は汎用ゴーレムたちもモンブランも残してはいるが、それとは別に情報収集特化ゴーレムを創造して紛れ込ませていたのだ。見た目は汎用ゴーレムと同様だが、中身は隠密・情報収集に特化しただけあって性能は
(ま、「脱げば凄いの!」じゃあないけどな…)
着痩せする女性を思い浮かべたが…。貴族と平民とでは衣類はかなり違う。平民は如何にしてコストダウンを図るかで布面積よりは布の断面が薄く、でも露出面積は少なくをモットーとしたデザインだが…貴族はデザインを優先してコスト度外視の衣類が多い。露出は多いか少ないかは問題ではなく、如何に目立つか…といった物が多いが、それは既婚者だけで未婚の娘は飽くまで清楚を表に出した衣類が多い、らしい。
(…まぁ。野郎にはわからない世界だよなぁ…)
少なくとも、ザックには理解できない世界だ…ということだ。普通に着れて快適で変なデザインじゃなければどーでもいい…というのがザックの持論だから仕方が無いのかもしれない。今現在のザックの服は上から下まで一般的な布の服。暑い寒い関係無く長袖長ズボンに
無論、見た目通りの装備ではなく、魔法的な加護も付与されており…物理的防御力なら重量級の鋼鉄の鎧より高く…魔法金属ミスリルの軽装甲並みの強度を持たせてある。魔法防御力ならアダマンタイト級の盾並みの強度がある。これは戦略級の単体攻撃魔法でもないと貫けないと豪語できるだろう。尚、アダマンタイトは重過ぎるのでそれを使った鎧は無いそうだ。軽量の魔法も掛けられない為、致し方ないだろう…(アダマンタイトは魔法を付与できないので、故に対魔法隔壁などにも使われている。高価過ぎるし量を確保できないので重要拠点の隔壁程度にしか使用できない欠点もある)
こんなソフトレザーがあるかっ!?…と怒られそうだが、魔石コアにそういう魔方陣を埋め込めばできちゃう所がザックのチートな所以でもある…一体、生活魔法って?
〈全ての魔法の源がヒントかも…ね?〉
…誰の声だろうか?(すっとぼけ)
- そして場面はドライールドに戻る… -
「…ふんっ」
荒い鼻息の後、ばさあっ!…と紙面が床に散らばる。
「返事は如何致しますか?」
離れた所から声がする。
「放っておけ。どうせ何もできんさ…」
鼻息の主が面白くも無いと呟く…という割には大き目の声でだが。
「宜しいので?」
尚も放置していいのかともう1人が問うが…
「放っておけといった」
「はっ…ではそのように」
慇懃無礼な感じはするが、ひとまず従う。恐らくは部下という立場なのだろうが
「ちっ…折角親父から家督を引き継いで自由にできると思ったのに…くそっ!」
「…そういう物言いは外では控えて下さいね?」
「…わかってるよ!」
(だからガキだというんですよ?…ハリー=ドライールド)
心の中で本心をぶちまけるが、ハリーの元級友、現補佐のスクィードは溜息を吐くのであった…
━━━━━━━━━━━━━━━
とうとうその姿を現すドライールドの隠れた侵略者の影。だが、その心根はガキだった!…どうやらそのガキを影で操るモノが居るのかも知れない…と臭わせているが、真実はどうなんだろうっ!?
備考:何も考えてないので作者にもわかんないDEATH!(ちょっ!?w)←まさにその時の思い付きで書いてる事実がっ!w(ノリで書いてるともっ!)
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