74 その31 ~ドライールドで彷徨う その10~
遂に進撃の●人がっ!…ではなく、D領兵たちがザックたちの所有地に侵入を開始した。ザックが穏当に殺さずを命じている為、麻痺程度で済ませて捕縛していた所…総勢100名を超えるD領兵が捕まった。休憩小屋にはそんな人数を収容できる訳はなく…急遽牢獄を建てて収容したのだった(以前の経験が役に立った瞬間でもあった!w)
その夜…巡回警備中のゴーレムを介して1通の封書が届く。その内容は簡単にいえば「降伏を勧める書状」のようなものだろう…。余りにも身勝手な内容に溜息しか出ないザックたちだが…
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- 出るわ出るわ、叩けば埃が!(いや、物理的な奴じゃなくて比喩ね?) -
「という訳で、拷問しようとした所…」
「えと、どんな拷問を…?」
「あ、いえ。する前に泣いて「白状するから」と懇願されまして…」
どうやら拷問道具を見て震え上がったD領兵たちはべらべらと白状したそうな。訊いてない内容まで!
「で、これがその内容か…」
誰が付き合ってる相手の性癖までいえと…と頭が痛くなる「知ってどうしろと!?」…といった内容まで。いや、聞いた内容は書いておけとはいったけどね?
(まぁ…取捨選択の細かい条件付けまではいってなかったけどさ…トホホ…)
ザックは、そのまま報告すれば目も当てられない気がした為、仕方なく「
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・
翌日…スッキリと目覚めたザックは独りベッドから降りた。そう…いつもはレム・ユグ・シャーリーがべたべたと添い寝…添い寝?…をしてたので若干寝不足気味だったのだが、昨夜は体調が悪いと遠慮して貰っていたのだ!
「じゃ、清書頼むよ」
「はい」
適当に転写した領兵の自白の調書から一部分を転写しただけの書面をサンフィールドのミランダ婦人宛てに送る為にレムに清書をして貰う。正式な物ではないが、念話にて
「後は…あれか」
朝っぱらから爆発音が凄まじいのだ。それで叩き起こされたのもあるが、余りに煩いので現在は遮音結界を休憩小屋を囲う範囲にだけ張っている。尚、空気の激しい振動だけをシャットアウトするだけなので普通の声とか音は聞こえている。牢獄に収容されたD領兵たちの泣き叫ぶ声も聞こえているけどね…
「自領の上司のせいだから我慢すれば?」
と呟くが、大声でいっても今は小屋の中からなので彼らには聞こえないだろう。尤も、砲撃が止んだ瞬間でしか、間近で叫んでも聞こえないかも知れないけどね?
- 壁の外 -
「撃てぇ~っ!」
どどぉぉんっ!!
どがぁぁんっ!!
ぱらぱら…
「次弾装填!」
ごしごしごし…
ごとん…
「撃てぇ~っ!」
どどぉぉんっ!!
どがぁぁんっ!!
ぱらぱら…
何度繰り返しても壁も、取水場も、見た目は石造りの構造物にはヒビ1つ入らない。どころか、衝撃波や振動で反対側の自領の建物に徐々に被害が出て来る始末…
民衆たちには工事だとあくまでいい張り、避難をさせているが…戻って来た時にどんな悪態を付かれるかわかったものではない。だが、それでもやり遂げなければならないのだ…領兵を動員して100名以上が捕らわれの身となり、少なくない損害が生じている。ましてや…今回はあのお方の私兵を、貴重な大砲・弾薬も持ち出しているのだ…少なくとも失敗すれば我が身の破滅だ。
「突破するまで撃て!撃ち尽くすのだ!!」
声を枯らす勢いで叫ぶ。普段は自身を蔑んだ目で見る彼らも、その迫力に素直に応じている。
どどぉぉんっ!!
どがぁぁんっ!!
ぱらぱら…
やがて、耳が痛い程の沈黙が訪れて辺りが静かになる。鼓膜が破れた訳ではないが、耳がバカになったかのように静かになり…おっさんは怒鳴る。
「何故撃つのを止める?…死にたいのかっ!?」
「…んですよ」
「はぁ?」
「もう無いんですよ。砲弾も、火薬も…」
「無ければ補充しろ!」
「それに…」
「今度は何だっ!?」
「砲身が焼け付いちまって…恐らく、冷やして落ち着くまでは無理ですよ」
「熱いなら冷やせばいいだろがっ!?」
「まさか…水をかけろとはいいませんよね?」
「当然だろがっ!…熱いなら水をぶっかければいい!」
指を指し示された方を見れば、取水場がある。既に明るくなっているので水は流れているが、砲撃で砂も飛び散り…飲み水には適してなくなっていると思われるが…水で冷やすには何の問題は無いだろう。だが…
「本気でいってるんですか?…そんなことをしたら」
「貴様こそ本気なのか?…まさか、水で冷やせないと思ってるんじゃないだろうなぁっ!?」
おっさんは怒りで我を失っている。限界まで熱せられた物に急激に冷やせば脆くなって壊れてしまう可能性に…怒りで我を失い、その事実に気付いてないのだっ!
「こうすればいいだろがっ!!」
と、水を湛えていた水桶を引っ掴んで手近な大砲の砲身に…あろうことかぶっかけてしまったのだっ!
「ああっ!…なんてことを!?」
じゅわぁ~~~っっ!!
「はっはっはっ!…ほら見ろ!…こうすればすぐ使えるように…」
びきっ!…びきびきびき…がらがらがら…
「な…」
なるではないか!…といおうとしたおっさんが言葉を失う。やや温くはなっていたが、砲身と比べると100度近い温度差があった為に熱割れ現象と呼ばれる事象が発生し…要は急激に冷ました結果、ガラス瓶が割れるのと同様、熱かった砲身が急激に冷まされたことに依り砲身の構造が脆くなり崩れてしまったのだ。一度の戦闘でそう何度も発砲する前提で造られてなかった大砲は限界を迎えていたのも大きかったのかも知れない…(そもそも、攻めることはあっても攻められることはドライールドには無かったのだ。無理も無いだろう…)
「ぐぅ…」
「このことはあのお方に報告しておきますからね?」
「ま、待てっ!」
「いいえ、待ちません。この大砲が1つで幾らするか…知らない貴方ではないでしょう?」
「だからっ!」
「失礼します…おいそこの!…そう貴様だ。
「はっ!」
焦りに焦ったおっさんは、たった1つの過ちで自身の身が危うげな立場に立たされたことを悟った。そして私兵の長は…あのお方と呼ばれるドライールド領の大商人の館へと足早に向かうのだった。ドライールド領の代表というのは嘘だったのだろうか?…そして、あのお方とは…
(ふっふぅ~ん!…貴重な情報ゲットだじぇっ!)
独り諜報部隊のシャーリーが聞き逃す筈も無く、念話で流した後…その私兵長を追うのだった!
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シャーリー「え?あたしが何でそう都合よく現場に居たかって?」
レム 「そりゃ寝てないなら仕事しろ!…といったけど」
ユグ 「眠い…」
ザック 「成程…レムに追い出されてたのか。でもお疲れさん」
シャーリー「わ~い!マスターに褒められた!!」
レ&ユ 「ずっこい…」
※尚、警備ゴーレムたちは自身の仕事に専念してたので特に反応する個体は居なかったとか何とか…
備考:段々と敵の内情が判明してきた希ガス。特におっさんが嘘付きだってことも判明…
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