64 その21 ~ドライールドに往こう その6~
サンドワーム vs ユグの決着は着いた…無論、ユグの圧勝でだ!
その後、小さな砂漠の生き物との戦闘はあったが割愛しよう(
そしてとうとう到着したのはドライールドの町…だが、兵隊たちがうじゃうじゃと門の前に居たのは予想外だったザックたちであった!
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- ドライールド領兵たちの反応 -
(さて…どう対応するべきか…)
ザックは目前にたむろしているドライールド領兵たちを見て思う。確かに宣戦布告されたのは
だが、それは水の泡の如く脆い要望だろう。無茶な要求は叶えるのは無理だと意見しに行かせた使者が命からがら逃げ帰って来た事実がある…。ザックたちは20数名の領兵たちがこちらを見て、動き出そうとしたことで全員馬車の外に出て待ち構えるが…
「おう、旅の者か?…サンドワームが出たと聞いたんだが…見なかったか?」
と、声を掛けるだけ掛け…答えを待つでもなくスルーして去って行く。
「え?あれ?…」
と戸惑うザックたち。どうやら…恐らくだが
「サンドワームに依って結界が破壊された為、状況を確認し…結界を修復する部隊」
…なのだろう。5名程が先行し、後ろを道具やポールの材料などを積んだ荷馬車が付いて行く所を見ると…間違いは無いだろう。唯…荷馬車を引くのが馬や砂漠の動物「ラクーダ」ではなく、奴隷の人間10数名という違いはあったが…
「「「…」」」
あんな重そうな荷車を奴隷に引かせるとか…色々いいたいことはあったが敢えてスルーし、門の中に入る…前に馬車をストレージに収納して一行は歩いてドライールドに入る。門兵は外には居らず、入るのは自由そうだが…出ようとすると止められて調べるのだろう…中にのみ門兵が目を光らせていた。入るのは
「そーいや…僕、身分証無いけど大丈夫かな…」
探索者ギルド資格は剥奪されている。
(折角ランクBまで上がったのになぁ…)
と思いつつ、たったの1年行動不能になっただけで…と考えた所で気付く。
(そーいや半年に1回、ギルドカードを示して生存確認して貰わないと「死亡認定」されて剥奪だっけ…)
…と。
「規則は規則ですので!…」
と、頭の固いギルマスがそんなことをいってたのだ。これは必ず本人がやらないといけないということで…
「はぁ…」
と、思わず溜息が出る。辺境伯相当の爵位も似たような剥奪をされている。一応、使用人たちがザックの状況を領主に進言してくれていたが、半年に1回本人が顔を出さないと…という新人爵位持ちの規則があった。流石に王都から遠い者は最寄りの領主やギルドを通して連絡が必要だったのだが、半年以上音沙汰が無かった…ということで爵位も資格も剥奪と相成った。
(まぁ…「死んだのだろう」って思われたんだろうなぁ…)
いちいち辺境まで確認しに来る訳もなし。剥奪するのなら手紙1つで簡単…ということだ。目が醒めた後、一応「心配をお掛けして…」と挨拶回りをしたのだが、ギルドにしろ領主にしろ、多少ではあったが、すまなさそうな顔をしてたのだ。恐らく、
「自分たちにはどうしようもできなかった…」
ということだ。
(…ま、それはいいんだけど…)
とか思っていると、レムから封筒を差し出される。
「ん?これは…?」
「中を確認して下さい」
レムにそういわれたので、開けようとしたがここは天下の往来だ。いきなりスラれても困るのでストレージに収納して中で見てみることにした。
「収納(ぽそ)」
収納品一覧で手紙をポイントして中を見る…とすると、脳内イメージ(ザックには目に見えているように見えている)で中の手紙の文章が見える。
【手紙の内容】
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ザックくんへ
ミランダです。これを見ている…ということはドライールドに到着しているのでしょう。
確か、身分証の代わりになる物が無い…と聞いた覚えがあるので同封した物を使って下さい。
ドライールドの全部で効果があるとは思いませんがきっと役に立つと思います。
それでは無事の帰還を待っています。
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同封されている物は…腕輪型の身分証のようだった(簡易鑑定で判明)
「身分証を取り出し…」
かなり細い輪っかではあったが素材はミスリル製のように見える。魔法の効果で保護されてるようで耐久力には問題はないようだ。
「へぇ…可愛いですね?」
レムが目を輝かせてみているが…
「ちょっと触ってもいいですか?」
と訊いて来るので手渡すと…
ぴりりっ!
と、小さいが電撃の火花が飛び散る。
「あ
いや、説明されなくても見てたのでわかる。多分、装着できる人間以外が触れるとああなるんだろう。
「成程ね…」
それだけいって放って返された腕輪を受け止め…ちょっとだけ考えてから左腕に通す。
しゅるん…
手の平より大きかった輪っかが縮んで腕にぴったりフィットした。リサイズの魔法も掛かっていたのだろう。これなら邪魔になることはないん…だが、腕が汚れた時なんかには困りそうだ。
(痒くなったりしたらどうするんだろう…あ、外し方は…?)
などと思っていると、
「お…外そうと思ったら元に戻るのか」
いやまぁ、創造した装備品はみんな同じ機能は持ってたので不思議でもないのだが…取り敢えず納得し、一応念の為に左腕に
・
・
「さて…何処行けばいいんだろうねぇ…」
いきなり領主の館とか行政機能を持つ場所に向かっても、使者と同様に斬り捨て御免されるのがオチだろう。だが、水不足で困っているのはお偉方よりは平民たちの方ではないだろうか?…町に入って辺りを見た所…そんなにひっ迫してる程困ってるようには見えないが…
「まぁ、干乾びてる感じではあるよね?」
シャーリーがそう呟く。一応、彼女には姿を消して貰っている…いや、50cm程の大きさの人間型の生き物なんて存在しないから…
「そうですね…確かに地面に力を感じないです」
レムは土属性魔法の使い手らしく、土属性の魔力を余り感じないと申しているようだ…。生活魔法一辺倒の僕にはよくわかんない感覚だけども…
ちなみに、探知魔法でドライールド領の周辺を探ってみた所…流れ込む河川の類は多くない。サンフィールドに流れる河川はマウンテリバーの山地から流れる川の幾つかが流れ込んでいる為、程ほどの量の水の恵みを受けている。本流が1つ。支流が幾つかと、砂漠地帯なのに貯水池に水が溜められるのはそういうことだ。砂漠のオアシスともいわれるだけのことはある。
だが、ドライールド領は河川は無い訳ではないが…枯れ勝ちな支流が1本。不足分は地下水で補ってるようだ…その地下水も汲み上げ過ぎて枯れかけていると、町中を歩いている時にシャーリーの聞き耳に依って判明した。町の人たちの推測・憶測のようだが…お偉方は水不足を余り感じてなく、それは地下水を湯水の如く汲み上げているそうだ…いや、砂漠でその表現はどうだろう?…と思わくは無いが(苦笑)
支流1本だけ?…と思い、道の途中で目を瞑って集中できるものではないので宿を取ってから部屋の中で落ち着いてから探知魔法を発動する。判明したのは以下の通りだ。
【ドライールドの周辺探知結果】
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◎マウンテリバーから伸びた河川の支流が1本流れ込んでいる
◎他の支流は流れ込んでいないが一部の水が地下水となって流れ込んでいる
◎流れ込んでいる水総量は普通に使う分にはドライールド領民が生活できる程度は確保されている
◎水不足に陥っている原因は恐らく…地下水の過度な汲み上げだろう
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「…成程」
つまり、この結果から導かれる答えは…
「サンフィールドと同じことをしても、ドライールドでは意味が無い…」
理由として次が挙げられる。
◎ドライールドに流れ込んで来る水の総量は増えることはない。
◎サンフィールドは地表を流れて来る水は蒸発し易い為に
◎ドライールド領は地表を流れる河川に殆ど水が流れていない為、貯水池を造っても意味が余り無い。
◎大部分の水を地下水の汲み上げで補っているのにお偉方が過度に汲み上げている為に水不足に…
結論としては…
「お偉方が過度な水の汲み上げを止めればいいんじゃね?」
…ということに終始する訳だ。
「まぁ、他にも対策が無い訳じゃないんだが…」
力技で地下湖を創り、マウンテリバーから流れ出ている川から一部、その地下湖に流れ込むように作れば…。但し、それをやると水流が減少することに依り…どういう影響があるかわからないということだが…
「はぁ…近くに海でもあれば浄水して何とかなるんだけどなぁ…」
だが、海まではドライールド領からも、サンフィールド領からも…砂漠を超えないと到達できず、その砂漠は砂漠で、数多の敵性生物が生息して壁となっているのだ…
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備考:宿を取って30銅貨支払った(一晩素泊まり)…マウンテリバーの一般的な宿で1日2食出て銅貨15枚だったことを考えると素泊まりで銅貨30枚は高いことがわかる。それだけ税が高いか…水代が高騰してるのだろう…恐らく。
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