48 その5 ~サンフィールドに往こう その5~
サンフィールドに到着し、領主の館に訪れたザックたち一行。その館だが…物々しい様相を呈していた。何か知らんが拒絶の魔力を撒き散らし、見た目にもハリネズミみたいな槍が館のあちこちから出っ張っていたのだ。まるで
そして中に案内されるザックたちだが、いきなり地下室にご案内~♪…じゃねーよっ!w
若しかして軟禁か監禁かっ!?…と、内心ドキドキしていると唐突に襲う衝撃にてんやわんやの騒動が勃発!…シカーモ(外人アクセント)…通風口から爆弾がカランコロンと投げ入れられて…いや、まぁ、嫌な予感しかしなかったザックの土壁多重防御に依って、辛うじて事無きを得たのだが…そしてレムが部屋を出て廊下で襲撃者を撃退という休む間も無い襲撃に、ザックたち(サンフィールド領主婦人+私兵の皆さん)は、転移魔方陣で脱出するのだった…え、レム?…実力で脱出できるから問題は無いよ?
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- 転移先は…館の外だった -
しゅわっ!…
某40mの光の巨人の掛け声じゃなくて、そんな擬音の後に現れる5人。前以て魔方陣が現れてから3秒後に出現するので、予め出現位置を予測できる人なら、そこに爆弾でも置いとけば撃退できると思うけど、大抵は転移魔法のマーキングって魔力波長が一致しないと見えないし察知できないのでほぼ無理かな?
「ここは…」
「「「館の外!?」」」
ざわ…ざわ…と、ざわめく私兵たち。秒の時間でいきなり景色が変化…それも転移魔法を体験したことが無い者ばかりなら無理もない反応だろう。
「あはは…転移魔法ですよ?」
ヤバかったかなぁ?…と思いつつ、緊急時だからしょうがないかと諦めるザック。そして取り敢えずストレージからゴーレム馬車を取り出すと、
「え…」
「まさか…」
「アイテムボックスか?…」
と、都合よく勘違いをしてくれる私兵たち。
「取り敢えず中へ」
そういってカーゴルームのドアを開けてミランダ婦人をまず案内し、中へ入るザック。私兵たちは暫く互いの顔を見合わせていたが、悩む暇は無いと頷き合って静かに全員中へ入る。
・
・
「さて…これからどうするか、なんですが…」
「そう、ですね…」
この馬車は通常の6人乗りの馬車よりは多い人数が乗れるように設計(といえる程ではないが)されており、定員数は8名(前後の座席数は4人×2。但し、大人が4人づつ乗れる程度の幅を持つベンチシートというだけで乗員の体格に依っては増減するだろう)
『マスター!』
『お、シャーリーお疲れさん。どうだった?』
そこにシャーリーから連絡の
『賊は20人くらいみたいだよ。ま、レムのバーサークで半分くらいは倒しちゃったみたいだけどね?w』
『バーサーク違う!』
『えぇ~っ!?…返り血で怖いことになってるからなぁ…客観的に見たら『シャーリーも死んでみる?』…って、えええぇ~っ!?』
『今のはシャーリーが悪いな…』
ちょっと血だらけのレムを想像してチビりそうになったザックはレムの肩を持つことにした。いや、血だらけで闇落ちしたレムが現れただけで…うん、絶対チビる!怖すぎて!!w
『レムもお疲れさん。掃討が終わったら外に来て?…今、馬車に集まってるから』
『了解』
『あ、あ~…なるべく屋敷の中を破壊しないようにね?…止むを得ない場合はしょうがないけど…』
『…了解』
何か間が開いたけど…多分、色々とやらかした後なんだろうな…と思ったが、敢えて追及はしなかった。賊が勝手にぶっ壊したのはこちらのせいじゃないし、なるべく破壊しないようにしても…被害を最小限にしようとしてレムがやられたら元も子もないしね…
「そういえば…」
「あ、はい?」
いきなり再起動したかのようにミランダ婦人が動き出し、問い掛ける。
「地下室から脱出する前にドアの外に出て行ったメイドの彼女なのだけど…」
「あぁ~…レムですね。大丈夫ですよ。唯…まぁ、荒事をする関係上…色々と物がぶっ壊れてると思いますが…」
と、すまなそうに頭を下げる。だが、婦人は苦笑いをしながら、
「あ~…時々襲撃がある関係上、飾ってる物は安物だから気にしないで…大事な物は別の場所に隔離してあるし…」
そして、小声で「まさかあそこまで押し込まれるとは思わなかったけど…」と呟いている。
「あ~…そ、そうですか…ま、まぁ…もし建物が修復不能なまでに壊されたら…」
そこまでいってから、「何をいってるんだ?」という目で見られるが気にせずに
「建て直しは任せて下さい。知ってますよね?…マウンテリバーが魔族に襲撃を受けて、建物だけほぼ壊滅したって話しですけど…」
婦人たちは「あぁ…あれか」という表情で頷く。
「えぇ…何でも一部の建物を除いてほぼ全滅したとか…。人的被害は少なかったと聞いてますが…」
ミランダ婦人は割と正確な情報を得ているらしい…だが、亡くなってないのは人権を持つ人間に限れば、だが。貴族たちが所持している奴隷たちは外で人目に晒すことはなく屋内で労働をさせるか、鑑賞の為に飼っている…ということは避難することができない。要は急な襲撃で家屋に被害があれば、彼・彼女らは家と運命を共にすることとなり…まぁそういう訳だ。襲撃してきた魔物は人も食べるという…恐らく貴族たちが口外しなければ居なかったこととなり、被害情報も外には出ない…ということとなるのだ。
「まぁ…そうですね」
ザックは余計なことは口に出しても碌なこととならない…という事実は身に染みて理解していた。だから
「…」
最期を看取ることは叶わなかったが…ザックは今更ながら黙祷を捧げていた。
『もう、遅過ぎるよ…』
と、泣き笑いしながら彼女がそう囁いたような気がしたが、まぁ気のせいだろう…と思っていると、何となくだが怒られたような気がした。うん、恐らく気のせいだろう…
・
・
「マスター!」
どばんっ!
…と、玄関のドアが吹き飛んで開く…というか蹴り開けられていた。
「あ…無事だった玄関のドアが…」
ぐわんぐわん…
と回りながら滑るドア。そして玄関の奥から現れる血みどろのメイドさん。非常にシュール、且つ、怖いです…
「ご無事で…」
「いや、まぁ、転移したからね」
再会した2人のそれをドラマチックに盛り上げたいのだろうか?…だが、駆けあって抱き合いたいのだろうが…それやるとザックが同様に血みどろになる。ので、それに気付いたレムは動き出そうとして躊躇して立ち止まるレム。
「はぁ…しょうがないな…
幸い…といっていいかわからないが、領主の館に火災が発生して館付きの自動消火装置が働いたか…若しくは、私兵か使用人かわからないが消火の為に水が使われ始めている。
「はぁ…
目を瞑ったレムが気持ちいいと恍惚とした表情でいる。うん、その、服は厚めだが…濡れて体のラインがモロに出てしまっていることに気付いた僕は、早く
・
・
「…で、中の様子は?」
「クリア…あ、いえ。掃討完了しています」
思わず敬礼してから違うと気付き、改めてカーテシーで報告するレム。うん、まぁ…それはどっちでもいいから。
「賊の人数は?」
ひのふのと指折り数えるレム。そして指が止まり、暫く考え込み…
「恐らく、19人だと思いますが…」
「…が?」
照れ隠しなのか顔をやや赤らめて俯き、
「ぶっ飛ばしたら壁が崩れ落ちちゃって…巻き込まれた賊までは数えてないので…すいません」
「あ~…」
仕方なく探知魔法を発動させて館の中を見てみる。まだそれ程時間が経過してないから…体温に近い、仄かに暖かい物体を探せば凡その人数はわかるだろう。
「ふむ…22人だな。武器を持ってない者もいるが…これは館の使用人か?」
それとは別に、やや狭い部屋にまとまっている生きている人…だとは思うが。それが10人程。レムが暴れた影響か、館が爆破された影響か…ドアが瓦礫か何かで埋まっているのか出られないようだ…いや待てよ?…あそこの部屋って確か…
「あ~…確か、最初に閉じ込められた軟禁用の牢部屋だっけ?…そこに使用人たちが閉じ込められてるようだな」
そこまでいうと、「あぁ、あそこね」と気付き私兵に助け出すように指示を出すミランダ婦人だが…
「な…なんですって?…マスターを…閉じ込めた?」
と、地獄の底から響くような低温…否、低音を口から響かせるレム。わーお♪…地獄の蓋が開いちゃったような危険値がガンガン上がってますよ?
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ヤンデレ?…いや、まぁ、時々そゆ雰囲気はありましたね、レムさん…(普段は隠しデレてんので闇の部分を見過ごしそうですが(苦笑))
備考:トラブルメーカースキルが発動しっぱなしのザックでしたマル(まてぇっ!)
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