42 その3 ~予兆…? その3~
外壁の外の防備設備設置を卒なくこなしているとシャーリーに「また魔力総量が増えたのか?」と突っ込まれて溜息を吐かれる。レムには「無茶振りしてきて何を考えているんだかっ!?」とぷりぷり怒っていた。だが、次の言葉に2人は固まるのだった…。
ザック「あ~…それ。僕から上申したんだ。ダメっていわれるかと思ったんだけど、通って良かったよ」
…とw(無給かどうかは未確認)
その後、ゴーレムたちの動力源である魔力カプセルの話に移るが、取り敢えず差し入れとして1人辺り1年分のカプセルを創造してナルに渡す。彼女の部下たちと管轄の防衛・警護ゴーレムが一番人数が多い為だ。
そして、その現場に現れる正体不明(笑)の魔術師風のおっさん…いや、正体は王都から来た魔術師ではあるが名前は知らん。だが、そのおっさんはこうのたまっていた…
おっさん魔術師「わしのゴーレムをそそのかして何をしているっ!?」
…と。おいおいおい、誰が誰のゴーレムだってぇっ!?(見た目は疲れた感じのザックであったがw)
━━━━━━━━━━━━━━━
- 魔術師のおっさん、ゴーレム略奪未遂を犯す -
「我のゴーレムをそそのかすとは…どんな卑怯な手を使ったの知らんが…返して貰おうか?」
「は…?」
(((また来たか…しつっこいっての…)))
謎の胡散臭い魔術師風のおっさんがそうのたまい、ザックが訳がわからんと呆けた声を出し、ゴーレム娘たちはストーカーがまた来たと舌打ちしたり睨んだり誰かの陰に隠れたりと忙しそうだw
「はぁ…何度も申し上げた通り、わたくしたちは貴方のモノではありません!…此処におわす「ザック」様の…だん…マスターの創造物であり、わたくしたちの全てはマスターのモノなのです!」
ナルの恥ずかしい宣言と同時に全員が「うんうん」と頷いている。
「はっ…またそれか。恥ずかしがりおって…まぁいい。さ、帰るから支度を手伝いなさい!」
手近なゴーレム娘(ナル部下の1人)を掴んで引き摺って行こうとするおっさん。
「いやっ!…離して下さい!!」
…と叫ぶが、見た目は兎も角…一般人と同程度の力で引っ張られている為…筋力が制限されて町娘程度の抗う力しか出なく、ずるずると引っ張られ始める。
(ありゃ…不味いんじゃないか?あれ…)
魔術師風の風体ということは一般人よりは権限というか権力はあるんだろうし、それに比べてゴーレムの権力は一般人と同等か…下手したら奴隷並みかも知れない。いや、この町には奴隷は殆ど居ないが居ない訳ではない(購入できる程の金持ちである貴族は領主の元に保護されているし、仕えていた奴隷たちは例の侵略で殆どが死滅しただろう…北の屋敷で働いていた人たちを除いて…)
「こらぁっ!…その手を放しなさい!!」
ナルが激高してずかずかと歩み寄る。ザックは(ここで手を上げたら不味いよな…)と思い、自然に自らに
「はい、申し訳ないですが…誘拐犯として現行犯逮捕となっちゃいますが…宜しいでしょうか?」
「なっ!?…我を誰だと思っている!!」
(いや知らないですよ…誰ですか?)
とザックは思いつつ、そのおっさんの顔を見ると…何処かで見覚えがあるような無いような…はて?
(そーいや…名前は忘れたけど王都の子爵のおっさんだっけか…)
以前、ゴーレム馬を買い取ろうとのたまうおっさんが居たと聞いた覚えがある。その時はお世話になってた人の使用人を殴ったと聞いたが…
(今度は略奪行為に走るのかぁ…。やだなぁ…権力に溺れてるおっさんて)
はぁ…と盛大に溜息を吐いたザックは、(名前は聞いた覚えがなかったよなぁ…)と、名乗るのを待つ。
・
・
結局、名乗らなかったおっさんは怒髪天を突いた状態で…ゴーレム娘の手を引いて連れ去ろうとずかずかと歩き出す。呆気に取られていたナルたちだったが、
「ちょちょっと!…引き止めなさい、お前たち!」
と、動き出す防衛・警備ゴーレムたち。
ナル部下たちは少女型だが、防衛・警備ゴーレムは無性別で性別を示す部位が無い。その思考コアも汎用品で統括体であるナルが敵性判断をすれば…それは脅威と見做して人であれば死なない程度には力を出して確保、或いは撃退することが可能となっている。無論、外敵である魔物などが相手なら総力を挙げて撃退、若しくは討伐が可能だ(但し、力及ばない強力な個体であれば、撤退は可能ならすることが許可されている)
「お待ちください。魔術師殿」
ナル部下の反対側の腕を持ち、声を掛ける警備ゴーレム。困惑顔で持てる力を発揮できずに引き摺られているナル部下ゴーレムが助かった!…という顔でこちらを見る。
「なんじゃ、お前には用は無いぞ?」
魔術師風のおっさん…略奪者が振り返って俺様風に上から目線で警備ゴーレムを低い怒声を浴びせる。だが、人間ではない警備ゴーレムに効く訳もない。平然とした声色で彼?彼女?はこう続ける。
「ザック様所有のゴーレムを連れ去ることは法に違反しています。どうかその手を放して下さい」
と。
「は?…我のゴーレムをどうこうしようが関係が無かろうが?」
隷属魔法を掛けて…すっかり掛かっていると思い込んでいるおっさんには馬の耳に念仏。右から左に忠告は素通りだ。再び歩き出す略奪者に腕を掴まれて剥がせない現実にイラつくナル部下。幾ら力が出ないからといって、目を突けば離すんじゃないか?…と、人としてやっちゃいけない急所突きを考え始めだす(その身はゴーレムだがw)
(これは…不味いですね)
警備ゴーレムはナル部下の表情から次に何をしでかすか予想が立ち、犯罪者ではあるが流石に失明はやり過ぎだろうと焦り出す。
「貴方の身に危害が迫っています。その手を離した方が無難だと申し上げます…」
「…うるさい!…ぐちゃぐちゃ抜かすと…お前も隷属するか?おぉっ!?」
そのやり取りを最初から見聞きしていた全員はこう思っていた…
(((自ら罪をバラシてどーすんだ…)))
何か証拠として役に立つかと映像音声記録魔導具を用意しておいた警備ゴーレム。おっさんが姿を現した瞬間から記録を撮っていたのだが、思わず腰砕けになりそうになったのは内緒だw(こう…力が抜けてガクッとね…(苦笑))
そして振り向き際に隷属魔法を目から発して…警告していた警備ゴーレムに向けて発動していたのだが、その隙を狙ってナル部下がぐるん!と体を回して…その目に指をチョキにしてぶす!っと…
「ぎゃああああっ!?」
すぽんっ!…とすぐ引き抜いたのだが、目を抑えたおっさんの手の隙間から血がだらだらと…
「「「あ…やっちゃった…」」」
呆気に取られたゴーレム娘一同と、冷静に犯人確保に走る防衛・警備ゴーレム一同と、
「あ~…しょ~がね~なぁ~…」
と、ストレージからポーションを取り出して、傍に居た警備ゴーレム手渡す。
「…マスター、これは?」
「あのおっさんに使ってあげて?…目に直接掛けた方が効きはいいと思うよ?」
(すげー痛いだろうけどね?w)
「わかりました。有難う御座います!」
受け取った警備ゴーレムは仲間に話してから痛がるおっさんの目蓋を無理に開いてばしゃっ!と掛けた。
「ぎゃああああああああああっっっ!!!???」
指ぶす!をされた時より更に大きい悲鳴が上がり…周囲から人が集まって来たのは言わずもながだろう…(苦笑)
※正確には、この犯罪者なおっさん子爵は「第2章_成り上がる探索者? マウンテリバーのダンジョン その3」に出て来ますw
- どっちのギルドに連行?…いや普通は町の防衛機構の衛兵詰め所でしょ! -
「はぁ…魔族の襲撃が一段落したと思ったら…厄介事が後を絶たんな…」
衛兵詰め所の衛兵長(なりたて)が溜息を吐く。先代の衛兵長が殉職した後に全員の支持というなの押し付けで出世した新衛兵長だ。まぁ…単に息子だからという話でもあるようだが(苦笑)
「…で?このおっさん、どうしますか?」
「そら…調書を取ってから目撃者の証言を集めて…ま、最終的にはマウンテリバーに迷惑を掛けたってことには変わらんからな。出身地の王都に送り返して終わりだろ?」
「でも、このおっさ…貴族は子爵だそうですよ?」
「また面倒な…一応領主にも話しは通しておけ」
「はっ!」
捕縛され、目に包帯ぐるぐるな自称子爵の魔術師なる中年男は自由な部分が足だけという状態で、魔術師ということから口に猿ぐつわをして、魔法が使えないように首輪式の魔力抑制魔導具を付けられている。無詠唱で魔法を行使されては堪らない…ということで、精神集中ができないように魔力が僅かでも高まったり集中し始めると激痛が走るようになってるとか…その痛みは大の大人が痛みで倒れて藻掻く程だという…恐ろしい。
「一体何を仕出かしたんだ…この男は」
巻かれた包帯からは血が滲み、さっきまで出血していたかのような汚れ具合だ。逃げ出さないようにと簀巻きにしてるのはわかる。魔法を使って暴れ出さないように魔封じの首輪を付けているのもわかるが…
「すっかり…大人しくしているな。確か、こいつぁ…町に来た時は横暴な小生意気な貴族って感じだったが…」
その時は周囲に威張り散らしていたと記憶していた。が、今この時だけかも知れないが…借りて来た猫のように大人しいその姿からは想像が付かない。
「まぁいい…大人しい分には、な。連れてけ」
「はっ!」
何人かの衛兵に担がれた彼は…流石に足が覚束ない為だが…素直に担がれて衛兵詰め所に護送?…されていった。
「さて…状況を説明してくれますか?…元辺境伯殿?」
「ははは…やっぱり、しないと、ダメ?」
「ダメ、です」
「はぁ~…」
仕方ないと、それまで押し黙っていたザックは。従者ゴーレムたちを引き連れて(仕事がある防衛・警備ゴーレムとナル部下ゴーレムたちは、それぞれ持ち場に散って行ったが…当事者のナル部下を除いて)ぞろぞろと付いて行く…あの現場に居た一部だが。衛兵の詰め所の相談室と呼ばれる部屋に入るか疑問ではあるが…
- 衛兵詰め所 -
「…成程」
一応、ナルたちに聞いた内容を繋げて、説明し易い形にしてから説明した。無論、それだけでは足りない部分もあるので補足情報として、ナル・レム・シャーリーが説明を加えてだが。そちらは冗長な部分がある為、記録係が数人で読み合わせて不確かな部分や不明な部分が無いか検証し、更に追加して質問したりしてたので随分と時間は掛かったようだが…取り敢えずは不備な部分や不確かな部分は解消されたと判断していいようだ(その表情を鑑みるには…)
「つまり、あのおやぢがザックくんのゴーレムをかどかわして連れ去ろうとした…という判断でいいのかな?」
「ざっくばらんにいえば…そうなりますね」
『マスターが自分の名前を引っ掛けて駄洒落いってる!』
『しっ!…笑うの我慢してるんだからいわない!』
『楽しそうだな、おまいら…』
念話で漏れて…いや、そのまんま伝わってくる会話に少しだけイラ立つが…後で
「つまり、所有物…見た目には自我があるようなので公的には奴隷扱いとなるのか?…いや、失礼」
「あ、いえ…」
「我が国には基本「ゴーレム」は存在してないからな。表にこそ出してないが所有している者も居る訳だが…」
恐らく他国で買うか研究者に創って貰って所持しているって所だろう。王都だろうと幾らでも抜け道はありそうだなと嘆息する。
そして身を飾る装飾品としかゴーレムを見ない者なら…物珍しいゴーレムや身目麗しいゴーレムが居れば…まぁ、ナル部下は髪型や化粧を施して、最初の統一規格品といった具合の小奇麗な存在から…それぞれが綺麗に着飾ったり可愛らしさを演出している者が多いからな…欲しくなるのも無理は無いかも知れない。
「はぁ…まぁ…でも、ゴーレムと見抜いた上でアレは無いですよね…」
「隷属魔法、だな?」
「えぇ…」
ゴーレムを制作して最初に掛ける魔法でもあるという。幾ら創造主とはいえ、使用する素材に依ってはいきなり敵対する場合があると聞いている。その為に最初に制御装置の代わりに隷属魔法で制御するという…
「うむ。既に他者の所有物を奪う行為だからな。ま…他者に奪われぬように対策を施していないアホの弁護をするつもりはないが」
「あははは…」
使用された隷属魔法は自我の薄いゴーレム、意志薄弱状態の人間、そもそも本能が強い動物などを使役できるレベルのもので、普通に意思がある人間や支配され使役されているゴーレム、敵意が強く働いている動物には効かない程に弱いものだった。これではザックの支配下にあるゴーレムどころか強く泣いている赤ん坊にすら掛かるかは怪しい所だろう。
「まぁ…大人しい馬とか疲れ切っている人には効くかもですが…うちのゴーレムたちには効きませんね、
「そうか…さて、王都でどんな処断がされるかは不明だが…」
「ま、
「いいのか?…そんな処置で」
「はい」
そして、かの子爵は気分転換に来ていたマウンテリバーで罪を重ね、その爵位だけは剥奪されなかったが…マウンテリバーには近付くなという行動範囲を限定される刑に処されたのだった…
━━━━━━━━━━━━━━━
まさかの登場!ゴーレム馬破壊魔子爵w…何となくゴーレムに執着する登場人物が居たよなぁ…と思って検索したら居たっていうw(まさか気分転換にまた来て罪を重ねるとは思ってもみなかった!(ぅぉぃっ!w)
備考:特に…いや、ゴーレムの天敵?を撃退(ちょぉっ!w)
所属ギルド:
無所属
ストレージ内のお金:
金貨277枚、銀貨1020枚、銅貨781枚
財布内のお金:
金貨10枚
住所:
マウンテリバー南東角に一軒家(という体の小屋住まい+土地所有)
本日の収穫:
外壁の外の防備用施設の設置費用として日給金貨1枚を月末に支給される予定
保護者:
シャーリー(探索者ギルド所属・ランクD)
レム (探索者ギルド所属・ランクC)
ナル+部下(探索者ギルド所属・ランクC)※全員合わせて。ナル単体や部下単体ではD相当
マロン (両ギルド所属・ランクC)
モンブラン(冒険者ギルド所属・ランクC)
他:
ダークエルフたち(ザンガ、サフラン)ダークエルフ陣営所属…ノースリバーサイドで活動中
防衛ゴーレム8体(2体は破損して土塊状態になったので埋葬された)
警護ゴーレム4体(6体は(以下同上))
防衛・警護ゴーレムたちはマウンテリバーサイドで警備活動に従事(最後の命令を守ってるだけ※)
※マウンテリバーのリーダーの命令を聞いてマウンテリバーサイドの平和維持に努めろ…という内容。ゴーレム製作者が誰かはわかってないが、利用できるのなら…ということで領主以下は両ゴーレムを利用しているとのこと(ザックが製作者だとは
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