再侵攻
40 その1 ~予兆…? その1~
地位も屋敷も使用人(奴隷)も失ったが、部下…従者ゴーレムたちは奪えなかったようで、ザックの元に残ってくれた。そして今までの経緯を聞いたのだが…まさか嘘を付いてまでザックの看護をするとは思わなかった(通常、ゴーレムは嘘を付くことはできない。そこまで高度な精神構造はもってないらしい…よって、本当のことだろうと領主やギルド上層部の者は考えたのだろう)
そして例の事件から1年…ザックが屋敷から放逐されてから半年後が現時点。どうやら世間は平和に戻ったようだ…だがザックはこう考える。
ザック「力を蓄えて再侵攻にはいいタイミングだよな?」
…と。
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- 現状把握した翌日… -
「はぁ…まさか1年寝てたとか…あそこの世界と下界じゃ時間の流れが違うのかね?」
若しくは喪われた両腕の再生や毒された両目の再生に時間が掛かっただけかも知れない。それを考えると、守護神である生活魔法の神、アムさまに頭が上がらない…。それに「使徒」と呼んでいた所から、守護神というよりは主神であるからして…そもそも上がる頭があるかも怪しいが…
「それはそれとして、1年か…本当に諦めた?…そんなことはないだろうな…」
最後に聞いた台詞はこうだ。
〈興が削がれた〉
単にやる気が失せただけだ…と思う。もし、やる気が失せてなかったら?…今頃はあの大悪魔に蹂躙されたマウンテリバーしか残されてなかっただろう。1年も経過すれば北の最前線たるマウンテリバーは地上の前線基地と化し、此処を拠点として地上世界に侵攻作戦が展開され…
「はぁ…」
現実にはそんなことにはなってない…。だけど、そうなる可能性は十分あった訳で…
「マスター、何を唸ってるんですか?」
テーブルに両膝を立てて悩んでいると、唐突に後ろから声を掛けられる。それだけではない…両手を肩に添えられ…ついでに両腕がぴったりと背中に付き、なんてことだろう…体もぴったりと…その…豊かな双丘も…いや落ち着け!…相手は従者ゴーレムだ!!…胸なんて幾らでも盛れるし体は人工物だ!!!…なんてこんらんの状態異常に陥っていると、
「いいお天気ですし、散歩にでも出ませんか?」
…と。いや、まぁ…確かにいい天気だし…。そしてザックは、
「わ、わかった。だから、背中から
と、何ともはやな返事をして…早くいえばヒヨったのだったw
・
・
「ん~…いいお天気♪」
とてとてと歩きつつ、片手は恋人繋ぎして歩く。いや…別に僕から繋いだ訳じゃなくて…気付いたらそうなってただけだ。不本意ながら…
「見た感じ、殆ど復興してるようだな…」
建てられたばかりだからまだ小奇麗ではあるが、いずれ時間が経てば以前のようになるだろう街並み。尤も、住居区画は整然としていて増築とかしなければこのままになるかも知れないが…どの道
「そうですね…再侵攻を受けた時の為に、建て直し前提で木造建築なんですけどねっ♪」
以前僕が伝えたまんまを受け売りと気付いてないのか…レムが得意げに説明してくれる…まぁ可愛いのでスルーしているんだけど…
「…住人の目が、いっちゃなんだけど…」
こちらを見ると、まるで毛嫌いしてるかのような…気付くと建物の中に引っ込むか、来た道を戻るかするして姿を消している。まるで…
「本当、酷いですよね!…魔族を撃退した立役者相手に…私、いって来ましょうか?」
それ、相手が逝っちゃう奴だよね?…やめてあげてください。
「レムさん、一般人相手だとワンパンですからやめてあげてください」
つい、心の声が出ちゃうザック。但し、本当のことしかいってないんだけど…
「酷いです!マスター、女の子相手に酷いDEATHよ!?」
いや女の子って、ゴーレムでしょ、あんた…とは本当のことでもいえない辺り、精神的に女の子と同等存在となっているレムなので突っ込めないのだった…
・
・
そんなこんなで、マウンテリバーサイドを巡回ついでにぐるぐる巡り歩いていた2人だが、外壁の外側が気になったので南門から出る。レムは顔パスで門を通れるので楽なもんだった(駄洒落ではない)
「取り敢えず探知…」
門番の横で外壁の様子を見る為に探知魔法を発動する…が、流石に被害が無かった部分だけあって、1年の経年劣化以外には見る所は無かった。
「うん…被害が出てなかったからか、特に問題は無いね」
「わかりました。では、次に行きましょう!」
レムは門番に軽くお辞儀をしてから歩き出し、ザックは握られている手を引かれて歩き出す。門番は仲の良い姉弟を見るような微笑ましい表情をしているが…
「なぁ、あれって北の屋敷の…」
反対側の門番が近寄って来て話し出すと、
「しっ…それは口に出すな。お偉方は無かったことにしたいってな…わかるだろ?」
「あ、あぁ…」
どうやら、今のご時世ではタブー視されているらしい。
「このマウンテリバーの救世主だがな…上に睨まれたら生きていけないんだ」
悔しそうにいう門番に、最初に話しかけた門番は渋々持ち場に戻るしかなかった。どうやら色々と面倒なことになってるらしいなと…こっそり聞いていたザックは溜息を吐かざるを得なかった…(風属性魔法で声を拾ってたのだったw)
・
・
「あ~…やっぱり」
随分と歩いた所…角を曲がって北に近い部分…要は1年前に穴を開けられた部分だ。補修はされているが強度的には全然な部分がある。上空に障壁も無い為、もし空を飛ぶ魔物が侵攻してくれば容易に侵入を許してしまうだろう。
「ひょっとして魔方陣扱える人って居ないの?」
壁を確かめながらレムに問うと、
「居ない訳じゃないみたいですが…宮廷魔術師とか位の高い人が殆どみたいで、その…」
ああ…と納得顔のザック。
「つまり、金と時間が掛かる訳か…」
「はい」
そんなん、人類版図の縮小か消滅の危機の前には金とか時間とか考える以前の問題だと思うが…そうは思ってないのが現実なんだろう。王族とかにはそんな重要な事柄が伝わってないんだろうか?…たった51年前のことなんだから、肌に染みてる筈なのに…と思ったのだが、
「どうやら当時のことは、残された伝記以上のことは伝わってないらしくて…」
レムたちも気になったようで調べてみたが…当の伝記も王城に運ばれてしまい、読んだことのある人が覚えている以上は知らない…らしい。当時、防衛した者は全て殉職していて詳しく知る者は居ないということだ。伝記を書いた者は見ていた範囲で知る全てを書いたということだが…直接していた訳でもないので推測で書いた部分も多いのだろう…。それを読んで記憶している部分を
「…で、その
見た目には綺麗に修繕されてる壁を改めてバラして再構成しつつ外壁を修繕開始するザック。レムはその手腕を見ながら伝記の内容を思い出しながら話し出す…
◎半世紀もの過去、魔族と魔物の大侵攻があった
◎壁の外で迎え撃った守護たちはその身を捧げ、外敵と相打ちとなる
◎総大将である魔族は「カ・レン」と名乗っていた
◎相打ちとなったが、我々は勝ったのだ…北はこうして護られたのだった…
「か…れん?」
「はい。確かにそう書いてあったそうです」
「生きてるじゃん…」
「そう…ですよね」
それに魔族ではなく大悪魔だ。悪魔は肉体を殺しても存続する。と聞いた覚えがある…根源たる魂そのものを討ち滅ぼさないと斃したことにはならないのだと…
「そんなん、どうやって斃せと…」
恐らく宮廷魔術師とか教会の大神官レベルじゃないと相手にならないんじゃないだろうか?
「…そもそも、現代の人間に大悪魔と戦えるんだろうか?」
話が大きくなり過ぎて来た…と、ザックは頭を抱えそうになったが、今は壁の修繕中なので控えることにしたのだった…他にも色々とやることはある…
「はぁ…魔方陣の修復…いや、これって魔方陣のマの字も残ってないよな…」
仕方なく、隣の残っている魔方陣を見てから真似て復旧する方向で作業を再開するザックであった…
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「いやいや、魔方陣って普通の人間には魔力もさることながら、「お手本があっても真似るだけ」でも至難の業ですぜ!?」…と、後日…冒険者ギルドの魔術指南者に驚かれたとかなんとか(ザック程ではないが魔力枯渇症で数箇月寝込んでいたそうな)
備考:外壁の修繕と防御魔方陣修繕の費用を(勝手にやったことではあるが)両ギルドから領主に「流石にタダでは…」ということで、金貨10枚程を臨時収入!
所属ギルド:
無所属
ストレージ内のお金:
金貨277枚、銀貨1020枚、銅貨781枚
財布内のお金:
金貨10枚
住所:
マウンテリバー南東角に一軒家(という体の小屋住まい+土地所有)
本日の収穫:
外壁修繕+防御魔方陣の修繕費として金貨10枚(本来なら金貨100枚でも足りないが財政的にこれが限度といわれた)
保護者:
シャーリー(探索者ギルド所属・ランクD)
レム (探索者ギルド所属・ランクC)
ナル+部下(探索者ギルド所属・ランクC)※全員合わせて。ナル単体や部下単体ではD相当
マロン (両ギルド所属・ランクC)
モンブラン(冒険者ギルド所属・ランクC)
他:
ダークエルフたち(ザンガ、サフラン)ダークエルフ陣営所属…ノースリバーサイドで活動中
防衛ゴーレム8体(2体は破損して土塊状態になったので埋葬された)
警護ゴーレム4体(6体は(以下同上))
防衛・警護ゴーレムたちはマウンテリバーサイドで警備活動に従事(最後の命令を守ってるだけ※)
※マウンテリバーのリーダーの命令を聞いてマウンテリバーサイドの平和維持に努めろ…という内容。ゴーレム製作者が誰かはわかってないが、利用できるのなら…ということで領主以下は両ゴーレムを利用しているとのこと(ザックが製作者だとは
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