34 その17 ~マウンテリバー、魔族の侵攻を受ける!…その17~

生活魔法の神が守護神という驚愕の事実を軽く打ち明けるザック。ザックとしては見守られていると打ち明けたに過ぎないが、周囲の人間はそうは取らなかったようで…

それは兎も角、第3波に備える為の対策会議を開いたのだが有意義な結果は得られなかった。結果として警備をしっかりするという在り来たりな結論しか出なかったが、やっておいて損は無いだろうと警備をゴーレムたちに改めて任せることとなった(案内係ゴーレム29体+統括ゴーレム(ナル)1体→警備ゴーレム29体+ナル+警備ゴーレム10体(追加10体)+防衛ゴーレム10体+モンブラン(マロンクラスの戦闘用ゴーレム)の計51体体制に!…マロンは獣人なのでゴーレムではありませんよ?w)

そしてとある夜更けにそれは来た…襲われたのは警らで出ていた人間の冒険者と警備ゴーレムのペアだ。冒険者は絶命し、相方の警備ゴーレムは辛うじて攻撃を回避した。だが、彼女はしっかりとお役目を果たしていた。襲って来た存在ものの魔紋を記録し、モンブランに伝えることに成功していた。相手が何処から侵入して来たのか等、疑問は尽きないが…これで反撃に出られる…と彼女は安堵していた。相方冒険者の犠牲の上での収穫ではあったが…

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- 追撃戦:マロンサイド -


「敵対存在の魔紋来たぞ~っ!!」


「登録完了!全員緊急出動!!」


「「「応!!」」」


待機していたマロン、モンブラン、第2波時に創造した防衛ゴーレムの強化版部隊、総勢12名がマウンテリバーサイドの待機所から次々と出動する(警備ゴーレムの当直室とはまた別の建物)


彼女らは(モンブランは躯体は男だけど精神が女性なので便宜上…(苦笑))特殊な装備に身を包み、地上を風属性魔法「そよ風」のアレンジを施した「ホバー」で浮き上がり、後方にも風を噴出させて滑るようにけていた…


「ちっ…こいつぁ操作が難しいなっ!?」


マロンがモンブランの横でぶつくさと文句を垂れ流している。


「だからお姉さま。私が背負うって…「うるせえ!…んなの、こっずかしいだろが…」」


(確かに締まらないかも?)


…とまぁ、傍から見れば仲良く姉妹漫才を展開してるようにしか見えないマロン・モンブランだったが、笑いを噛み殺しながら追随する防衛ゴーレムの彼女たちの苦労を、2人は知ることはなかったw



『目標、前方100m…いえ、左に逸れて…っ!?…目標、喪失ロスト!!』


『ちぃっ…逃がしたk…『全員止まれっ!!』』


報告に臍を噛むようにしていたマロンだが、すぐさまモンブランとハモりながら叫ぶ。


ざああああっっっ!!!


逆噴射と同時に地面にかかとを押し付けながら急制動を掛ける一行。辛うじて、マロンを庇いながらモンブランの左足が崖の端で小石を崖下に零しながら急制動に成功して停止していた…


「っ!?…はぁ…、モンブラン、助かった…」


「いえいえ、お姉さまが落ちなくて良かったですよ?」


そんな掛け合いをしている2人を溜息を吐きながら防衛ゴーレムたちが崖の端から引っ張り上げる。斜めになっているこの場にいつまでも座り込んでいれば、いつ何時なんどき何らかの拍子に滑り落ちないとも限らないからだが…


〈くっくっくっ…何とも運のいい…だが、そこまでだ〉


いきなり膨れ上がる魔力。振り返れば既に大きな魔力の光を孕んでいた…


「「全員、全力防御!!」」


綺麗にハモったマロンとモンブラン。そしてすぐさま11人のゴーレムたちが手にしていた盾を前に構え、内蔵されている魔方陣を起動する。11枚の防御魔方陣が多重起動し…


ずごおっ………


もうもうと土煙が立ち上がり、魔力光がぶち当たった地面は酷く抉れていた。そして…


「てめえっ!?」


火傷を負ったマロンが飛び出す!


〈ふっ…死に損なったか、人間!?〉


放たれる声は何等かのフィルターが掛かったかのように低く震えていたが、上から目線でマロンを蔑んでいる様子がわかる。


があんっ!


双刀を振り抜いて叩きつけるように体ごとマロンがぶつかって行った。が、


〈ふんっ!〉


片腕でそのぶつかりを弾くとマロンが遥か後方へと砲弾の如く吹っ飛んで行き…叩きつけられた!


「げはぁっ…!」


口から血の塊を吐き出し、マロンが倒れ伏す。


「お姉さま!?」


モンブランが震えながら後ろを振り向きながら絶叫する。他の防衛ゴーレムたちは、殆ど動けない状態で目だけが…視線だけが辛うじて動くのみだ。


〈ふっ…。他愛もない…〉


魔力が腕に集まっていく…初撃は両腕で放たれた魔力弾だが、瀕死のマロンには片腕で十分だというように…


『みんな…』


『『『…了解』』』


モンブランの懇願するような念話に防衛ゴーレムたちが頷く。いや、体は…頭は動いてはいなかったが。


〈し、ね…〉


一際強く輝いた魔力光が放たれる。防衛ゴーレムたちは最期の力を振り絞って持っている盾を投げる…マロンに向かって。


〈なに!?〉


盾たちは融合し、巨大な盾と化してマロンの前の地面に突き刺さり…敵の放った魔力弾を弾いて…砕け散った。最期の手段でもあり、最強度の防御力と攻撃反射の能力を持つが、攻撃を防ぎ切った後に砕けてしまう諸刃の盾でもある(刃じゃないのかって?…1度しか防げないので間違いでもないと思う)


〈おのれ!…力の無駄使いさせおって…〉


収束時間の短い魔力弾を連射して防衛ゴーレムたちに撃ち込む敵。だが、それですら普通の人間にとっては致命傷足りえる攻撃力を誇っていた…


「ぐはっ!?」


「くぅ…がはっ」


「お、お姉さま…!」


既に自由に動かない躯体となっていたモンブランと防衛ゴーレムたちは動かない的と化しており、憂さ晴らしの対象として刻む程度の魔力弾を放って苦しむ様を楽しんでいた。


〈くははっ!…邪魔をしてくれた罰だ…存分に苦しむがいい!〉


どがん、ばがんと音だけは派手だが殺傷力に欠ける魔力弾の音でマロンが気絶から覚める。


「う…ここ…は…」


目蓋を薄く開けると…そこには阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されていた。片腕片足が欠けた者。既に首がへし折れて人間なら絶命してもおかしくない者(思考補助と体制御を司る頭部が無いので体が思うように動かせないだけ)…中にはコアが存在する胸部を貫かれてゴーレム生を終息させていた者も居る。


「モンブラン!?」


「お姉さま!…いえ、早く逃げて下さい!」


〈ほほぉ…まだ生きていたか〉


輪郭がぼやけてその存在が朧気おぼろげな敵は…はっきりしない顔の口をニヤ…と口角を歪ませてわらう。そして嘲笑という表現が相応しい笑みに変化していく…


「なっ!?」


防衛ゴーレムたちが不意に浮く。そして纏めてマロンの方へと吹き飛ばされる。


〈仲が良いことはいいことだ…せめてもの慈悲だ。仲良く、死ね〉


最初の魔力光より遥かに大きな光が溢れ、次の瞬間には敵の両腕から放たれていた。


「ぐっ!」


「ぐはぁっ!」


「痛てえっ!」


どさどさとマロンの元へと防衛ゴーレムたちが、モンブランが落ちて来る。そして…これ以上無いタイミングで魔力弾が着弾する!


「お姉さまっ!」


「モンブラン!」


「「「がああああああ………!」」」


まるで原爆の爆心地のような熱量が彼女らを襲い、遠くから見ていればキノコ雲が立ち昇っていただろう…彼女たちの断末魔は爆音で掻き消され、その声を聞く者は居なかった…



- ザック邸:ザックサイド -


「む?…出たのか」


マロンの強過ぎる念話の雑音がザックに届く。


「相変わらず目茶苦茶な出力だなぁ…」


本人が発信してるつもりが無くとも、直通してるザックには聴こえてしまうことがある。大声で喋ってると、口を触れてない糸電話に伝え聞こえるようなものだろうか?(例えがわかり難いw)


「まぁ、マロンとゴーレムたちだけじゃひょっとすると対処しきれないかも?」


という訳で、ザックも装備を整えて出撃準備を開始する。今回の相手はひょっとすると霊的な強敵…いや駄洒落ではなく…なので、魔術的な攻撃が強いかも知れない…


「一応、与えてる盾にも魔法防御は強めにしてるけど、最終手段は一発芸だからなぁ…」


通常防御では防ぎ切れない場合は残存魔力を放出した最大防御陣。これは内蔵した魔力貯蔵魔石から全魔力放出して、1枚の盾では防ぎ切れないと判断すれば2枚。2枚でもダメなら3枚と、その攻撃威力に合わせて合体させて防御魔方陣を強化できる。最大10枚の盾で構成できてそれでも防げない攻撃ならマウンテリバーは滅びるしかないだろう!…尤も、防ぎ切った後はその余りにも高い出力のせいで盾は崩壊してしまう為、諸刃の剣もろは つるぎではなく、諸刃の盾と呼ばれる所以ゆえんだが…そうなることは滅多に無いだろうと思っている。


「よし。じゃあ僕はこれから出るから、戸締りはしっかりしておいてね?」


「は…ご武運を」


執事のコナンに見送られながら館を出る。途端、マウンテリバーの方から轟音と光が見えた。


(やべ…急がないといけないかな)


転移で移動したい所だけど、転移先のポイントとなる魔道具も破壊されていて転移魔法を行使してもマウンテリバーへは転移できないことは判明している。仕方なしに身体強化フィジカルブーストを行使し走り出すザック。レムとシャーリーを連れて行きたかったが2人は別件で此処には居ない。ノースリバーサイドをこの隙に襲ってくるかも知れない…ということで、巡回にまわって貰っているのだ。


(せめてダークエルフの2人が居たら良かったんだけどな…)


ザンガとサフランの両名だ。だが、2人も此処には居ない。魔界に潜入して貰い、他のダークエルフ部族を探し出して避難して貰おうという「ジェンドゥ=ダ=クェルフ・第13代皇帝」とその娘「ジェリコ=ダ=クェルフ皇女こうじょ」両名の嘆願であった。この忙しい時に戦力を割くのは悪手なのだが、2人ともダークエルフの見た目で皇帝の部下…という認識なので下手に拒絶することもできず、何より皇帝の直属の部下たちの里の者たちを救った実績がある為に、「是非派遣を!」…という訳である。


そのダークエルフたちであるが、現在の居留地の防衛の為に多忙でノースリバーサイドの巡回強化にも協力的であったが、マウンテリバーサイドまで人手を割ける状況ではなかった(単にダークエルフだから魔族と勘違いされる(勘違いじゃないけど魔族側と思われるのもどうかと思うし…)ということと、ノースリバーサイドの護りを薄くするのも不味いだろう…ということでマウンテリバーサイドはザック1人で行くこととなった訳だ。



「ちっ…さっきより小さいけど交戦音がしてるな…って、どう聞いても一方的に攻撃してるって感じだけど…」


石橋を渡って真っ直ぐ南の門に向かい、急ぎ門を出てダッシュを開始する。途中で冒険者たちを見たけど魔法戦で役に立つとは思えないのでさっさと追い抜いた所だ。


そして…交戦の場にようやく到着したザックが見たモノは…(見た感じ、瀕死の)マロンが横たわっている場所へモンブランたち防衛ゴーレムが投げ出され、と同時に巨大な魔力光を放たれた瞬間だ。そのままぼ~っと呆けて見るだけなら、間違いなく彼女らはその命を散らすこととなるだろう…だが。


(さっせっる…かぁぁぁぁああああっっっ!!!)


無言で加速開始。そしてマロンたちが気付く間もなく壁となるべく巨大な魔力光とマロンの間に立つ。


(土壁…は間に合わない。時間加速ぅっ!!)


途端、ザック自身と周囲の時間が加速を開始し、それ以外の時間経過がゆっくりとなる。その時間差は凡そ10倍…ザックが秒を感じる間、ザック以外は10秒と感じる時間差を生む。大事なのはザック自身だけではなく「周囲を含める」ということだ。これならば手の届く範囲でならザックと同じ時間の進み方となる。


「アース土操作アースクラフト!…あんど、土壁アースウォール!…あんど、アースウォール・デフアップ土壁硬化!!」


3つの土属性魔法(生活魔法の土属性ってだけだが)を放ち、通常時間が経過するマロンたちから見れば一瞬で土壁ができたように見えるだろう…だが、有り余るエネルギーを持つ魔力弾では土壁1枚ではその余波で致死級である…


「もういっちょ!…強化土壁ブーストウォール×5!!」


一瞬にして土操作と硬化が掛けられた土壁が更に5枚追加される。左右に1/3程重ねた物と土壁の上に同様に1/3程重ねられた3枚が追加されたのだ!…時間加速されたザックの新魔法を見た者が存在すれば、こう思ったことだろう…


「この土壇場で短縮系新魔法の創造だとっ!?」


…とw


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結果報告は次話で!(まてっ)


備考:戦闘中なので特になしw

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