33 その16 ~マウンテリバー、魔族の侵攻を受ける!…その16~

外壁をピンポンダッシュする迷惑魔物が現れては消えるマウンテリバーサイドw…ザックたちはあーだこーだと話し合うが該当する適当な魔物に思い当たらない…という訳で、姿を消し去る屈強な霊的魔物ではないか?…ということで教会に思い当たる当てはないかと相談しに行くが、話が脱線してザックの守護神の話になるのであった…

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- ザック邸 -


「…びっくりしたなぁ。まさか、生活魔法の神様の名前を神官たちが知ってるなんてねぇ…」


「いや、びっくりする所、そこじゃないでしょ…」


レムが呆れるように突っ込む。


「ほんとほんと。まさかマスターの守護神が創造神様の奥方で、創造神様を尻に敷いてたなんてねぇ…」


「いや、そこもびっくりする所じゃ…ま、まぁ私もびっくりしたけど」


シャーリーも驚きポイントがずれてると暗に突っ込むレム。ボケが多くて突っ込みが忙しいと暗にがっくりするレムであったw



「さて…大悪魔とか大怨霊とか…この地に束縛されてる地縛霊的な存在…らしいってことか」


悪魔は基本的に肉体を持つ魔力が強い異界の生き物の総称であり、別に霊ではない。姿を消す術も持っている個体も多いし基本的に力が強いので壁をピンポンダッシュして逃走…なんてことは容易だろうが、そんな悪戯いたずらの為に現れるとは考え難い。


「考えられるとしたら、魔族側で召喚した悪霊ゴーストに力を与えて牽制させた…とか?」


レムが顎に手を当てて至極真面目に考えているが…


「若しかすると、壁に何か仕掛けてるように見せかけて…別口に悪さを始めてるのかもね?」


シャーリーが「悪戯をするならこうじゃない?」…と悪い顔をして喋っている。


「…何にせよ、警備は厳重にするしかなさそうですね。幸い、私たちはゴーレムです。不眠不休で動いても人間よりは支障は少ないのですから…」


ナルが珍しく大真面目に語る。部下ゴーレムには既に通達が行っているらしく、館に残留している者は必要最低限となっているようだ。他、簡易量産型の警備ゴーレムの発注をザックに対して行っており、ストレージ内で簡易量産型警備ゴーレムを量産しているザックはこの会議に参加しているにも関わらずに半分意識が錬金術に行ってる状況だが(苦笑)


簡易量産型警備ゴーレムは少々鍛えた冒険者…ランクでいえばランクC相当だ。但し、素材がその辺にある土を基にしたクレイゴーレムで、人間に見えるように表面処理を施しただけでそれ程強い存在ではない。だが、魔力が枯渇しなければ疲れ知らずなので同ランクの冒険者より少し強い程度だろう。長期戦になれば負ける道理が無いのだから…


対策会議(結局伝承以上の情報が無かったので対策も何もないのだが…)が終了し、会議中に生産したゴーレムを…館の裏でナルに納品するザック。追加で取り敢えず10体を預けることとなった。魔力カプセルも100個を預けておく。取り敢えず10体の警備ゴーレムが10日は通常稼働できる量だ(レムやシャーリー、ナル、モンブランたちの物と違って魔力量が1/5で済み、24時間働いてようやく消費しきる量でもある。ザックの傍で護衛でもしてるなら遠隔充填で済むことからかなりのエコな躯体だろう…つまり、レムたちはかなりの高コスト躯体であり、且つ、強力なゴーレムといえる)


「1人に10個じゃなくて先に創った奴らにも渡してね?…一応余裕を持たせてるけど。あぁ、それと強力な個体にはこっちね」


魔力量が違う、レムたちよりは量は少ないがそれでも品質が半分くらいの魔力カプセルだ。10体分、5つづつ50個だ。先の簡易型用の物と区別する為に色分けをしてるので間違うことはないだろう…多分。


「はい、お任せを!」


恭しくカプセルの入った箱2つを受け取り静かに頭を下げ、頭を上げるとくるんと振り向いて会議室となっていた食堂を去って行く。他の連中は会議が終わったというのに敵の正体について話し合ってたが、ナルが出て行ったタイミングで本来の仕事を思い出したのか誰ともなく食堂を出て行った…ちなみにマロンは最初から最後まで無言で、ナルが出たタイミングでまだ話したがっていたモンブランの首根っこを掴んで出て行ったw


(無言だったのは話すだけの情報が無いからだろうなぁ…)


マウンテリバーのダンジョンの上層階では霊的な存在は出ない、らしい。霊視できる程強い探索者は居なかったし、最下層でも発見例が無かったことから見えないから報告できなかったか、ちょっかいを掛けることができるくらい強い霊的な存在が居ないだけかも知れない。


(冒険者ギルド側から情報が回って来ないから本当かどうかはわかんないけど)


今でこそ協力して復興に力を注いでいる…が、侵攻前は仲が余り宜しくなかったからねぇ…


取り敢えず、放出して無くなった魔力カプセルを何とかしないとな…と思いつつ、大容量魔石ラージマギバッテリーから魔力を充填しながら創るか…と、自室に引き籠るザックであったw



- 数日が経過… -


今日も不定期に壁を殴る蹴るする音が鳴り響く。マウンテリバーサイドの住民は慣れてしまったようで、多少耳障りな音だなぁくらいにしか感じてなかった。慣れとは恐ろしいもので、時折大きく音が響くと


「うるせえっ!」


と一喝する者も居るくらいだ。最初でこそ、まるで


びくっ!…


とびびったかのように音が一瞬鳴り止むが、壁を殴る者あちらさんも慣れてしまったのか近頃は怒鳴るくらいでは音が鳴り止むことはなくなった。警らをしている警備ゴーレムかマロンやモンブランが駆け寄っては追い払う(攻撃を加えようとすると途端に消失してしまう)ことにより、静かになりる毎日だ。


「はぁ…工事現場じゃないんだから、こう毎日だと気が滅入るよなぁ…」


「んだんだ」


自身の店舗から動けない者たちはそう愚痴る。かといって耳栓をしていたら仕事にならないし、どうしたものかと思うがどうにもならず…こうした苦情が両ギルドや領主の館に集まるのだが…進展は無いのだった。



そしてとある夜。この世界にも存在する月が沈んだ頃…街灯もない町は完全な暗闇に包まれ、24時間眠らない衛兵たちや警備ゴーレムたちの当直室だけが明かりを灯していた。町中の道という道は復興中途なだけに、以前は僅かにだが存在していた街灯は未だ立てられておらず、警らをする者たちが照らすランプだけが頼りであった(尤も、ゴーレムたちは自前の暗視可能な目を持っていたが…)


「…ふぅ。今夜も何も起こらなければいいが…」


人間の衛兵が独り言ちる。隣を歩いていた相方の警備ゴーレムは会話能力に乏しい(喋れないのではなく、カタコトとなってしまうだけ)がいわんとしてることは理解できる為、静かに頷くのみだったが…


ぴくっ!?


相方ゴーレムが何かを察知して歩みを止め、衛兵の肩を掴む。


「ん?…どした…ぁあ~~~~っ!?」


そう話し掛けた瞬間、思い切り後ろに飛んで脅威を回避する警備ゴーレム。引っ張られた衛兵の鎧装備の総重量を物ともしない瞬発力での回避力だった!


ツカカカカッ!


虚空から現れた棒手裏剣が最近敷いたばかりの石畳の地面に突き立つ。そこは衛兵が立っていた場所だった。攻撃してきた相手は闇色で暗い町中ではその姿はわからない。警備ゴーレムの暗視な目でも薄っすらとでしか判明しなかった。


(女?)


輪郭からすれば華奢な体格に薄くではあるが胸の起伏があり、尻も安産型であろうくらいには柔らかいラインを描いていた。少なくとも男ではないだろう。だが…警備ゴーレムは危機感を感じていた。目には見えないが噴き上がっている殺気は…少なくともこの衛兵を瞬殺できる程度には…危険だ。


「が…あ…」


がしゃん!


そんな刹那の時間の思考時間が…相方の死期を定めてしまった。吐血した衛兵は…顔、胸、腹、両足から棒手裏剣を生やして仰向けに倒れてしまった。その先は鎧を貫通して反対側まで出てしまっていた。そしてその勢いのままに後方へと軽く吹っ飛んで倒れたのだ。そして地面に倒れ、その勢いのままにバウンドして体中から血が噴き出す…


「!」


肩から手が離れてしまったが、反対側の手を懐に入れて回復薬ポーションを手に取り、振りかけようとして手が止まる…既に、彼は事切れていた。尤も、体に突き刺さった棒手裏剣を取り出さなければ治療はできない…だが、顔面に刺さった…兜を貫通していた棒手裏剣は…どう見ても致死の原因であり、頭部を貫かれれば…人間は絶命しかない。蘇生薬など配布されてない彼女警備ゴーレムには、もうどうすることもできなかったのだ…


「…」


彼女は上位体であるモンブランに念話で報告した後…衛兵の身体を抱えて撤退する。彼女にできることはもう済んでいる。脅威である対象にマーキングすることだ。本来の意味でのマーキングとは少し違うが…対象を追えるなら些細なことだ。それは…


「敵対存在の魔紋来たぞ~っ!!」


「登録完了!全員緊急出動!!」


「「「応!!」」」


待機していたマロン、モンブラン、第2波時に創造した防衛ゴーレムの強化版部隊、総勢12名がマウンテリバーサイドの待機所から次々と出動する(警備ゴーレムの当直室とはまた別の建物)


彼女らは(モンブランは躯体は男だけど精神が女性なので便宜上…(苦笑))特殊な装備に身を包み、地上を風属性魔法「そよ風」のアレンジを施した「ホバー」で浮き上がり、後方にも風を噴出させて滑るようにけていた…


━━━━━━━━━━━━━━━

ドム?…全員細いDEATHけどね?w


備考:慌ただしくなっているので暫く収支報告が無いっていうw(まだ両ギルドと領主が混乱してるせいか?)

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