32 その15 ~マウンテリバー、魔族の侵攻を受ける!…その15~
ノースリバーサイド・マウンテリバーサイドの架け橋を落とされ、それを衆人環視の中で再生するザック。だが…誰が橋を落としたか、犯人は推測はできたが真相は未だ闇の中だったが…
━━━━━━━━━━━━━━━
- 復興進むマウンテリバーサイド -
あれから更に1箇月が経過…人間だけではロクに進まなかっただろう復興はトントン拍子に進み、細かな部分はさておき、重要拠点の建設を優先させていたが一般人の住居もと強い要望があり、大本の区画とは変わってきてしまうが「住めれば構わない」という意思を受け取り、大まかな区画整理をザックやレム・ナルが協力して設計し、それを元にマウンテリバーの職人たちが細かい調整を行っていく。平民たちの住居は2階建ての大型集合住宅として新生し…マウンテリバーサイドはスラムこそ無かったが大小入り混じった小屋が数多かったしトイレが常備された家も少なかった…綺麗、且つ、上下水道が整備された町へと生まれ変わった。
町の中心部…1区画の中心部だが…には公衆浴場が設置され、安い利用料金で営業時間(午後12時~深夜12時まで)内であればいつでも利用できるようになった。今まで、マウンテリバーで風呂といえば高級宿か貴族街の家、領主の館にしか無かったので大いに歓迎されたという。それまでは沸かしたお湯にタオルを浸し、それで体を拭くしかなかったのだ(お湯を沸かす余裕もない家庭では井戸水の水で…と考えるだけでも寒そうである)
その他、人的被害は奇跡的に殆ど無かった為、仕事を持っていた人たちの為に以前と同じ…とはいかなかったが、なるべく願いを叶えるべく嘆願書を書いて貰った。嘆願書は再建した探索者・冒険者ギルドを通じてザックに集められ(写しを領主の館にも集められたが)実作業は町の職人と建築スキルを持つ者たち、そして復興ゴーレムたちだ。力持ちの冒険者たちも資材運びに従事し、平民たちも手伝ってくれた。手伝ってくれればその日の食い扶持は提供されるというのもあったが。
マウンテリバーで何かしら作業を手伝えば食事引換券を発行して貰え、炊き出し場で引換券と食事を交換して食べられるという仕組みができていた。引換券は何でできているか不明だが金属でも木板でもなく不思議な材質でできており、決して真似ができない素材であるということしかわからなかった。そして、マウンテリバーを出てしまえば雲散霧散してしまい、2度と手元には戻らないという…まるで魔道具かと思われるような仕掛けもされていた(単にマウンテリバーサイドを包む外壁の障壁を通過すると消えるというだけの仕掛けだがw)
・
・
「復興計画書通りかね?」
「そう、ですね」
「ふむ…」
いつの間にか、ではなく。かなり前から起き上がる程度には体調が回復した領主だ。唯、用心に用心を重ねて執事が領主を寝かせている訳だが…
「唯の子供…という訳ではないようだな?」
「そう、ですね。私めどもも驚いております」
成人(16歳)になったばかりの子供とは思えない知識量に判断力。そして…当人は生活魔法だといってきかないが…
「強力無比な属性魔法の使い手…か」
「はい…」
確認済みのモノだけでも火・水・風・土・聖属性がある。火属性は「明かり」しか確認されてないので苦手としているのかも知れない。水属性は「水生成」をよく行使しているらしい。生活必需品でもあるのでよく鍛錬されている可能性は高い。聖属性では「ヒール」を。未確認ではあるがそれ以外の魔法も使っているらしい…という話も聞いている。そして…
「風属性か…」
「は。物凄い勢いで走ったり跳躍をしたとの目撃もあります」
「上位魔法を習得しているかも知れない…ということか」
「…」
実は、ザックの行使している魔法は信じられないことだが…全て生活魔法に内包される魔法だ。生活魔法という魔法体系の中で、種類別とすれば何々属性魔法…というだけに過ぎない。但し、普通に使えば威力や精度が低過ぎる為に「生活魔法」と一括りにされているというだけのことだ。殆どの生活魔法は1日にそう何度も使うようなものではない。遠出をしていれば、
そして、過ぎた鍛錬を繰り返した変t…もとい、ザックは魔力最大値が肥大し、各魔法の練度も増大し…威力と精度が他の属性魔法を凌駕していったのだった…。マウンテリバーに来る以前には既にオリジナル魔法「
「土属性は…「アースウォール」をよく使っていたそうだな…」
「は。敵の攻撃を防ぐのに使われていたと記録が御座います」
「ふむ…」
話の上では
- 侵攻 第3波
更に1箇月後、マウンテリバーサイドの新しい街並みも見慣れた頃…
「もう攻めて来ないよな?」
「多分な…」
などと休憩中の男たちが雑談を楽しんでいた。すると…
ずどぉぉぉおおおんんんっっっ!!!
「「なっ!?」」
座っていた椅子からずり落ちて腰を
「「痛ってぇっ!?」」
仲良く腰を打ち付けた2人。周囲にも振動の酷さに体勢を崩して倒れる者や転げる者。不安定な物が転がったり倒れたりもしていた。
「一体何が…」
「痛たたた…って、なんだありゃ?」
転がったまま指差す男の先には外壁がぶつかる音と共に震えていた!
ずだああああんっ!…ずどおおおんっ!…
「ひっ!?」
「ば…化け物ぉっ!?」
壁に何か巨大な生物?が体当たりをしているかおようだが…非常に大きな振動を与えているだけで突き破ってくることはないようだった。だが、怯えた民衆は壁から蜘蛛の子を散らすように逃げていた。
・
・
「え?…また外壁に魔物がっ!?」
ザック邸に報告がされる。
「うん…一応常駐してる防衛班が対応してるけど…対処しきれないから応援を?…わかった」
ノースリバーサイドからマウンテリバーサイドまで届く魔導通信機を用いて会話していた。元々創造したゴーレムなら
「えっと…戦闘班の部隊はっと…こちらザック」
「…はいはい、こちらモンブランです!」
「忙しい所すまないけど、北東の外壁に凸ってる魔物がいるらしいから対処宜しく!」
「了解です!…戦闘班モンブラン部隊、出撃します!」
ぷつっとスイッチを切り、「はぁ~」と溜息を吐く。
「今週に入ってから急に数が増えたよなぁ…」
ひょっとすると、第3波の兆候か?…と考えを巡らしているザック。だが、壁にちょっかいをかけているのは壁を破壊する程強力な魔物ではなく、戦闘部隊が迎撃に向かうとすぐに逃走するのだ。おまけに逃げ足が早く、追撃しても見失ってしまうのだ。
「何が目的なんだかな…」
ザックが皆目見当がつかないと唸る。
「ひょっとすると、新しい防御壁の性能を測ってるのかも?」
レムが推測を口にし、
「かも知れないわね…」
ナルも同意する。
「でもさ~…腑に落ちないこともあるんだよね?」
シャーリーがザックの頭の上で横になりながら疑問点を話す。
「何がだ?」
マロンがシャーリーに問うと、
「いやね…逃走してった魔物なんだけど…忽然と消えるじゃん?」
「あぁ…まるで転移したかのように消えると報告があるな」
「あれね…ゴーレムの一種じゃないかな?」
「え?ゴーレム?」
「うん…」
だが、ゴーレムが忽然と消えるなんて余り考えられない。どんなゴーレムだって実態があり、仮にゴーレムを構成する魔方陣を…魔力を解除してもその残骸が残るのだ。そんなゴーレム…まるで空気か水でもない限りは構成素材が目に見える形で残ってしまうのだ。
「空気か水でもない限りは…いや…まさか…」
ザックは思考をそのまま口に出し、本来ならば空論にしかならないifに気付く。この世には霊という存在がある。聖属性に弱いが物理的な攻撃力を持つ存在…彼らならば壁を攻撃し、逃走時には姿を消すことすらできてしまう…
「霊的な存在ってあるよね?…ゴーストよりも強い、物理的な攻撃力を持つ存在…」
「え゛…ま、まさか…」
レムとマロンが青い顔をする。
「多分だけど…リッチ?」
「若しかして…デュラハンか?」
レムとマロンは、それぞれ強そうな霊的なモノを思い出しその名を口に出す。
リッチとは大鎌を手にしぼろ布を纏った骸骨で浮遊移動する半幽体の、ターゲットの魂を刈る死神のような存在だ。姿を消し去ることも可能で普通の人間にはいつ現れるか、消え去るかはわからない。そして獲物である大鎌で物理的に物を断つことも可能だ。
デュラハンは首が無い鎧騎士の姿をしている。同様に首の無い馬に騎乗していたり、チャリオットと呼ばれる1人乗りの馬車に乗っていることもあるとか…。片腕に自らの兜を持ちもう片方の腕で剣を振るって敵を討つ、らしい。無論、物理的攻撃も可能だ。常に神出鬼没であり、兆候はあってもいつ現れ、そしていつ消えるかは誰にもわからないらしい…
「ん~…どっちでもないように思えるけどなぁ?」
シャーリーが説明を受けて記憶にある姿と行動パターンを頭の中で比べてみて断定する。
「どっちかっていうと…2足歩行だけど鎧なんて着てなかったと思うし頭もちゃんと付いてたし…」
目を瞑って首を捻りつつ唸るシャーリー。
「体はどー見てもオーガっぽかったし…」
それならば、壁を破壊できなくともあれだけの衝撃を与えるのは納得できる。何しろ壁を殴って人々を驚かす程の音も鳴らしていたのだから。
「でも、それだと忽然と消えたことに疑問が沸くんだよね…」
オーガは魔物であるが忽然と消えるような能力は持っていない。仮に霊体であったとすれば、壁を殴ろうとしてもすり抜けてしまうのだ…そう、
「う~ん…よくわかんないなぁ…」
ゴーレムたちが何処から情報を得ているのか知らないが…その辺は疎いザックだった。
- 新教会・事務室 -
「ってことで、ひょっとしたら何かご存じじゃないかと思って…」
「おお…お久しぶりですな、ザック殿」
「これ…殿じゃないでしょ?…辺境伯相当のお立場なのですから…」
「はっ!?…これはこれは…失礼をば…」
「あはは…いいですよ、この中に限るのならザックで」
以前、目の治療でお世話になった教会…のメンツである。教会の建物は急ぎ復興させたのだが、いつ次の侵攻があるかもわからない…ということで、大きさこそ元と同じだが木造の
「それで…ゴースト系列の魔物の話だったかな?」
「えぇ…物理的攻撃力が高く、走って逃げながら姿を消せる2足歩行の…って条件が付くんですが。何かご存じないですか?」
「えぇ~?…そんなケダモノ染みた霊なんて…あ」
「?…何か思い当たるのモノが?」
神官長と神官たちがひそひそと話し合っている。ザックは何だろう?とその様子を見ているが…
『何でしょう?』
レムがザックに顔を寄せて…小声ではなく念話で訊いてくる。
『いやぁ…聞き耳を立てるのも失礼だろうし…』
『お、何か決まったようだよ?』
頭の上のシャリーが髪の毛を引っ張ってザックに知らせる。
「お待たせしました…」
「いやぁ…年を取るもんじゃないですな…」
「だけど安心して下され…ようやく一致を得ましたのでな?」
何が安心なのかはわからないが3人の神官たちの記憶に一致を見たようだ。どんな魔物が…その正体とは…と思いながら次の言葉を待つ、ザックたちだが…
「
「恐らく…」
勿体ぶるなと思いつつ、次の言葉を待つ。シャーリーはじれったくなったのか不貞寝してるが(苦笑)
「「「その昔…この地に眠る大悪霊…いや、今となっては封印され、人々に忘れ去られて久しいが…」」」
そこで一旦言葉を切り、話していいか…と、やや不安気になる3人。この場で話していいかどうか、迷っている風でもある。
「…構いません。僕には生活魔法の神の加護があります。何かあってもきっと護って貰えると思います…」
初めて語られる事実に、3人の神官のみならず、従者ゴーレムである2人も驚愕の顔をしている。いや、何で驚くのかも不思議なんだけど…
「「「それは…事実なのかっ!?」」」
「え?…えぇ、別の神様…あ、この目を授けて下さった神様からのまた聞きなんですけどね?」
(確か、名前は「ゴ=デルッサ=ポウ」といってたかな…ちなみに教会が信仰している神様は「アラ=ラ=ホーユンサ」という。この教会のご神体は逃げ出す際に神官長が持ち出しているので無事だ。ご神体は片手で持てる程に小さい。普段参拝者が見上げているのは一般向けのご神体なんだそうだ…。生活魔法の神様の名前は…そういえば聞いてないかな?…何ていうんだろうね。ま、必要があれば機会があったら聞けばいいかな…)
そんなことを思いながら神官たちの言葉を待っていると…
「生活魔法の神…ドゥグオ=アム=タキゥスが…守護神と…まさか…」
「それは…創造神の…奥方ではないかっ!?」
「創造神より上位神と聞いたことがあるが…」
まさかの、
━━━━━━━━━━━━━━━
まさかの夫婦神w…そしてこの世で一番偉いと思われた創造神より上位という…w
備考:特になし
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます