12 その8 ~ダークエルフの里・救出作戦 -前編-~
ようやく救出目標のマロンを確保…と思ったのも僅かな時間で当の本人が「頭を撫でられて蕩けた顔を暴露」したことに気付き、脱兎の如くその場から逃走…恐らくは地上へ向けて突っ走って行ったのだろう。ザックたちは仕方なく撤収を開始しようとしたが、よくよく考えると魔族側陣営と噂されている一般的には見ることの無い、肌色が黒褐色のエルフ族、ダークエルフたちだ。ぞろぞろと出入口まで行ってすんなりと通して貰えるとは考え辛い…再び仕方なく、ザックは1回こっきりの転移魔方陣を構築し、全員をダンジョンからノースリバーサイドの転移魔法陣へと転移したのだった…
※入ったはいいけど出てないのはいいのか?(マロンと口裏を合わせて誤魔化したとか何とか(苦笑))
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- ザック邸 -
「「「此処は…」」」
ザックとレム、シャーリーと共に数人のダークエルフが魔方陣上に現れる。
「は~い、後が
魔方陣の外に出たザックとレム…ではなく、ザックの頭上で寝ころんでいたシャーリーがレムの頭の上に移って膝立ちになって交通整理宜しく、大声を上げて移動を促している。レムも、
「急いで…残りのダークエルフさんたちが出られないから…」
と、同様に移動を促していた。ザックは歩き出した先発のダークエルフたちを案内し、偶々廊下にいた使用人の…メイド長補佐の「イブ」にダークエルフたちを一番大きい食堂へ案内を頼む。可能なら、軽食と温かい飲み物を用意する旨も伝えた。
「畏まりました…あの、接する人員は必要最低限、で御座いますね?」
イブの心遣いに、
「あぁ、宜しく頼むよ」
とだけ伝えると、ザックは魔方陣のある部屋へと戻って行く。
ちなみに魔方陣部屋は安全性を考えて地下にあり、壁の四方は地下の為に窓は無く、地上へ繋がる廊下にドアが1つだけある。お屋敷は地下室も存在してはいたが、この部屋だけは後から増設したもので地上に繋がる廊下は地上の廊下へスロープで繋がっている。イブとはスロープを登り切ったT字路で繋がっている廊下で会ったという訳だ。
- 大食堂 -
結局、
「あ…れ、さっきいってたのと「申し訳ございません!」…あぁ、まぁこうなるんじゃないかと思ってたけどね(苦笑)」
イブに言葉の途中で突っ込まれて苦笑いするザック。まぁ屋敷の責任者にバレないように連れ込むのは難しいとは思ってたが、早々にバレたなら仕方ないと笑って「いいよいいよ」と許す。
「…して、ご説明をお願いできますかな?…御屋形様」
コナンが話しが付いたと見るや、速攻で説明要求の旨を叩きつけてきた!…いや、まぁ、説明はするつもりだったけども!
(…最初から、かねぇ?)
と思いつつ、ダンジョン第5階層であった事実をぽつぽつと話し出すザックであった…
・
・
「成程…それで、うちで匿う…ということですかな?」
「まぁ…色々情報を持ってそうだし。でも、普通に表に出したら混乱させるだけだし、ね」
黙り込むザックを除く面々。無論、ダークエルフたちは皇帝のジェンドゥに頼んで口を
「まぁ…うちで匿うのはいいでしょう。引き換えに魔族陣営の情報を渡して頂くと交換条件があるそうですから、ね…」
実は全然その辺の話は通してないんだけど、アイコンタクト
(そういうことにしておいてくれない?)
(…は)
と、何とか納得して貰っていた。でも、実はそんなことより先に実行したいことがあるんだよね…
・
・
じりじりと経過する時間に耐えて、ダークエルフたちとザックはコナンの提示する条件を聞き(それ程面倒でも難しいことでもなかったが)ザック邸に匿う協力を取り付けたのだった…
「じゃ、面倒だと思うけどこの契約書と誓約書に…あ、人族の文字の読み書きは…」
「問題ないですぞ、若」
(若…?)
ザックの問いに皇帝が問題ないと答え、ペンを手に取りサインをしていく。ダークエルフ族を代表して帝王がサインをするという世にも珍しい状況だが、それはさておき…
ぴかっ
と、サインを書き終えると契約書と誓約書の2枚が輝いて消える魔力光。
「…あぁ、これって魔法の…」
「左様で御座います。これで許可が無い限り、或いは御屋形様の指示が無い限りは身勝手な真似はできないということですな」
コナンはそんな台詞を口にする。表情からは何を考えてるかはわからないが、屋敷を…ザック邸の立場を考えれば中立の立場としていわねばならないことなんだろうと思う。要は、自ら悪者の立場に甘んじ僕のことを悪く思わないように振舞ってたんだと思う。が…
「コナン殿…といいましたか?」
「はい?」
「若…いえ、ザック殿を慮っての発言だと思いますが…」
「先程の、ですな?」
「えぇ…」
両者暫く黙っていたが、結局何も話さないでそのまま終わってしまうのだった…
(…結局何がいいたかったんだろ?)
ザックはそう思ったが突っ込むことでもないかなと思い、解散するのだった。
・
・
「何から何まで有難う御座います…若」
此処はお屋敷…ザック邸の外。大型の
「用意しましたが、こちらに運び込めば?」
…と、イブが顔を出した。
「あ、お願いします。ダークエルフの女性陣にも手伝ってもらえば早く終わると思いますよ?」
と返事するザック。男性陣は女性陣が勝手に使うだろうし?w
・
・
「…さて、今晩はこれでいいとして…だ」
寝床も準備できて、夕飯も人数分を
「…そうだな」
何を話すのか察しているのか、皇帝は低い声で返す。皇女は黙ったままだ。
「なぁ…
マロンが口を挟む。ぴこぴこと動くネコミミがかわ…あ、いや。マロンを一瞥してからザックは話しを続ける。いや、2対の冷たい視線を感じたからではないぞ?…うん、絶対違う…
・
・
「…」
ザックは残されたダークエルフ一族…聞いた所、残されているであろう一族の人数は凡そ3千人程だそうだ…の救出作戦を皇帝に話し終えた。終始黙っていた皇帝だが、皇女であるジェリコはまさかの救出作戦に目を見開き、そして賛同する。だが…
「わしは…反対だな」
まさかの反対意見が帝王たるジェンドゥの口から出、皇女が「信じられない!」…という目で睨む。
「何故ですかっ!?…折角旦那様からの申し出をっ!!」
いや、旦那様って…結婚なんてまだ考えられないんですけど!?…ともいえる雰囲気でもないのでぐっと我慢するザックw
「それでもだ…折角助かった命を捨てに行くつもりか?」
「そ、それは…では、誰か別の者に…」
「その者の命は捨てても良いと?」
「…」
トドメをさすように皇帝が凄み、皇女は何もいい返せなくなってしまった…
- ザック自室 -
「…で、どうすんだ?」
相変わらずネコミミがピコピコ動いていて可愛らしさを演出しているマロン(当の本人にはそのような気も無いし無意識の動きだがw)が訊いてくる。
「そうだな…取り敢えずダークエルフの故郷の位置を聞き出して、それから救出しに行こうかと思う。彼らは疲れてるだろうし、ゆっくり休んで貰わないとな」
ふむ、と頷くマロン。
「え~…本当に行くんですか?」
シャーリーが心底嫌そうに呟く。ちなみにレムの頭上でやる気なさげに横たわっているがw
「…マスターの意思に従う」
レムは静かに恭順の意を示す。同時期に創られた従者ゴーレムの割には、両者の態度や考え方に差があるのは面白いなぁと思うザックだが、レムの返事に頷くだけにした。レムはザックの頷きを見て、準備があると退室してこの場を去って行く。2人は
「じゃあ…彼らの故郷の位置を、聞き出さないとなぁ~…」
と、小難しい顔をしながら自室を出ると、目前にコナンたちが待ち構えていた。ザックは少々びっくりして、それから何だろうと思いつつ問う。
「どうしたの?…コナン。何か用かな?」
と。
・
・
「えと…これが?」
「はい」
自室に舞い戻ったザックたちと押し入った形のコナンとメビウス。執事とメイド長の2人はザックの問いに肯定する。ザックが手にしている紙はダークエルフたちの里の位置だ。正確には人類の住まうこの地上ではなく、ノースリバーサイドの更に北の魔界に跳ぶゲートの位置と、ゲートを潜った先にある魔界と呼ばれる異世界のダークエルフたちの里の位置を示した数字が記載されている。流石に地上と同等の広大な土地の地図は、通常の文書に使う紙では描き切れないだろう。
「何でこんなものを…」
とは思ったが、ザックの行動の先を読んだコナンたちがダークエルフたちに聞き出したものと思われる。大方、第1部隊のワイズマン辺りから聞き出したのだろう…口が軽いな、あいつ…とは思わないでもないが、今回の所は助かるといえば助かる。
「そうか…助かる。後、多分だけど皇帝からお叱りを受けるだろうから…」
そこまでいうと、
「
と、
- 凡そ1時間後 -
「ここかぁ…」
まずは北のゲート周辺をということで、シャーリーに飛んで貰って偵察することになったんだけど…
「何か一杯居ますね?」
レムの声に頷く。ゲートの周辺だけでなく、少し離れた位置にある巨大な穴にも魔物や人間大の人影、巨人らしい人間の数倍ある人影が認められた。尚、念話の契約をしている者たちだけにしか見えない視覚映像の為、僕と同行しているレムとマロンでしか共有できていない。
「何故わたくしには!?」
と暴れている某皇女さまも居るんだけどね…何で付いてきたかって、1人もダークエルフが居なければ「敵襲!」と思われて話しがややこしくなるからって…。ちなみに人質と勘違いされるからと、第1部隊のワイズマンも付いてきてるけどね…名目上「ジェリコ皇女の護衛」ってことで(苦笑)
『どうするぅ~?…これじゃ転移した途端に囲まれちゃうけど…』
シャーリーが念話で訊いてきた。
『う~ん…ゲートの向こう側はどうなってる?』
『ちょっと見て来るね?』
と、引き留める声を出す暇も無くシャーリーはゲートを潜ってしまう。
『…視界情報は問題無く届いてるみたい、だな』
『だな』
マロンが返事をしている。ちなみに念話は苦手らしく、念話と声が同時に聞こえているがw
「ど、どうなってるんですか?」
心配そうにリコ皇女が訊いてくる。視覚情報も念話の声も届かない為に不安そうではある。ちなみに、隷属の契約は帝王や部下のダークエルフたちが
「絶対ダメだ!」
と、断固拒否したので皇女本人は別に構わないといってたが反省意見多数だったので契約していない。別に強制力も何も無いんだけどね。単に念話を使う為に必要な契約なだけで…(上位者が下位者に一方的に念話を送り届けるとか一斉送信ができるだけっていう特典があるだけ?)
尚、これは本来の隷属契約のごく一部だけを抜き出した限定契約で、フル機能の隷属契約だとダークエルフたちが危惧してる本来の隷属ってことになる。そんなの使い辛いし元々従者ゴーレムで隷属してるレムたちには処理が重くなるだけだからねぇ…だからダウンサイジングして処理を軽くしたのを掛けてある訳だ。
「ゲートは見つかったんだけど、魔族サイドの者が沢山いるからこのままでは転移は無理っぽそうって」
「…そうですか」
落ち込む皇女に追加情報をいうザック。
「んで、ゲートの向こうを見て貰ってる所だ」
「…え」
その時、シャーリーから追加報告が届けられる。
『無事にゲートを潜ったけど見える?』
『あぁ、見えるぞ。そちらの周囲はどうだ?』
ザックが皇女と話してると見るや、マロンがシャーリーの相手をする。
『念話の内容やこっちの状況を説明してるのかな?…えっとね、ゲートの向こう側は人っ子…いや、化け物の1体も見えないみたい。探知にも引っ掛からないし』
シャーリーはそういうが、探知から逃れて行動する魔物が居るかも知れない。
『油断するな。姿が見えなくなったり、探知から逃れる術を持つ魔物が居るからな?』
と警告するマロン。ちなみにザックたちの現在位置は以前破壊され掛かっていた最も北の最外壁前だ。壁の向こう側は見えないが探知の魔法に依れば、時々様子を見に来ている魔物らしい反応が見え隠れしている。探知魔法の有効範囲ギリギリの為、そして相手も探知範囲を熟知しているせいか見えたとしてもすぐ引っ込む為に「魔物…だろう?」と曖昧な判断しか取れないが、こんな所に居るのは魔族サイドの存在でしかない…
『わかってるよ…ん~っと…』
暫く念話が中断する。恐らくは飛んで周辺を偵察しているのだろう。視覚映像からは暗めの草地を飛翔しているんだろうという光景しか届かない。
『うん…多分大丈夫。じゃ、此処にマーカーを設置するね?』
飛翔を止めたシャーリーが転移魔法の跳躍先のマーカーを設置する。ザックは念の為、シャーリーのコアを確認し、バックアップを取る。いや、自動的にバックアップは取られているが念の為という奴だ。
『こちらでも確認した。じゃ、少し離れてくれ』
『
シャーリーがマーカーの魔石から距離を取っている間にザックは簡易魔方陣を構築する。今回ゲート向こうへと侵入するのはザックを含め、レムとリコとワイズマンの4人だ。シャーリーはマーカーを設置しに先行している為に今回は数に含まれない(というか、そもそも質量からして1人分に全然足らないがw)
「じゃ、準備するよ?」
静かに頷く3人に頷き返すザック。目を瞑って集中を開始…程なく魔力光が魔方陣を構築し、数舜後には安定する。
「…よし。入って」
目を見開き、魔力光が安定していることを確認して3人に合図をする。黙って頷き、先に魔方陣に入る3人。そして続くザックだったが…
『ま、マスター、来ちゃダメっ!!』
そんな悲鳴を上げるシャーリー。だが魔方陣は発動を始めており、1秒後には転移してしまうのだった…
━━━━━━━━━━━━━━━
順調に話しが進んでいるとよくあるハプニング、かも?
備考:変化無いので省略
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