26 その3

美味しい弁当が2日分しか無いと知る「息吹いぶく若草」チームのザックを除く4人。ザックの仕入れてくる探索者ギルド直営宿の厨房謹製仕出し弁当が如何に美味かったかを示すものだがここはマウンテリバーではない。宿泊予定1週間の「仮住まいの宿亭」ではあれ程の弁当を期待できるかは未知数だが念の為に作って貰えるか訊くことにするマシュウたち。片やジャッカルとパトリシアの2人は外に何かを買って来るといって出掛けたのだったが…パトリシアはおやつになる果物や菓子を。ジャッカルは非常食を仕入れてくるのだった。果物の一部は水分量と糖分が多く、若干だが保存性が高い物があったのでまだマシだろうか?(足が早そうな物はその場でおやつとして消費することに…)翌日、いよいよ新ダンジョンに挑むことになる。一行は徒歩で1時間の距離を歩いて到着した。中に入る前に「マナ吸引の指輪」と対となる「魔力タンクの腕輪」の取り扱いの説明を行い、配るザック。起動・終了のコマンドワードも説明するが、うっかりマナのダンジョンを出ても動かしっぱなしにすると「死ぬよ?」と脅すことも忘れない。恐らくはだが、本当に死んでしまう可能性もあるだろうと…

━━━━━━━━━━━━━━━


- 何か調子がいい? -


「「「吸引!」」」


指輪を嵌め、腕輪を装着してダンジョンの中に入り、体全体に圧を感じた所で全員で起動のコマンドワードを唱える。


(…いや、別に頭の中で思うだけで起動するって説明したよね?)


ザックを除く全員が律儀に口に出して唱えていた…


「…確かに、圧が消えたな」


「うむ。息苦しさが消えた、な」


「すぅ~~~…うん、深呼吸しても苦しくない」


「不思議ぃ~?」


マシュウ、ジャッカル、ジュン、パトリシアが各々感想をいいあっている。ひょっとして、以前入ったことでもあるのだろうか?


「それより…外に居るより体が軽い気がするんだが?」


一番装備重量が重いマシュウが盾をぶんぶん振って動きを確認している。他の面子は「そうか?」とか「う~ん?」とやや疑問のようだがその内に違いがわかると思われる。何故なら…


「あ、やっぱり気付きました?」


「ん?あぁ…盾が軽く感じるからな。ひょっとしてマナ吸引以外にもお得な機能がついてるのか?」


「えぇ、折角無限…かどうかは知りませんが、使えるマナが…魔力が溜まっていく一方なので!」


と、得意気に説明タイムに入るザック。が、いつ知らない第3者が現れるかわからないので、手短に解説するのだった(以下、掻い摘んで説明した内容)



◎マナの吸引と貯蔵(指輪で空気中のマナを吸引し、腕輪の魔力タンクの魔石に魔力として貯蔵)

◎付加機能その1:過剰なマナを通常濃度だけ通過するだけの結界展開(指輪付与)

◎付加機能その2:身体強化フィジカルブーストを付与(生活魔法と同等の1.1倍。魔力タンクの魔力が尽きるまで維持。腕輪付与)

◎付加機能その3:体力自動回復スタミナ・リジェネを付与(安静してると回復する程度。を、体を動かしていても回復。魔力タンクの魔力が尽きるまで維持。腕輪付与)



「…マジか?」


「え、えぇ…。余り本来の機能マナ吸引を損なうとアレなので、これ程度の性能に留まりましたけど無いよりはマシかなぁと…」


ザックとしてはもっと性能を上げたかったようだが、1対の指輪と腕輪にこれだけの魔法性能を押し込める付与能力に舌を巻く思いだった(パトリシアは除くw)


「マジか?…指輪と腕輪に紐も結ばずに魔力線で繋いで吸ったマナを魔力に変換して貯め込むだけでも凄いってのに…」


「腕輪の付与魔法そのものは、1つ1つは取るに足らないが普通は2つも3つも押し込むなんて無理だぞ?」


「それより指輪の結界よ…マナだけ通常量だけ通す結界なんて聞いたことないわよ!?」


「ザックくん、凄ぉ~い!」


と、ぼそぼそと小声で話すパトリシアを除く3人。パトリシアは3人を他所に小声で聞こえた話しを聞いて、多分凄いことだろうと喜んで褒め称えてただけだったが…(苦笑)



結論からいえば、マナのダンジョンは先に入った者と出会うことは殆どなかった。いや、正確には遭遇はしているが…


「死体しかないな」


「あぁ…」


「う…」


「ほら、吐かない」


マシュウが「わかってはいたが…」と苦々しく呟き、ジャッカルが同意し、ジュンが嘔吐えずいてパトリシアが背中を擦るという図式ができあがっていた。どうやらジュンは意外にも見慣れていないようだ。


「あの、これって…」


「あ~、ザックは大丈夫か?」


「え、えぇ…意外と思われるかも知れませんがダンジョンでは日常茶飯事でしたから」


マシュウたちに死体をどうするか訊いたが気遣いをされてしまうザック。マウンテリバーの第1階層では、初心者探索者が深い場所で全滅してる場など結構多く見ていた為、最初こそ慌てたりしていたが1箇月も見続ければ慣れるというものだ。ギルドでも専用のアイテムボックスを預かっているので回収などはお手の物だった。


(死体専用っていわれてたけど装備してる物も入る所を見ると普通のアイテムボックスなんだよね、これ…)


但し容量は大したことはなく10人も入れるとそれ以上は入らないようだ。1つのチームなら十分な量で、第1階層をうろついているチームなら十分ともいえる。装備品やドロップ品を含めても10人分には至らないのだから。


(そーいや運搬者ポーターを雇っていた中級探索者に片足を突っ込んだチームが居て、全部入りきらないことが1度だけあったっけ…。しょうがないのでドロップ品だけを手持ちのアイテムボックスに入れたんだけど、返すの忘れてたなぁ…)


とはいえ、運搬者ポーターも荷車でドロップ品を運んでたんじゃなくて、背負い袋(無拡張)に入れて運んでただけだから大した量じゃなかったが。どちらかといえば各々の装備品と個人の荷がやや多かったので溢れたというか…


(襲ったのは人型の知性のある魔物じゃなくて獣型だったから荷を奪われなかったんだろうね。獣型だから死体の損傷は激しかったけど…)


知性のある人型魔物なら道具を扱う。武器となる道具を奪い、次の獲物を襲う為に役立てるのだ。よって、死体には斬られた傷などがある場合もある。奪った後に試し切りをした可能性があるらしい。逆に獣型などの知性の低い魔物の場合、探索者を食料として肉を喰らう。従って見るに耐えない状態の死体が多いようだ。体格が低い子供などは…


「おい、大丈夫か?」


「え、あ、はい…ちょっと思い出しちゃって…」


そこまで過去の記憶を思い出して思考の海に沈んでいたようでマシュウに肩を揺らされてはっと意識が舞い戻るザック。巾着袋から出す体で、ストレージから取り出した死体入れ用といわれて貸与されたアイテムボックスを手に取る。


「あの…これ…」


「あぁ、例のアレか。わかった、貸してくれ。俺が回収しておこう」


マシュウが手を差し出し、ザックがこくりと頷いて少し大きめの革袋を差し出す。ザックは死屍累々の状況を見守っている中、マシュウが死体から衣類以外を外して死体袋(と便宜上呼称)に死者たちを納めていく。ジャッカルは自分の紐付き手提げ袋に装備類を。嘔吐いているジュンは離れた場所で向こうを見ながら座っていて使えないのか、パトリシアが荷物などを回収していた。


「…この人たちはサウスネクシティのギルドに連れて帰るんですか?」


「そうだな。まだ死体が荒らされてない所を見ると今朝死んだんだろう。報せるのは早い方がいいだろうしな…」



結果、ダンジョンに入って10数分の場所でUターンすることとなり、初日のマナのダンジョンは往復の時間を含めると僅か2時間半程で終えることとなった。残りの時間?…サウスネクシティの探索者ギルドで聴き取り調査と僕ら自身の調査で潰されて帰る頃にはとっぷりと夕方になってたよ…はぁ、お腹空いたなぁ。


「…で、何でこんなに時間かかったんですか?」


「あ~…俺らが殺した可能性もあるからな。その辺の調査もしたんだろうさ。マウンテリバーから情報を取り寄せる時間も稼いでただろうしな!」


調査結果は当然シロで、情報は魔道具を使って取り寄せたんだそうな。興味はあったけど見せて貰えなかったのは残念だけど…。


「はぁ…マシュウさんたちは知りませんけど、僕は人殺しなんてやってませんよ?」


「おいおい、酷いなぁ…ははは…まぁわからんでもないが、思っても口に出さない方がいいぞ?…早死にしたくなければ、な?」


「あ?…え…はい…。気を付けます」


少しだけ凄んだマシュウにたじろぎ、ザックが僅かに後退あとずさる。いわれてみれば、この人たちは全てを語ってはいない。普段の言動からはいい人たちだとわかるのだが過去に犯罪を犯していないという保証は何処にもないのだ。ザックに対しても2週間の警護をマウンテリバーの探索者ギルドに命じられて行っているだけに過ぎず、心から率先して護ってる訳ではないのだ。


(心を読むスキルとか魔法があればなぁ…。いや、多分そんなのがあったら…人の居る場所で生きて行くのが嫌になっちゃうかな…)


自分の心でさえ、この調子だ。脛に傷を持つ者の多い探索者や冒険者なんかの心を覗いたら最後…きっと人を信用することなんてできなくなるのかも知れない。家族ですらアレ・・だったのだ。本当に信用・信頼できる人など、この世には居ないのかも知れない…


(そんなことばっか考えてたら際限なく落ち込んじゃうよね…切り替えないと)


ザックはいきなり「ぱんっ!」と頬を叩いて周囲を驚かせ、慌ててフォローする羽目に遭うのだった…どんまい?



- サウスネクシティ・探索者ギルドの下した沙汰 -


「やぁ、済まなかったな。ええと…「息吹いぶく若草」チームの諸君」


探索者ギルドの職員…多分一般職ではなく、1つ上の中間管理職クラスの者だろう(特に自己紹介はしてくれなかったので不明)


「あ、いえ。誤解が解けて何よりです…」


マシュウはリーダーとして代表してやり取りを引き受けていた。見た目だけはジャッカルの方が年を取っているように見えるが、実はマシュウの方が年上だと知った時はびっくりしたものだ。別に若作りという訳ではなく体質なのだそうだ。


「老けてるっていうの禁止な?」


とジャッカルが突っ込んだ時は笑いそうになったが、本人は痛く気にしてるそうで暗黙の規則だそうで…実年齢?…怖くて聞けません。


「死体袋には衣類を着た遺体しか入ってなかったが、他には?」


どうやら装備品や荷物があれば提出しろということらしい。本来は死体の所持品は回収した者のモノになるのが暗黙のルールだが、サウスネクシティでは違うのだろうか?


「別途所持してますが…提出の規則でもあるのですか?」


「うむ。死体の顔でもああ綺麗ならば確認は取れるがな。一応ギルドカードも各自の首に掛けてあったのだが所持品からも確認するのは規則でな」


ということで、別の部屋に移動して出すことになった。ちなみに今まで待機していた部屋はギルドの奥にある応接室でそれ程待遇が悪かった訳ではないことをここに記しておく。


(まぁ、容疑者ってことなんだろうけど…)


監視の人員が2人。中に1人、外にも1人待機していたのだ。それだけで実行犯は居心地が悪くなり、罪を犯していれば逃げ出すことを考えるだろうし…。もとより、殺しの罪を犯してない僕らは黙って待機していたので出ろといわれるまで待機するだけだ。


(お腹が減るまで待たされなくて良かった…)


無論、トイレに行く者も居なかったのは幸いだった?w



- 倉庫の一角(最奥) -


「じゃ、ここで出してくれ」


倉庫の奥まで連れて来られ、ドロップ品などを査定するであろう場所に回収した荷物などを出せと指示される。ジャッカルが装備品類を紐付き手提げ袋からぽいぽいと取り出して置いて行き、パトリシアは荷物類を取り出し置いていた。尚、ドロップ品は混ざると危険…ではないが問題があるかもと、復帰したジュンが回収していたらしい。ジュンもぽいぽいとドロップ品類を置いていた。


「半数がアイテムボックス持ちなのか…凄いな、このチームは…」


(いえ、それは僕が貸与してるだけなんですよ。まぁいえないけど)


と思いつつぼ~っと眺めてると全て出し終えたようで、説明の為にマシュウがギルド職員の傍に待機し、残りはザックの元へ戻ってくる。


「これで全部かね?」


「えぇ。これで全部ですね」


残ってるのは各人の私物と装備品に食料くらいだろう。だが、ギルド職員は何を思ったのかこんな台詞と共にマシュウから手に持っていた紐付き手提げ袋を奪い取った。


「まだ残っているのだろう?…悪いことはいわん。全部出しなさい!」


そして袋を奪い、


ずだぁんっ!


と、手首を捥ぎ取らんといきなり袋が床に落ちて…大音と共に叩き付けられた!


「ぎゃあああっ!?」


いきなり腕を持ってかれ、体毎床に叩き付けられたギルド職員は大声で絶叫し、したたかに打ち付けられた利き腕とその手首を逆の手で庇いつつ泣き叫んでいる。


「あーあ…いきなり奪い取るから…」


訳知り顔のジュンが「呆れた…」とジト目でギルド職員を見ていた。ジャッカルも「うむ」と一言だけ零して頷き、パトリシアは「痛そ~」と余り同情してない目で見ていた。


「だ、大丈夫ですか?」


「う゛う゛う゛…」


まだ大丈夫ではないようだ。仕方なく取り落としている紐付き手提げ袋からポーションを取り出し、涙と鼻水でぐちょぐちょのギルド職員の最も痛んでいるであろう利き腕の手首に掛け、


「残りは飲んで下さい」


と半分になった小瓶を差し出す。彼は手首の痛みが大体引いた時点でポーションを受け取り、煽る。僅かな量しかない小瓶はすぐに飲み干され、ぽいっと捨てられる。


「…勿体ない」


と、ザックが回収しようと動き出すが、


ずがっ!


「あいたたたた!?」


と、踏んずけて割ろうとしたギルド職員が足を取られて引っくり返り、しこたま後頭部を床に打ち付けて自爆するのだった。無論、小瓶はザックにより回収されて再利用されるだろう!w



「そんなアイテムボックスなど、聞いたことがないぞ!?」


(そりゃそうだ。僕が創ったオリジナルだからねぇ…とは公言できないけど)


痛みから復帰したギルド職員が開口一番、そう怒鳴った。ザックがジト目で彼を黙ってみるだけに留めていたがマシュウは説明した手前、どういおうかと悩んでいるようだ。つまり、



◎この紐付き手提げ袋はアイテムボックスだがチームメンバーしかまともに機能しない

◎他人が持つと中に仕舞っている重量が全てその者の手に掛かり、持ち逃げできない盗難防止機能がついている

◎残っている物は誓って私物だけで死体の連中の物は残っていない



それだけを説明した訳だが…


「ふん!ならば全部出して見せるのだな。検分してお前らの物ということがわかれば返却しよう!」


といってきかなかった。装備品や道具類に名前でも書いてなければ誰の物かわからない。食料とか名前書きようがない物まで判別付くんだろうか?


(まぁ、ポーションは通常の物とは違うからすぐわかるけど…さっきみたいに踏んずけても壊れないからね)


ザック特製の防御強化が付与されてるので、大きい金槌でぶん殴ってもそうそうは壊れない(普通の小瓶なら粉砕されて粉々だけど!)


「…あたしらの着替えも入ってるんだけど、それも出すの?」


ジト目でジュンが訊く。パトリシアも「むぅ~!」と唸っている。動物かっ!?


「あぁ、全部だせ。検分する」


と、間髪入れずにいい放つギルド職員。


「そう…確か死体は男性だけだと思ったんだけど?」


「そうだが?…それが何か?」


「なら、女性の衣類や下着なんか関係ないんじゃない?…それとも、女装の気がある探索者も居たってことかしら?」


ニヤリと笑みを浮かべるジュンに、


「そんなものは知らん!全部出せばいいだけだ!!」


と顔を真っ赤にして怒り出す始末。


(うん、頑固なのは判断を誤るから止めた方がいいと思う…)


結局、全員が紐付き手提げ袋の中身を少し離れた場所に置いて検分されることになった訳だけど…


(明らかに個人の持ち物とかは出さない方が面倒が少ないよね?)


ということで、ストレージ側から出していい物とダメな物を選別しておいた。マシュウさんたちはそれに気付いたのか気が付かない振りをしていたけど…


「おい、このアイテムボックスも持って行け!」


と、いきなり暴挙に出られた(一応全部出して軽くなったので持ち運び可能となった体で、実はまだ残っている)けど…


「本人でないと使えないようです。どうしますか!?」


と、死者たちの物を入れようとして他のギルド職員が困っていた。恐らくは別室に持って行って調べようとしたんだろうけどね。赤の他人が使えば見た目通りの容量しか入らないので、盾の1枚も入らないし剣も深さが足りないのではみ出るだろう。ドロップ品なら小さな物はそこそこ入るだろうけど重さはそのままだし小石みたいな魔石なら結構な重さになるので一般職のギルド職員だと持って移動するだけで大変だ。


「…!!」


横暴職員はギリっと歯を噛み締めると、


「もういい!お前らはとっとと台車を持って来て運んでおけ!」


と吐き捨てて何処かへと去って行った。残されたマシュウたちは横暴職員が視界から消えると「はぁ…」と溜息を吐き、


「何かえらい目に遭ったなぁ…」


「これだけじゃないかもな。俺にはわかる」


「あいつ、あたしの下着を持ってたんだけど…キモ過ぎる!」


「わたしのも…新しいの買うしかないのかなぁ?」


と、散々な目に遭ったと愚痴りだす。下着を持ってったのはナニに使うのかはザックには想像がまだ付かないが、よからぬことに利用するのだろうことはわかった。尤も、最近はウォータークリーン洗濯でマシュウらの衣類を綺麗にすることがある為、匂いもナニも残ってない。ナニにするのかは不明だが、新品同様の素材の良さを生かした匂いだけの下着では、目的に沿うようなことにはならないだろう…



「…で、検分とやらはまだなのか?」


「は、はぁ…もう少々お待ちを」


マシュウ…ではなく、ジャッカルがその怖い容貌で質問し、一般職員下っ端がオドオドして答える。このやり取りも、もう何度目だろうか…。やることが無いマシュウたちは何度目かのトイレ。そして腹の虫が鳴いたので夕食を取って、それから何時間かが経過し、大あくびをしている。パトリシアに至っては床に横になってそのまま眠ってしまっている。


「物品鑑定とか持ってる人、居ないんですかね?…あれで鑑定すれば一発でわかるのに…」


ザックが待ちくたびれて漏らすと、


「多分居ないんだろうよ。普通は1人くらいはいるもんなのによ…」


ジャッカルも「ふわぁ~」とあくびを一発決めてから投げやりに答える。長く同じ品を同じ人物が所持していると、所有者が登録される。物品鑑定ではそれが見える為、通常の鑑定…所謂拡大鏡で調査してそれが何なのか調べるという従来の鑑定とその品の出所を調べた追跡調査を組み合わせた方法…に比べて速度と信頼度が段違いなのだ。


「まぁ、鑑定スキルを使わないと普通は何箇月も掛かるんだけどな…早くて数週間か?」


「えぇ~っ!?…こんな所に数週間もですか?…僕ら干上がっちゃうか飢え死にしちゃうんじゃないですかっ!?」


ザックがマジでっ!?…と驚いていると、一般職員下っ端は慌てて


「そっ、そんなことはありません!」


と突っ込んで来た。


「マウンテリバーから鑑定士を呼んでいますから!…さ、最低でも2~3日くらい、ですよ?」


と。


マウンテリバー隣町から?…僕たち、そこから来たんですが…」


ザックはそういうと、一般職員下っ端は驚いて


「ええっ!?…そうなんですかっ!?」


と訊き返して来る。どうやら詳しいことは何も聞いてなかったようで幾つか質問を繰り返し、マシュウたちのことを流れの探索者チームと思っていたようだ。


「マウンテリバーのランクCの探索者チームだったんですか!…なら、貴方たちのいうことは信用しても大丈夫そうなんですが…一応、上に問い合わせて来ますね」


と、他で作業をしている一般職員下っ端たちにいってから倉庫を出て行った。


「…これで、少しは解放される時間が短くなりゃいいんだがなぁ…」


「ですね…」


マシュウが呟き、ザックが同意する。ジャッカルは待ちくたびれたのかパトリシアの横で座って目を瞑っていた。ジュンは自分の下着がよからぬことに使われると予想し、苦々しい顔で唸っていたが…。


「どっちにせよ、あの変態には2度と近寄って欲しくはないものね…」


と、目が座っていてとても怖かったのだった…


━━━━━━━━━━━━━━━

オンナの敵出現w きっと毎日の業務で癒しが…

ジュン・パトリシア「女の敵は抹殺せよ!」

マシュウたち   「怖っ!」



備考:

探索者ギルド預け入れ金

 金貨950枚、銅貨1617枚(変化なし)

ストレージ内のお金

 金貨170枚、銀貨108枚、銅貨163枚(変化なし)

財布内のお金:

 金貨2枚、銀貨57枚、銅貨68枚(変化なし)

今回の買い物(支出金):

 なし

ザックの探索者ランク:

 ランクC(変化なし)

本日の収穫:

 なし(回収した物は全て出せっていわれたのでなし。ザックの物は特に変化なし)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る