10 その10
第3階層は何と…空すら存在する開放型ダンジョン?に変貌していた!…そして、地面は草原や森、林などに変化していて存在する魔物もウルフと変じていた。ザックは迫りくるウルフたちにタイマンで対応するべく、土壁を生成して
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- 草原を越えて… -
草原の全てのウルフたちを斃したのかザックが無警戒そうに草原を歩くも、魔物の影は見えず現れなかった。そうこうしてる内に草原の区画を過ぎ、まだ木が疎らな林へと到達していた。
「はぁ…疲れたなぁ」
取り敢えず体を休める為にと、ザックは魔法を構築して起動する。
「…
目前に自生している数本の木が消えて、
「ふぅ…後は強化を掛けてっと…」
無いとは言い難い魔物の襲撃に対する防御力強化を掛け終え、ようやく中に入るザックだった。
・
・
「はぁ~…」
「これで何とか体裁できたかな…料理する必要はないしな」
食事は弁当があるので誰かを泊めたりしなければ問題はない。水だってウォーターがあるしコップも持ち歩いているし…
「さて、疲れたし寝るか。
唯一のドアが、物理的に存在しない鍵を施錠する「ガチャリ」をいう音と共に閉じられる。念の為にドアノブを回して開けようとするが問題なく開かなくなっていた。
「よし、じゃ、お休み…」
ベッドに歩いて行き、着の身着のまま倒れるザック。数時間寝るだけのつもりだったが翌朝までぐっすりと寝てしまい、想定外の音で叩き起こされる訳だが寝た時点で想像できなかったザックだった…
- 翌朝 -
どんどんどんどん!!!
「うわぁっ!…何だ何だ!?」
必至にドアを殴り壊す勢いで叩かれる音で叩き起こされるザック。「一体何なんだ?」とぼやきつつ、あくびをしながら外の様子を見にガラス窓に向かって覗き込むと…
「助けてくれぇっ!!」
と叫んでいる探索者らしい人たちが外でウルフの大群に追いかけられていた。ドアの外で激しいノックをしているのは小屋の存在に気付いた人なんだろう。
「中に誰も居ないの!?…たっ、助けてっ!!」
どんどんどん!!
ドアの外には女性の探索者が居るらしい。外で走っている探索者の仲間なんだろうか?
「助けてもいいけどねぇ…」
基本、ダンジョンの中は治外法権となる為に何かが起きても自己責任となる。つまり、殺されても罪に問えなく、殺しても殺されても自己責任。勿論、裁く権利を持つ者や代行者が発見した場合は現行犯で捕縛される訳だが…
「…探知」
人物鑑定はできないが、悪意があるかそうでないかくらいは最近できるようになってきたザック。探知した時の光点が
「…青い光?…恐慌状態だから、かな?」
ドアの外に1つ。これはドアを叩いている女性っぽい人のだろう。外で走っている…3人程の光点も青い。そしてウルフの赤い光点は10数点…重なっているのもあるので正確な数がわからない。
「仕方ないな…
同じように「ガチャリ」と音がしてドアが開けられるようになる。と同時にドアノブを回される音がしたと思ったら
バンッ!
と大きな音と共にドアが壊される勢いで開けられる。
「や、やっと開いた!!」
中に女性が1人入って来て、
「み、みんな!ドアが開いたわよ!!」
と叫び、少ししてから全力で走ってくる男たち…いや、1人は女性か?
「たっ!助かったぁ~っ!!」
「早く閉めろ!」
ばんっ!
だが、
「あ、あなた!
最初に侵入してきた女性が僕に対して命令口調で魔法錠を施せといってくる。
「…」
黙っていると、尚も命令してくるので
「はぁ…」
と溜息を吐いて一言、
「
と呟いてドアを施錠する。それだけだと体当たりをしてくる音が五月蝿いので、
「強化」
と更に呟いておく。2重に防御力強化された
「「「な…」」」
息を飲み込み、一音だけ発して黙り込む探索者たち。ガラス窓の外には今も尚、続々と集結しているのかウルフたちが
「ひぃっ!?」
「大丈夫なのか?」
「その内に打ち破られるんじゃ…」
リーダー的な男性探索者を除き、ガタブルと震えてザックを見るが…
(だったら逃げ込んでくるんじゃないといいたいけど…)
はぁと溜息を吐き、どうしようかと悩むザック。今回は偶々生成した
「えっと、リーダーさんは貴方ですよね?」
無言を貫く男性探索者に問うザック。ビクッと反応した隙を逃さずに「ですよね?」と更に追及する。
「あ…あぁ、俺だ」
しどろもどろになりつつも答える男性探索者。次の台詞を予見してるかのように視線を合わさないでいるが…
「モントレって言葉、知ってますか?」
「…あぁ」
「今回の件、それですよね?」
「…あぁ」
「目の前のウルフたち、片付くか居なくなるか、どう転ぶかわかりませんが…地上に戻ったら責任取れますか?」
「…あぁ…え?」
「責任取れますか?」
「…ど、どうやって?」
「…」
通常、このような事案では巻き込まれた時点で双方共に死亡するか巻き込まれた側が囮に強制的にさせられて巻き込んだ側は何とか地上に逃れ、責任云々が発生しないことが殆どであり、後からダンジョンに潜った探索者が事後の状況を発見して初めてモントレが有ったと知ることとなる。依って、モントレ発生の責任を誰に取らせるかは余程口が軽くない限りは無理…となるのだが。
「では、聞き直しますね?…これ、どうやってこうなっちゃったんですか?」
暫く待った後、4人の探索者の誰ともなく、ぼそぼそと話しがあった。そのまま聞くと時系列も何もあったものじゃなく、仕方なく紙を取り出してメモを書く。ダブった部分もあったが、要所要所を抜粋して纏めるとこんな感じだろう。
【「
-----------------------------
◎第3階層が改編があったということで調査に赴いた
◎洞窟型ではなく草原型に改編を確認
◎取り敢えず外側の壁に沿って探索開始(階段通路から出て右側の壁へ左周り)
◎半日も進んだ所にウルフの巣を発見。調査を開始
◎うっかりミスをして見つかり、逃走を開始…現在に至る
-----------------------------
「…えっと、探索歴は?」
「俺は15年くらいだな」とリーダーのマシュウさん。
「私は5年くらい?」と副リーダーのジュンさん。
「わしは10年だな」ともう1人の男性ジャッカルさん。
「あたしは2年」と尤も若い女性パトリシアさん。
それがどうかしたか?…とでもいいたいような目で問われるが…
「それ程の経験を積んでいるのに、どうしてそんな凡ミスを?」
と突っ込むと、「うっ…」と口籠る面々。
「ボクは何年なの?」
とパトリシアさんが訊いて来たので、こう答えた。
「僕ですか?…あぁ、ザックといいます。先日、ようやく1年を超えた所ですよ」
と。そうしたら、「絶対嘘だ!」…なんて目で驚いてたのがよくわかった。まぁ、改編が行われた階層で真新しい
「嘘だろ?」
「この小屋、あんたが建てた物なのか?」
「信じられないわ…」
「こんなお子様に小屋なんて建てるの無理だよね…誰か他に保護者が居るんじゃないの?」
えらいいわれようだが、そう考えるのも無理もないといえる。ザックはまだ成人したての子供なのは事実だし、見た目は成人前に見えなくもないのだから。だが、1年以上前にマウンテリバーに来てから最初こそ休み休みだが鍛錬を行い、今は可能な限り毎日鍛錬を行って来たその体は…服を脱いだら凄いんです!…を実現している。流石にマッチョ!…とまではいかないものの、内包している鍛錬された筋肉はいざ!という時に頼りになれる程だ。それに
「兎に角、この窮地を脱したら、それなりの責任を取って下さい。そう約束して頂けますか?」
といいながら、テーブルに紙を置き、簡略式の契約書を書き出す。残りはリーダーのサインを残すのみとなった時点でペンを渡す。
「…わかった。ここに名前を書けばいいんだな?」
「はい」
一応、リーダーのマシュウさんは文字の読み書きができるらしく、内容を読んでからコクリと頷いて自らの名前をサイン欄に書き込む。
「なんと書いてあるんだ?」
ジャッカルさんがマシュウさんに訊くと、
「さっき彼が口にした内容ほぼそのままだよ」
「第3階層にてウルフのモントレに巻き込んだ責任を、無事に地上に戻れたら取ります…か」
ジュンさんが音読する。時間が無いのでそれだけを書いた訳なんだけど、過不足や問題は無いよね?
「日付と時間も書いておいた方がいいぞ?…まぁ、ここの連中は全員時計なんぞ持っちゃおらんがな」
苦笑いしつつジャッカルさんが補足する。僕はマシュウさんに目で問うと、頷かれたので追加記入する。
「じゃ、これで契約しますね?」
「あぁ…って、契約魔法が使えるのか!?」
「え?…生活魔法にありますよね?…簡略式のが」
「ある…にはあるが。今時あれを行使できる者が居るとは聞いたことがないが…」
「じゃ、端を持って下さいね?…あぁ、そちらのチームメンバー全員でお願いします」
僕が紙の上辺を持ち、「
「…
唯の低品質紙に魔法の光が灯り、契約期間中は
「…終わりましたよ?」
ザックの言葉に、神妙な顔つきで目を瞑っていた4人が目を開ける(きっと初めての契約なんだろうね…)と微笑ましく思いながらザックは見詰めていたが…
「じゃ、契約を交わしたことだし、ちゃっちゃと片付けますかぁ~」
といいながら、契約魔法紙を巾着袋に仕舞い込むザック。
「え?…まさかと思うが」
「ちょっ!待たんか坊主!!」
「え?え?」
「ちょっとリーダー!この子1人に行かす気!?」
と、ドアに向かって歩き出したらうるさいのなんの。
「あ~…皆さんお疲れのようですし、適当に休んでて下さい」
とはいうものの、ベッドと椅子が1つづつでは休むも無いだろう…と判断したザックは木の素材である木片チップを取り出して更に細かく砕き、3人分のふかふかなマットと毛布を創り出した。テーブルと椅子を端に寄せればなんとか敷けるだろうか。
「「「え…」」」
「テーブルと椅子を端っこに寄せれば敷けると思います。取り敢えず寝て待ってて下さいね?…じゃっ!」
「
「はぁっ!」
最初こそ、
「
と、
「あ~…草原だからドロップ品を目で探すのは大変そうだなぁ…」
ドロップ品は死体より長く残るとはいえ、1日以上経過すれば消えてしまう。つまり、少なくとも1日以内に拾い切るしかないのだ。レイド戦やモンスターハウスなどで大量の魔物が現れる場合によく聞く「ドロ品拾い切れなかった」という話しはそういうことなのだろう。尤も、ストレージを持つ者ならば、歩いて収納するだけなので歩き残した区画が無ければ拾い残しはほぼ無いこととなる。
「さて…今回の収穫はどんなものかな?」
ストレージの新たな収納品一覧を見てみると…
【ストレージ(ザック)新収納品一覧】
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◎ウルフの牙×239対(1頭辺り2本)=478本
◎ウルフの毛皮×189枚
◎ウルフの骨×128対(1頭辺り大腿骨2本)=256本
◎魔石(小)×251個
◎魔石の破片×5個 ※10個分集めて精錬することで魔石1個生成可能
◎
◎銀貨2枚、銅貨421枚 ※レアドロップ
◎水晶3本 ※レアドロップ
---------------
「お~…結構あるな」
尚、盗まれて中身を取られてもつまらないと、ストレージの所有者登録を済ましたザックだった。暫く周囲を警戒し、追撃が無いと判断したザックは
「「「なんなんだ、お前(坊主)(ボク)はっ!?」」」
と、一斉に詰め寄られるザックだった…。いや、勿論説明しましたよ?…「生活魔法(但し、熟練度を上げてようやく習得できる数々)を使って戦った」と…全然信じて貰えませんでしたけどね?
「取り敢えず、地上に戻りましょう」
との言に、頷く一同。そして
(あ、しまった…)
うっかりストレージを使う所を見せてしまい驚いた…と思ったのだけど、そうではなくて収納容量に驚いていた模様。通常、市販されているストレージやアイテムボックスは小屋丸ごととか無理で、探索者(市井の者)で買える現実的なアイテムボックスはその形状は色々あるけど、一般的には背負い袋や手提げバッグ(登山用リュックやボストンバッグみたいな物と思って貰えればわかり易いか?)などの形状で、中身は1m四方の広さで高さは2mくらいの倉庫の容積で金貨100枚くらいはするそうだ。勿論、重量は中に物を詰めればそれだけ重くなるけど、価格に恥じずに重量軽減魔法も施されていたらしい。それでも、以前書いた「見た目は革袋・容量1リッター・容量拡張10倍・時間経過緩和15%」の大金貨10枚・金貨890枚でオークションで競り落とされた物に比べると性能は劣る分安い…と思う(桁が桁だけにピンと来ないけど)「時間経過緩和の機能が無い分」安いんだろう…多分。時間経過緩和があれば、採取してなるべく早く処置を施さないといけない薬の素材なんかは運ぶ時間に猶予が取れるだろうしね!
「余り休めてないみたいですが取り敢えず、地上に戻りませんか?…」
こう提案した僕に対して疑心暗鬼な顔で呟きながら頷くの、止めませんか?…泣いちゃいますよ?(苦笑)
━━━━━━━━━━━━━━━
「
備考:
探索者ギルド預け入れ金
金貨250枚、銅貨1617枚(変化なし)
ストレージ内のお金
金貨23枚、銀貨10枚、銅貨61枚(変化なし)
財布内のお金:
金貨151枚、銀貨10枚、銅貨165枚
本日の買い物(支出金):
なし
ザックの探索者ランク:
ランクC(変化なし)
本日の収穫:
※地上に戻ってから清算する為に保留
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