第41話 考え過ぎ
ギルドから退出すると、ルーが少し落ち込み、申し訳無さそうな顔をしていた。
「ルー様、あの連中はよく問題事を起こすって言ってたじゃないですか?だからしょうがなかったんですよ。ルー様のせいじゃありません」
「でも…いきなり目立つ行為をしてしまいました」
「確かに…もう少し穏便に済ます事が出来たな。待っていれば職員が駆けつけて来ただろうし。あの時お前がカッとなって動く必要は無かった」
「…申し訳ありません」
ラルフの言葉にがっくりと肩を落とすルー。
「俺が懸念しているのはあいつらの恨みを買ったって事だ。その恨みを買ったせいで後々面倒事があるかもしれない。まぁ何か起きるって決まったわけじゃないが、かと言って何も起こらないと決まったわけでもない。分かるな?」
「はい…」
「まぁでも、あいつらをけしかけたのは俺だしな。それに…なんだ…俺が侮辱されたのを怒ってくれたんだろ?」
ラルフは言いにくそうに、そして恥ずかしそうに言う。
「だから…その…なんだ……ありがとな」
その言葉を聞いた途端、ルーの表情が変わる。
真剣な顔つきで「当然の事です」と答えようとしたが、嬉しさのあまり我慢出来ず、
「め、滅相もありません」
とその嬉しさを表情前面に押し出してしまった。
するとイリーナがいきなりラルフの背中を叩く。
「下げてからの上げ。ラルフ君、やるわね」
と親指を立て、ラルフを褒めた。
「へっ?…まぁとにかくあいつらの仕返しがあるかもしれないから気を付けようって事だ。いいな?」
「はい!ラルフの事は私が全力で守りますので安心して下さい!」
なぜかルーはまた嬉しそうに答えた。
その後、イリーナに連れられ、食事をする事になった。
そこでラルフは先ほどのギルドで実力を測られた時の事をルーに問う。
「もう一度聞くけど、さっき他の開拓者が俺たちの実力を測ってただろ?どう聞けばいいのか分かんないけど、ルーはどう返したんだ?」
「どう返したというか、う~ん、問題ないと思いますよ?」
「問題ないって?」
「警戒されるような感じには見られないって事です。見られても別に反応を返すようなことはしませんでしたから」
「でもさっきあの男たちのせいで実力を見せちゃったじゃないか?」
「あの男たちは別に強くありませんから問題ないです。ラルフもあの男たちの事を強いとは感じなかったんじゃないですか?」
「あぁ、確かに。ならルーが実力者という点では顔が知れ渡ってしまったという点は大丈夫なんだな」
「その点はまぁ多分大丈夫かと」
「ん?なんかしこりが残るような言い方だな?」
「いえ、実力者というのは2タイプいるんです。1つ目はその実力を隠す事もせず前面に押し出すようなタイプ。堂々としているタイプです。そのような者はあの場にはいなかったと思います。そしてもう1つのタイプが——」
「——実力を隠しているタイプか」
「はい…本当に実力のある者はあんな分かり切った視線をこちらに向けません。本当にこちらが気付かないように実力を測っているんです。誰にもバレず、そして自分の正体も隠して。もしかしたらそういった者がいたかもしれません」
「能ある鷹は爪を隠す的なとこかしら?」
イリーナが会話に割り込む。
「はい、その通りです」
「まぁそういった連中ならある程度開拓者として名が売れているだろうし。まぁでも私が見た限りあの場にいた中で名の知れた開拓者はいなかったから問題ないんじゃない?それにルー様の実力が割れたとしても何か問題が起こるわけでもないだろうし。ラルフ君、そんなに気にしなくてもいいんじゃない?」
「…そうですね、何かこの間の貴族のトラブルの事でちょっと神経が逆立っていました、すみません」
「まずは開拓者として1人前になる事を目指せばいいのよ。新人らしくすればいいのよ」
「はい、そうします」
ラルフはまたトラブルが舞い込んで来るのではないかと懸念していたが、イリーナの言う通り、あれこれ考えるのを止めた。
起きたとしてもそれはルー絡みであり、それはきっと自分ではどうにでも出来ない事なんだろうと答えを導き出した。
(要するに、そういう心配は一人前になってからって事だよな?確かにそうだな)
ラルフは少し反省した。
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