三題噺.100:桃、壁、サイボーグ(140字)

 幼くして息子に取り付けられた人工消化管は、植物の細胞壁に含まれるペクチンで腐食してしまうという。我々家族は代々桃農家なのに、彼は自慢の味を知ることもできないのだ。「死ぬ直前に食べればいい」悲観する私に息子は言った。彼の生き甲斐を失わぬよう、私は末永く家業を継いでいこうと決意した。

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